なにかあったとき、自分で自分の機嫌や状態をコントロールできるというのは、実は生きていく上でとても重要なスキルじゃないかと思う。
わたしのスイッチは、読書だ。嫌なことがあったとき、落ち込んだとき、前を向きたくないとき、とりあえず、二時間本を読む。完全に没頭できる状況を作って、大好きな本の中に埋もれる。二時間後、頁の間から顔を上げれば、あんなに大きく見えた問題は、かさかさに干からびて、片手でぺしゃんと潰せるくらいに縮んでいる。
例えば。ルーシャス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』なんてどうだろう。ここに出てくる竜は大きい。凄まじく大きい。草木に覆われ、その体からは川が流れ出し、村を作って人が住み着いている。山のように大きいけれど、動かないことも山の如し。だけど、グリオールの存在は人を惑わせる。翻弄され、滅ぼされていく人たちは、果たしてグリオールに操られているのか、それともそれが本性なのか。
あまりに圧倒的なグリオールの存在感の前では、現実の問題なんて、せいぜいヤモリだ。