ネットを毎日使い続けた子どもの3年後の脳画像が衝撃…認知機能、記憶や学習に関わる海馬のほか、言葉や感情を処理する領域の発達が止まっていた
集英社オンライン / 2023年9月23日 11時1分
調べものや暇つぶし時間に動画を見たりなど、インターネットやスマホは現代において欠かせないツールとなっている。しかし、こういったオンライン習慣が必ずしも人を幸せにするものではないことが科学的に明らかになりつつある。『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
インターネットの使用が脳の発達に与える影響とは
みなさんもこんな経験が一度はあるはずです。
紙にペンで文字を書く代わりに、スマホで文字を打つようになると、漢字が書けなくなります。インターネット上の地図が導くままに運転をしていると、道を忘れてしまいます。
Use it, or lose it.
インターネットの使用で脳をサボらせるオンライン習慣がついてしまうと、一体どんな悪影響があるのでしょうか?
東北大学加齢医学研究所では、平均年齢約11歳の子どもたち223人を3年間追跡調査することで、インターネットの使用と脳の発達について調べました。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/09/06015242884933/800/4135_001.jpg)
子どもたちのインターネット使用習慣を7段階の項目(1:機器を持っていない/2:全く使用しない/3:まれに使用する/4:週に1日使用する/5:週に2〜3日使用する/6:週に4〜5日使用する/7:ほぼ毎日使用する)で聞きました。
同時に言語能力に関する知能検査を行ないました。そして、脳の発達を調べるために、MRIを用いて、子どもたちの脳の写真を撮影しました。
まず追跡前の時点で、子どもたちの脳の発達および、言語の能力には差がありませんでした。
認知機能を支える前頭前野、言葉に関係する領域などに悪影響が…
次に、追跡調査の結果[図2-14]を見てみましょう。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/09/06015342493722/400/IMG_1254.jpg)
図2-14 インターネット使用による発達への悪影響が見られた脳領域。『スマホはどこまで脳を壊すか』より
3年後に同じ計測を行なった結果、インターネットをたくさん使っていた子どもたちほど、3年間の言語能力の発達が小さく、幅広い範囲における脳の発達にも悪影響が見られました。
黒い部分が、発達に悪影響が見られた脳の領域を表しています。幅広い範囲に色が塗られていることがわかります。
この写真は、脳の神経細胞の本体が集まっている灰白質の発達を表しています。神経線維が張り巡らされている白質についても、幅広い領域で発達への悪影響が見られました。
これまで、同様の研究をテレビやゲームでも行なってきましたが、ここまで脳の広範囲における発達に悪影響が見られたのは初めてのことでした。
発達に悪影響が見られた脳領域には、認知機能を支える前頭前野、記憶や学習に関わる海馬のほか、言葉に関係する領域、感情や報酬を処理する領域などが含まれています。どれも私たちが生きる上で必要となる大切な機能です。
脳の発達は、ほとんどゼロに近い数値
特に衝撃を受けたのは、インターネットを「ほぼ毎日使用する」と回答した子どもたちの脳の発達は、ほとんどゼロに近い数値となっていたことです。つまり、インターネットを毎日使っている子どもたちは、3年間で脳が全く発達していなかったのです。
例えば、中学校へ進学するときにスマホを買ってもらった子どもがいるとしましょう。もしこの子が、毎日スマホでインターネットを使用する生活を3年間続けてしまったら、恐ろしい未来が待っているかもしれません。
この子は約3年後、高校受験を迎えることになります。周りの子どもたちが健全に発達を遂げていく中、この子の脳は小学校6年生の時点で発達が止まっています。
つまり、中学校3年生の中に、ひとりだけ小学校6年生が紛れ込んで試験を受けているような状態になってしまうのです。勝ち目があるわけありませんよね。
[図2-7]のグラフを見てみてください。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/09/06015459800590/400/IMG_1255.jpg)
図2-7 スマホ等の使用が3時間以上/勉強・睡眠時間と学力の関係。『スマホはどこまで脳を壊すか』より
スマホ等を1日3時間以上使っている子どもたちは、どれだけ勉強を頑張っても、きちんと睡眠をとっていたとしても、成績が平均以上に届いていません。脳の発達が止まってしまっているわけですから、スマホを使った分だけたくさん勉強をすれば、悪影響を補って帳消しにできる、とはいかないのです。
私が通っていた中学校は、いわゆる荒れた学校でした。しばしば校内でタバコの吸いがらが見つかっては、問題になっていました。あるとき、生活指導の一環でタバコが健康に与える悪影響を説明する集会が開かれました。
集会では、タバコによって真っ黒に染まって萎縮した肺の写真を見せられました。幼き日の私は、その写真を見て背筋が凍るような恐怖を覚えました。その瞬間に「タバコは身体に悪いんだ」と、私の脳に強烈に刻まれたのです。結果として、私は今日まで1本もタバコを吸ったことはありません。
肺も脳も、鏡に映して自分で見ることはできません。タバコで肺が真っ黒に染まるように、知らず知らずのうちに、スマホで脳の発達が止まっていたら恐ろしいことだと思いませんか?
