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「怒羅権」は日本人の差別や偏見に加えて、貧困が生み出した犯罪集団。ネパール人の「東京ブラザーズ」にベトナム人の「ボドイ」…日本社会で育まれる外国人犯罪集団の実態

集英社オンライン / 2023年9月5日 19時1分

闇バイトを取り仕切るのは、当然だが日本人の半グレだけではない。既存の在日外国人犯罪組織に加えて、受け入れる企業や施設の公序良俗意識が育たないまま技能実習生を増やしたが為に、新たな在日外国人犯罪組織が育ってしまった現実がある。今日本で増えつつある彼らの実態をレポートする。

〔〕内は集英社オンラインの補注です

アメリカはチャイニーズ・マフィアの
脅威に気づくのが遅かった

『ドラゴンの系譜』の著者である海野氏は次のように警告しています。「アメリカはマフィアの犯罪組織に気をとられていて、中国の秘密結社の脅威について気がつくのがおそかった。1975年ごろからその犯罪が目立ちはじめ、1977年のゴールデン・ドラゴン・マサークルの後、(中略)トライアド〔三合会、香港を拠点とする幾数かの犯罪組織を総称する呼名〕、チャイニーズ・マフィアに関する本が出はじめている」



「中国の秘密結社は、数百年どころか数千年の歴史を持ち、その伝統は地下を脈々と流れているのだ。そして中国の秘密結社はドラゴンにたとえられる。竜の頭がちらりと地下からのぞく。やがてとめどなく長大な、果てしない竜尾が彼方ではねあがる。ニューヨークで頭をもたげた竜は、はるかにその尾を、香港から中国本土の奥深くまでのばしているのである」(同前)と。

中国のトライアド(14K、潮幇=潮州幇など)、台湾の青幇〔チンパン。台湾の暴力団〕や竹聯幇〔ジュリェンパン。台湾台北市を拠点とする暴力団〕など、黒社会は果てしなく深く、暗いのです。日本のヤクザが日本人に恐れられたのは、彼らは対立した相手を最終的には「殺す」からです。筆者がチャイニーズ・マフィアを恐れるのは、彼らは金で相手を「簡単に殺す」からです。彼らにかかっては、命の値段が安すぎるから、日本の準暴力団や半グレ以上に恐ろしいと思えます。

2018年2月1日、沖縄タイムスプラスデジタル版に、「台湾マフィア、幹部ら十数人が来日沖縄の暴力団と接触」という見出しで記事が掲載されました。

記事によると「台湾有数のマフィア組織『竹聯幇』の幹部ら十数人が沖縄を訪れ、指定暴力団旭琉會の幹部らと接触していたことが(1月)29日までに、関係者への取材で分かった。県警は沖縄来訪の目的や両組織の関係性などについて情報収集を進め、警戒を強めている。関係者によると、竹聯幇幹部らは26日に来沖」とあり、台湾マフィアと国内暴力団との接近が窺われ、今後、台湾マフィアの日本流入が懸念されます。

ネパール人犯罪集団

中国人や台湾マフィアの脅威に加えて、首都圏ではネパール人の不良集団が2020年頃から週刊誌などで取り上げられるようになりました。その一つが、「東京ボーイズ」といわれる団体です。

当時の文春オンライン記事によると、次のような書き出しで、ネパール人の不良グループが紹介されていました。

「外国人労働者への依存を強めつつあるニッポンでいま、新たな外国人犯罪グループが林立し始めている。都内では『東京ブラザーズ』なるネパール人不良グループが集団暴行の疑いで逮捕。他にも複数のネパール人『半グレ』グループが暗躍しているといい、警察当局は警戒を強めている。(中略)東京ブラザーズは新宿・大久保周辺を拠点に50人ほどのネパール人メンバーがいるとされる。聞き慣れないグループ名だが、近年、東京都内で勢力を伸ばし、さまざまなトラブルを起こしたことで警視庁がマークを始めた集団のひとつだ」と(「文春オンライン」2020年11月11日)。

さらに、ネパール人の半グレグループは、東京・蒲田に別の組織が存在し、「ロイヤル蒲田ボーイズ」なる不良グループを名乗っているといいます。

「このロイヤル蒲田ボーイズの名前が表に出たのは昨年2月。やはりネパール料理店で、ロイヤル蒲田ボーイズのメンバー5人が店内のBGMを勝手に変えたことに苦情を申し出た別のネパール人男性を暴行した疑いで逮捕されている。他にも『ネパール・ジャパン・ユースクラブ』『蒲田ボーイズ』などの組織があるとされ、メンバーにも行き来があるとされるが、実態はいまだ不明な点が多い」(同前)

