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〈はげ山写真あり〉太陽光発電にNO! 福島市が「ノーモア メガソーラー宣言」を公表した理由。住民は「自然破壊でクマなどの野生動物が出没」「土砂災害が起きれば孤立集落に」

集英社オンライン / 2023年9月9日 8時1分

地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする脱炭素社会に向け、政府が導入拡大を図る再生エネルギーの主軸が太陽光発電だ。しかし8月31日、これまで「ゼロカーボン(脱炭素)シティ」を目指すことを宣言していた福島県福島市が、山地への大規模太陽光発電施設(メガソーラー)をこれ以上望まないとする「ノーモアメガソーラー宣言」を公表した。その背景にはメガソーラーの弊害があるという。現地にてその実態を調査した。

メガソーラー工事で森林伐採。先達山がはげ山に

「福島市は、災害の発生が危惧され、誇りである景観が損なわれるような山地への大規模太陽光発電施設の設置をこれ以上望まないことをここに宣言します。設置計画には、市民と連携し、実現しないよう強く働きかけていきます」



福島県福島市から上記の文言を含む「ノーモア メガソーラー宣言~地域共生型の再エネ推進の決意を込めて~」が公表されたのは、8月31日のこと。
メガソーラーとは未利用の広大な土地等に設置する太陽光発電整備。福島市はすでに多くのメガソーラーを建設しているが、「ふるさとの景観」や「市民の安全安心」を守るため、今後の設置計画については反対姿勢を宣言したかたちだ。

はげ山と化した先達山

そのきっかけのひとつとなったのが、福島市の先達山だ。約60ヘクタールのメガソーラーを造成する計画で2021年11月から工事に着手したが、広範囲にわたって森林が伐採されて“はげ山”と化したことで、市環境課に多くの問い合わせが寄せられたのだ。

9月初旬、本誌記者が福島市を訪れると、市街地から肉眼で確認できるほど先達山の山肌はむき出しになっていた。山のふもとにある飲食店の50代女性従業員は怒りをにじませる。

「ここの山を通る県道70号線の先には磐梯吾妻スカイラインという見晴らしのいいドライブスポットがあるので、毎年のように県外からの観光客も来るんですけど、やはり『はげ山』になってしまうと景観も損なわれますよね。
うちのお客さんにも何度か『あの山はないんじゃないの?』と言われましたし……」

危険な動物も頻繁に出没するように

メガソーラー開発前の段階では、この地区でも「反対運動」が行なわれてはいたが、県主導で推し進めていた背景もあり、しぶしぶ受け入れるしかなかったという。
近隣住民の頭を悩ませるのは、景観の問題だけではない。

「森林伐採がはじまって以降、クマ、ニホンザル、カモシカといった動物が山のふもとまで下りてくることが増えたんです。特にクマはこれまで月1回程度しか現れなかったのに、『POLICEメールふくしま』(福島県警メール配信システム)には、毎日のように目撃情報が寄せられるようになりました。
これが森林伐採によるものかわかりませんが、やっぱり不安ですよね」(同)

高湯温泉は標高750メートルに位置する

同地区で町内会長を務める30代男性のもとにも、近隣住民からのクレームが絶えないという。

「晴れた日だと、工事の影響で山全体に土ぼこりが舞うこともしょっちゅうで、『火山灰みたいにフロントガラスに土が積もって困っている』『喘息が悪化しないか不安だ』といった声が町内会にも寄せられています。
実際、サルやイノシシといった動物を見ることも増えましたし、この前なんて近所のハックルベリー畑をサルが群れになって荒らしている光景を目にしました」

「建設にあたり地盤調査はするが土砂災害がないとはいえない」

一方で、先達山に近い高湯温泉の旅館で働く女性従業員からはこんなコメントも。

「心配なのは土砂崩れ。先日、雨が降った日にお客さんから『山道に砂や石が転がっていてビックリした』との報告を受けました。『もしかしたらメガソーラーによる工事の影響かな……』と思うと心配になります。

そもそも高湯温泉は、県道70号線からしかたどりつけない山間部にあって、この道に降雨による土砂崩れが起きようものなら、一発で孤立集落になってしまうんです。
幸い、まだメガソーラーの工事がはじまってからそこまでの記録的豪雨はありませんが、そういった不安は従業員一同、抱えていますね」

メガソーラーの建設現場

取材を進めるうちに浮き彫りになった「土砂災害の危険性」について、関東地方の太陽光発電関連企業に勤務する男性はこう話す。

「山間部などの野立てにメガソーラーを造成する際は、地盤調査で地面の固さや深さなどをくまなく調査し、一定の審査基準を突破した土地でしか作れないのですが、正直、基準を突破しても工事してみないとわからない部分もある。
2021年に熱海で28人が亡くなった熱海市伊豆山土石流災害のような事故はめったに起きませんが、年に何度か、軽度の土砂災害が起きているのも事実です」

今日も福島市の住民たちは不安な面持ちで先達山を眺めている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/Soichiro Koriyama

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