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「家族がどうなってもいいのか」…SNSに蔓延する「闇バイト」から抜けられなくなる10代が急増中。卑劣なその仕組みと親としての防止策〈相談窓口情報あり〉

集英社オンライン / 2023年8月25日 18時1分

手軽に報酬を得たいと「闇バイト」に応募し、犯罪の実行役にされてしまう10代が増加している。なぜ彼らは犯罪グループと接してしまうのか。そして、保護者として子どもを守るためにやるべきことは何なのだろうか。

闇バイトで犯罪に加担する青少年が増加

「闇バイト」に応募し、犯罪に手を染める青少年が後を絶たない。

警察庁の「令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」によると、令和4年に特殊詐欺などの犯罪に従事した少年(18歳以下)の検挙人員は473人で、令和3年よりも40人増加している。総検挙人員に占める少年の割合は19.2%にものぼる。少年と特殊詐欺を結び付けているのは、「闇バイト」だ。

文部科学省は2023年8月10日、警察庁からの依頼を受け、「少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させないための対策について」と題して、全国の学校設置者や教育委員会に向けた事務連絡を発信した。児童生徒の非行防止指導を行う際には、闇バイト問題についても積極的に取り扱うようにと呼びかけている。



「闇バイト」とは、バイトという言葉が入っているが、実際には詐欺や強盗などの犯罪を実行することだ。特殊詐欺の「受け子(現金を受け取る役目)」や、強盗の実行役として店を襲うなどし、逮捕される。首謀者は秘匿性の高いアプリなどで指示だけを行い、報酬を得られたら実行役を切り捨てる。

愛知県警の千種警察署と名城大学ボランティア協議会が管内の高校生1000人を対象に行った調査では、「闇バイトに誘われた経験があるか」の問いに2%が「ある」と答えたという。これは、50人に1人の割合だ。

闇バイトといえば、ネットで自ら応募するイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、上記の調査のように「誘われる」ケースもある。10代が闇バイトに応募するきっかけには、どのようなものがあるのだろうか。

闇バイトに応募すると抜けられなくなる仕組み

10代が闇バイトに参加するきっかけには、2つのパターンがある。
まずは、「自分で応募する」ケースだ。

今の10代はアルバイトを探すときにSNSを利用することが多い。マイナビキャリアリサーチLabが2023年5月31日に公表した調査では、SNSでアルバイト探しをしたことがある割合は高校生が50.0%、大学生が30.8%だった。SNSでのアルバイト探しは「タイパ(タイムパフォーマンス)のよさ」がメリットだという。早く楽に稼ぎたい、そう思う心が「即日即金」や高報酬をうたう募集に惹かれるのだろう。

試しに、X(旧Twitter)で「闇バイト」「副業」などのキーワードを検索してみてほしい。「運びのお仕事」「誰でもできる仕事」など、具体的な仕事内容が明記されていない募集が次々と出てくる。

こうした投稿には、警察が「このツイートは詐欺や強盗などの可能性があります」といったリプライを付けて警告しているが、募集の投稿数が多すぎて追いついていない。

最近は、大手求人サイトや求人情報誌でも「受け取り・配送」や「現場系作業スタッフ」を語り、闇バイトを募集しているケースが増えている。運営側としても取り締まりを強化しているが、こちらもいたちごっこだ。

X(旧Twitter)で闇バイト募集と思われる投稿(筆者撮影)

また、SNSなどネットで知り合った人や、友人・先輩から「一緒に働かないか」などと誘われたりするケースもある。10代はまだ幼い面もあり、直接頼まれるとうまくかわせずに引き受けてしまうこともあるだろう。「1回だけなら」「すぐやめればいい」と考える人も多い。

闇バイトは、首謀者の言うとおりに進めると、いつのまにか自分が犯人になってしまう。運転手役など、自分が犯罪に加担していると気づかない場合もあるが、「受け子」や「強盗」を頼まれたときには「これは犯罪だ」と気づくはずだ。それでもなぜ実行してしまうのか。

それは、犯行までに自分の個人情報を首謀者に渡してしまっているからだ。首謀者は、最初は優しい言葉をかけ、仕事前の手続きとして、自分の顔写真や身分証明書、口座番号、住所、連絡先、家族の個人情報などを送るように尋ねてくる。

この時点ではおかしいと感じていなくても、やがて仕事の内容が明かされ、仕事を受けるのを辞めたいと訴える人もいる。しかし、「SNSに個人情報をばらまく」「家族がどうなってもいいのか」など脅迫され、追い詰められたうえに犯罪を実行してしまう。

やりとりはすべて、秘匿性の高い「Signal」や「Telegram」などのアプリで行われる。「Signal」や「Telegram」は通信内容が暗号化されており、相手が読むとメッセージが自動的に消え、サーバーにも情報が残らない。実行役である自分が逮捕されても、指示役や首謀者は誰なのか、たどるすべはない。そもそも闇バイトは、犯罪を実行しても報酬を得られる保障はないのだ。

Telegramの画面。メッセージが自動消去され、スクリーンショットを取ると相手に知らされる(筆者撮影)

「うまい儲け話はない」とあらためて伝えよう

10代が巻き込まれる犯罪は闇バイトだけではない。「副業」を名乗る儲け話もある。国民生活センターには、副業サイトで「チャットで相談にのるだけ」というバイトに応募したところ、有料の手続きが必要になったと言われて金銭を支払わされた10代女性の事例が載っている。

そのほか、荷受代行のアルバイトをするために身分証明書などを送ったら、自分名義でスマホ6台などを買われていたケースもあった。本人は家に届いた商品が自分の支払いになっていると知らないまま、言われたとおりに先方に送っていたため、気づいたときには何も残っていないという事例も掲載されている。

副業はSNSでも募集されている。なかには「中学生副業」をうたい、推し活に使うお金を稼ごうと呼びかけているものもある。こうしたアカウントは、「#ジャニオタ」「#ジャニオタさんと繋がりたい」などのハッシュタグを使い、自身もアイドル好きの中学生を名乗ることで、警戒心を緩めようとしている。

筆者が以前こうした「中学生副業」を名乗るアカウントに連絡を取ったところ、副業の内容を説明するマニュアルが送られてきた。初期費用の4000円を支払えば、情報商材販売の方法を手引きするという。SNSを舞台にして、中学生でもマルチまがいの詐欺にあう可能性があるということだ。

X(旧Twitter)で「中学生副業」を募集する投稿(筆者撮影)

もし「闇バイトに申し込んでしまった」「闇バイトをやめさせてもらえない」などの相談を子どもから受けた場合には、警察相談ダイヤル(#9110)、または近くの警察署に相談できる。都道府県警察には少年相談窓口が開設されているので、こちらに相談してもいい。(各都道府県警察の少年相談窓口)大ごとにしたくないと考える親心はわかるが、相手は犯罪組織の可能性が高い。早めの相談が家族を救うこともある。

また、副業トラブルなどの相談に関しては、消費者ホットラインに相談できる。

「うまい儲け話はない」とよく言われるが、お金に困ったときには「こんなに稼げそうな仕事を見つけてラッキーだ」と信じてしまうこともあるだろう。保護者として我が子にできることは、あらためて簡単にお金を稼ぐ方法はないと伝えることだ。

また、闇バイトが上記のような流れで募集を行い、途中で抜けられなくなってしまうことや、一度犯罪組織に個人情報を渡してしまったら、一生不安を抱えて生きていくことになると説明してあげてほしい。

そして、もしトラブルに巻き込まれてしまったとき、子どもがすぐに親に相談できる信頼関係を保つことも心がけておくことも大切だ。


文・写真/鈴木朋子

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