ただ、令和2年(2020年)におけるネパール人の刑法犯・特別法犯の検挙人員は、外国人全体の3%に過ぎず、ベトナム35.9%、中国23%と比較すると少ないといえます。警察庁によると「検挙件数・検挙人員ともに、ベトナム及び中国の2か国で全体の約6割を占めている。

また、刑法犯検挙件数(罪種別)を見ると、侵入窃盗では中国及び韓国、万引きではベトナム、自動車盗ではスリランカが高い割合を占めている」として、警察白書も「ベトナム人と中国人が検挙人員の半数以上を占めている」と指摘しています(令和三年版『警察白書』)。

外国人犯罪の特徴として、当局は「組織性」を挙げています。「令和2年(2020年)中の来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合は35.5%と、日本人(12.5%)の約2.8倍に上っている。罪種別にみると、万引きで40.1%と、日本人(3.1%)の約12.9倍に上る。このように、来日外国人による犯罪は、日本人によるものと比べて組織的に敢行される傾向がうかがわれる」というのです(同前)。

少子化で働き手不足に悩む我が国では、技能実習生の積極的な受け入れが不可欠です。加えて、アフターコロナで外国人観光客の増加が見込まれます。大阪万博などの国際的なイベントを控え、今後数年間で、在留資格を有する外国人も増加するものと思われます。

そうした東アジアの情勢のなか、非正規のルートで国内に滞在する外国人などには注意が必要です。

「怒羅権」は日本人の差別や偏見、
そして貧困が生み出した犯罪集団

もっとも、来日外国人を過度に警戒するのではなく、彼らを受け入れる多様性を、日本社会は諸外国に学び、実践する必要があります。技能実習生を受け入れる企業や施設の公序良俗意識が、政府や専門機関により涵養され、日本で学んだり働いたりする外国人が、犯罪などに走らなくてもよい環境作りに留意すべき必要があると思います。

たとえば、技能実習生受け入れ体制の劣悪さから逃亡し、不良外国人グループになったベトナム人の例が、次のように報道されています。

「群馬・栃木・茨城といった北関東一帯で、『ボドイ』と呼ばれる不良ベトナム人たちが近年、独自のコミュニティーを築きながらさまざまな犯罪行為に手を染めている。『ボドイ』はベトナム語で『兵士』を意味し、その多くは実習先を逃亡して在留資格を失った元技能実習生だ。(中略)日本では2017年頃から技能実習生の雇用環境の劣悪さや逃亡事件が注目されるようになったが、この問題の中心にいたのが、ベトナム人たちだった。(中略)ボドイたちにとって不法就労や無免許運転は当たり前で、違法な車両売買、賭博、拉致、家畜や果実の窃盗、薬物乱用、売春などのほか、時にはひき逃げ死亡事故や殺人事件すら起こす」(「集英社オンライン」2023年3月2日)。

いずれにせよ、日本は海で囲まれているから安心だという幻想は過去のものになりつつあります。平成の中期から末期に生まれた中国残留孤児二世、三世からなる半グレグループで準暴力団に位置づけられた「怒羅権」は、日本人の差別や偏見に加えて、貧困が生み出した犯罪集団です。

写真はイメージです

当時は、ダイバーシティなどという概念はありませんでした。令和の時代に我が国の人々が、昭和や平成の時代と同じ過ちを繰り返し、他国の人たちを排斥することで、彼らに「カテゴリー5〔犯罪組織の分類を、既存のカテゴリーでは特定できないという意〕」の犯罪集団を形成させることがないよう、今を生きる日本人一人ひとりが心掛けたいものです。

文/廣末登
写真/shutterstock

闇バイト 凶悪化する若者のリアル (祥伝社新書 683)

廣末 登

2023年7月3日

¥1,023

224ページ

ISBN:

978-4396116835

「闇バイト」がなくならないワケとは?

二〇二三年一月一九日、東京都狛江市に住む九〇歳の女性が自宅で殺害されているのが見つかった。女性の遺体には激しい暴行の跡が見られ、これまでとは次元の違う強盗殺人事件として世間を震撼させた。
本件をきっかけに注目を集めたのが、「闇バイト」といわれる犯罪だ。指示役に集められた素性のバラバラな集団によって行なわれる犯罪で、同種の事件は後を絶たない。

中でも詐欺よりも手っ取り早く稼げる「タタキ(強盗)」の増加が危険視されている。本書では、非行経験のある犯罪学者が当事者たちを取材。

闇バイトを取り仕切る半グレや犯人の更生に従事した保護観察官の声から見えてくる、その真実とは。最終章では、闇バイトを生み出す日本社会の闇を分析。失うもののない「無敵の人」を生み続ける構造に警鐘を鳴らす

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