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「運がいい人」が自分の脳に習慣づけている行動パターンとは。マイナスを引き受ける度量を持つ人はなぜ、運がよくなるのか?

集英社オンライン / 2023年9月13日 12時1分

運がいい人と悪い人には、そもそもどんな違いがあるのか? 脳科学者の中野信子氏は「運は100%自分しだい。“運がずっといい人”には科学的根拠がある」と話す。はたして「運がいい人」が自分の脳に自然と習慣づけている考え方や行動パターンとは?

#1

運のいい人はマイナスの出来事も引き受けてみる

マイナスの出来事も引き受けてみる―。これも運のいい人の共通ポイントです。

どんなに運がいい人でも、これまでの人生の中で悲しいことや苦しいことは一度もなかった、という人はまずいないでしょう。だれの人生にも、失敗や挫折、悲しい別れなど、マイナスの出来事はあるはずです。

では、運のいい人と悪い人の違いはどこにあるのか。それは、自分にマイナスの出来事が起きたときの対処の方法にある、と私は考えています。


たとえば、ニュートリノをとらえ、ニュートリノ天文学という新しい学問分野を開拓してノーベル物理学賞(2002年)を受賞した小柴昌俊博士は、受賞当時、よく「強運の人」と呼ばれました。
ニュートリノは宇宙にある素粒子で、宇宙の謎を解く鍵になるものだといわれています。
地球にも常に大量に降り注ぎ、私たちの体をすり抜けているものの、非常に検出のむずかしい素粒子です。

小柴博士は、このニュートリノが検出できる巨大な装置「カミオカンデ」を造り(もともと、カミオカンデは陽子崩壊という現象を確認するための装置だったのですが)、1987年2月に初めてニュートリノをとらえることに成功しました。

このニュートリノは、16万年前に大マゼラン雲で超新星爆発が起き、そのときに生まれたもの。16万年の時を経て大量に地球に飛んできたのですが、そのニュートリノをとらえたのが、小柴博士がカミオカンデで観測を開始した直後であったこと、また小柴博士が定年退官を迎える1か月前だったこと、さらに観測データ記録用の磁気テープを交換する時間をうまく逃れてニュートリノがカミオカンデに飛び込んできたことなど、あらゆる幸運が重なったのです。

もちろん小柴博士は運だけでニュートリノを捕まえたわけではありません。長年の周到な準備、地道な努力、新しい発想、行動力などの下地があって、最後に運が味方をしてくれたといえるでしょう。

といっても、この小柴博士も、人生において常に運が味方をしていてくれたわけではなさそうです。

小柴博士は子どものころ、「将来は音楽家か軍人になる」という夢を抱いていたそうです。しかし旧制中学時代に小児麻痺にかかってしまいます。その後遺症により、小柴少年は、音楽家になるという夢も、軍人になるという夢もあきらめざるをえませんでした。

ところが、その病床で小柴少年は物理学に出合うのです。当時の、学校の担任の先生が小柴少年に、アインシュタインらが書き記した『物理学はいかに創られたか』(岩波新書)という本を贈ったのだそうです。このことが何十年ものちのノーベル賞受賞へとつながっていくのです。

また、同じく化学者の田中耕一さんは、就職活動で第一志望だった家電メーカーを落ちています。「人の健康に役立つ仕事がしたい」と考えていた田中さんは、入社が決まった島津製作所では医用機器事業部への配属を希望していました。しかし入社後の配属先は「中央研究所」で、そのことに田中さんは最初、少しがっかりしたといいます。けれど、この中央研究所での研究がのちのノーベル賞受賞へとつながるのです。

このように、一見マイナスに思えた出来事がのちにプラスに転じることは、私たちの身の回りでも少なくありません。とくに運がいいといわれる人には、過去にマイナスの出来事を経験している人が少なくないように思います。

マイナスを引き受ける度量を持つ

彼らに共通するのは、自分にマイナスの出来事が起きたときに、けっして自暴自棄にならないこと。もちろん、一時は嘆き悲しんだり、苦しんだり、落ち込んだりもしたでしょう。とことん打ちのめされたかもしれません。

でもやけっぱちにはならない。ふてくされたり、何もかも投げ出したりはしないのです。ある意味、マイナスの状況をいったん引き受けているのです。そして「では、どうするか」と切り替えている。

一方、運の悪い人というのは、自分にとってマイナスの出来事が起きたときに、それにあまりにこだわりすぎてしまいます。「ああ、最悪だ、もうだめだ」などと考えて、自暴自棄になる。すべてを投げ出してしまう傾向があるように思います。

マイナスの出来事とひと言でいっても、その内容は千差万別でしょう。大きな打撃を与えるものもあれば、小さな痛手ですむものもある。しかしそのほとんどは、大局からみれば、そのときどきの揺らぎのようなもの、そのときどきの目先のことである場合も多いのではないでしょうか。

よって、たとえマイナスの出来事が起きたとしても、その結果にあまりこだわりすぎない。マイナスの結果にあらがうのではなく、その状況をいったん受け入れてみる。簡単なことではないかもしれませんが、まずはその努力をしてみる。

そして、ではこのマイナスの状況をどう生かすかと考える。それができる人が運のいい人といえるように思います。

文/中野信子 写真/shutterstock

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』

中野信子

2023年9月10日

1,650円

207ページ

ISBN:

978-4763140807
9

あなたも「運のいい人」になりませんか?
日本・最注目の脳科学者がつきとめた、運のいい人だけがやっている「思考」と「行動」

「自分は運が悪い」と思っていませんか? でも「運」というものは必ずしも、その人がもともと持っていたり生まれつき決まっていたりするものではなく「その人の考え方と行動パターンによって変わる」のです。「運がいい人」は「運が良くなる」考え方や行動パターンを習慣づけているのです。それではどのようにしたら「運のいい人」になれるのか? 優秀な脳科学者である著者が科学的見地から、「運のいい」考え方や行動パターンを習慣づける方法を紹介していきます。

※本書は、小社で単行本(2013年2月)および文庫本(2019年5月)で刊行された『科学がつきとめた「運のいい人」』を加筆、再編集したものです。

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