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あなたの会社にすり寄る”黒い影”を見抜く「反社データベース」とは何か?

集英社オンライン / 2022年5月20日 9時1分

企業にとって大きな脅威となっている「反社会的勢力」。指定暴力団の構成員であることを隠して企業活動や政治活動に従事する者も増え、その実態をつかむのは年々困難になっている。そのため、取引相手が反社会的勢力かどうか調べる「反社チェック」の重要性は年を追うごとに高まり続けている。そこで近年、注目を集めているのが「反社データベース」というサービスだ。今回は元弁護士でライターでもある福谷陽子氏が、反社データベースについて解説。果たして、反社データベースは反社会的勢力と向き合う企業にとって救世主となりうるのか?

取引前に行う「反社チェック」の重要性

現代では企業が新規取引を行う際には、相手方が反社会的勢力でないかを確認する「反社チェック」が必須です。



「反社」をチェックするとはどういうことか。そこで、まず反社会的勢力とは具体的にどのような組織や個人を指すのか押さえておく必要があります。

実際、反社会的勢力の例として、以下のような組織・個人が挙げられます。

・暴力団
・暴力団員
・元暴力団員(暴力団員でなくなってからおおむね5年以内の人)
・暴力団の準構成員
・暴力団の関係企業
・総会屋やこれらに準じたもの

万が一、取引相手が反社会的勢力であったことが判明すると、相手から無茶な要求をされたり、社会における企業への信頼が失墜しかねません。商品やサービスの売り上げに影響するだけでなく、金融機関からの融資を断られるなど企業として大きなリスクを抱え、場合によっては企業の存続すら危うくなってしまう可能性もあります。

そのため取引に入る前に、反社チェックが欠かせません。

しかし「反社チェックが必要」といわれても、具体的にどのような方法で調べたらよいかわからない方が多いでしょう。

取引を検討する企業や個人が反社会的勢力かどうかを調べる、もっとも手軽な方法はインターネットでの「実名検索」です。実名検索の結果、報道やその他のサイトで反社会的勢力であるとの情報が出てきたら、取引を行わないという方法です。

しかし実名検索をしても、すべての情報が出てくるとは限りません。相手が事件を起こしていなければ、何もヒットしない可能性があります。特に、近年は反社会的勢力が企業活動や政治活動を行い組織の実態を見えにくくする動きもあり、実名検索ですべてを確認するのは限界があります。またSNSやブログなどには嘘の情報が混じっているケースも多々あり、信用しすぎるのは危険です。

そこで活用を検討したいのが「反社データベース」です。

反社データベースとは、反社会的勢力に該当する法人や個人の情報を集めたデータの集積です(「反社DB」も同じ意味となります)。もし取引先となりうる企業や個人が反社データベースに登録されていたら、反社会的勢力である可能性が高いため取引を再検討する必要があるでしょう。

「反社データベース」にも様々な種類がある

反社データベースにはいくつか種類があり、大きく分けて民間企業や個人がアクセスできるものとできないものがあります。

まず反社データベースとして最も情報量が多いと思われるのが、警察や検察などの捜査機関が所有している反社データベースです。事件などが発生した際に捜査に利用されるもので、もっとも情報内容が正確で最新のものとなっていると考えられます。銀行などの金融機関や不動産業では、他の業種に比べて反社会的勢力を排除する必要性が高いため、警察庁の反社データベースとの接続が認められています。

しかしこのデータベースは機密性が極めて高く、先に挙げた特定の業種を除いて公開されていないため、基本的に一般の民間企業や個人は利用できません。

それでは、捜査機関が所有する反社データベースにアクセスできない場合、どのように反社チェックを行えば良いのでしょうか。

実は、民間で反社データベースを提供している企業があるのです。この反社データベースは、調査会社がそれぞれ調査を行って集めた情報が集積されているもので、警察庁が把握している捜査用のものとは異なります。しかし所定の費用を支払えば、一般企業や個人でも利用可能なサービスです。

具体的には以下のようなサービスがあります。

・日本信用情報サービス

日本信用情報サービスは、自社独自の方法で多方面から情報収集を行って反社会的勢力データベースを作成しています。新聞などの報道を通じて広く知られた情報だけではなく、独自ルートで非公開情報も収集し、情報漏えい対策も徹底していると言われています。定期的に非公開情報を仕入れているので高い精度の反社チェックが可能です。

・日経テレコン

日経テレコンは、反社会的勢力に関する新聞記事や各国の制裁リストなどの情報ソースをもとにリスク情報を集めて反社データベースを作成しています。国内だけでなく海外企業や個人についても反社チェックできるのが特徴です。

一方で上記に挙げたサービスのほか、名刺をスキャンしたり企業名や人名を入力するだけで反社チェックできるツールや反社チェック業務を代行する企業もあります。「反社データベース」と言っても、サービス内容は企業によって大きく異なるのが実態です。導入の際はサービス内容を精査して進めましょう。

また民間企業の反社データベースサービスも、100%正確とは限りません。各社が独自の手法で情報を集めているので、利用するサービスによって精度のばらつきもあります。情報が抜けていたり、間違っている可能性もあるので盲信するのはおすすめできません。

その上で、リスクを抑えるために反社データベース以外の手段も組み合わせて反社チェックを進めましょう。例えば、警視庁の組織犯罪対策第三課では「暴力ホットライン」を24時間開設しています。また各都道府県には「暴力追放運動推進センター」が設けられ、相談することも可能です。反社データベースでは引っかからないものの、どうしても不安を拭い去れない場合は電話で相談してみるとよいでしょう。

反社会的勢力の動きは時を経るごとに巧妙化し、その実態が掴みづらくなっています。会社にすり寄る”黒い影”を発見するために、企業は今まで以上に反社チェックに対する取り組みが求められていくでしょう。

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