そのため、私が子どもたちを相手に講演をするときには、必ず[図2-14]の写真を見せるようにしています。幼き日の私が真っ黒な肺の写真を見たときと同じように、「スマホは脳に悪いんだ」と子どもたちの脳に刻まれてくれることを願っているのです。
文/榊 浩平
『スマホはどこまで脳を壊すか』 (朝日新書)
榊 浩平 (著)、川島 隆太 (監修)
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/09/06013858798003/400/sumaho.jpg)
2023/2/13
¥935
256ページ
978-4022952035
【「脳トレ」の川島研究室が緊急提言】
スマホに依存しすぎると
思考の中枢「前頭前野」がやられる!
「ものを考えられない」
「何かに集中することができない」
スマホ依存を放置した先に待つのは、
認知症予備軍の人たちであふれる社会か!?
スマホを常用し、脳に“ラク”をさせていると、
成長期の子どもなら脳発達が大きく損なわれ、
成人なら不安・抑うつ傾向が高くなることが明らかに。
最新研究で見えてきた衝撃の未来。
■目次
はじめに スマホは人を幸せにするのか?
第1章 思考の中枢を担う前頭前野を守れ
脳は領域によって機能を分担している/大脳には四つの部屋がある/前頭前野の大切な役割①認知機能/前頭前野の大切な役割②コミュニケーション/脳の活動を観察する方法―脳機能イメージング/10代の過ごし方がその後の脳を左右する/加齢によって萎縮が早く進んでしまう前頭前野/前頭前野はどうしたら鍛えられるのか?
第2章 スマホはここまで学力を破壊する
私たちの生活の一部となった「オンライン習慣」/「インターネット依存」とアルコール依存の類似性/スマホの使いすぎが子どもたちの学力を「破壊」/勉強してもよく寝ても「3時間以上のスマホ」で台なしに!/スマホの使用時間を減らせば成績アップ/スマホ横目に3時間勉強しても成果は30分/「ながら」という悪癖/「会話のラリー」というインスタントメッセージの罠/通知音が鳴るだけで低下する集中力/スマホやタブレットでの学習は脳がはたらかない?/インターネットを使い続けた、衝撃の3年後
第3章 オンライン・コミュニケーションの落とし穴
コロナ禍におけるコミュニケーションの変化―対面からオンラインへ/コミュニケーションとは?/ヒトにとってコミュニケーションは必要不可欠/親子での会話が子どもの健やかな脳を支える/人間の脳には負荷が必要/オンラインと対面ではコミュニケーションの質が違う/「つながっている」と感じるとき、脳と脳も同期する/なぜ人混みの中でも足並みを揃えて歩けるのか?/授業形式によって子どもの脳活動は変わる
第4章 オンラインでは脳は「つながらない」
「ひとりでボーッとしている状態と変わらない」/「誰と」で変わるコミュニケーションの質/老若男女を問わず盛り上がる話題とは?/2019年に始まった実験が予期せぬ方向へ/「オンラインでは何かが足りない」から浮かんだ仮説/なぜオンライン会話では脳が同期しないのか?/画面越しの映像はパラパラ漫画と同じ/オンラインは「きっかけ」で「つなぎ」
第5章 スマホ漬けの脳はどうなるか
オンライン習慣の先に見える未来/将来の認知症リスクを高める可能性/リスク要因① 学習の質が低下/リスク要因②うつ病とSNS/リスク要因③「つながる」はずが孤独に/リスク要因④ごろごろして運動不足に/「リスク」をどのように受け止めますか?
第6章 すぐ始められる脱オンライン習慣のススメ
私たちの生活はオンラインなしには成り立たないのか?/脱オンライン習慣の効果―国内外の実例/言うは易く行なうは難し?/最大の拷問はプロ野球の速報/紙の地図頼りのドライブに初挑戦/今日からできる脱オンライン習慣のススメ/オンライン習慣との上手な付き合い方
おわりに 前頭前野の「自己管理能力」でスマホから身を守れ!
外部リンク
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