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「鎌倉はお経と潮風の街」――甘糟りり子が選んだ品々が並ぶ“鎌倉商店”で、当地の気分を味わって

集英社オンライン / 2022年5月20日 18時1分

東京・代官山 蔦屋書店1号館にて5月1日から開催されている「甘糟りり子が選ぶ鎌倉商店」。鎌倉で育ち、今なお住み住み続けている作家・甘糟リリ子さんがセレクトした珠玉の品々が一堂に会した本フェアでは、鎌倉ならではのおいしいものやこだわりのグッズがずらり。そこで、甘糟さんに今回のフェアのテーマ、セレクトのポイント、鎌倉への想いなどについて伺った。

鎌倉に行った気分になれる品々をセレクト

代官山 蔦屋書店で鎌倉に関するポップアップを開催するのは今年で三回目になります。第一回は鎌倉の暮らしを綴ったエッセイ『鎌倉の家』(河出書房新社)にちなんで、私が日常で使っているものや気に入っているものをご紹介しました。今回の「鎌倉商店」では鎌倉産のものや鎌倉のお店が扱っているものから、おすすめを選んでいます。



古都であって海街でもあるのが鎌倉の特徴。お寺や神社の隣にサーフショップがあったりしてね。古い街ながら風通しがいいと思います。このポップアップに足を運んで、そんな鎌倉の雰囲気を感じていただけたらうれしいです。

今年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』もあって、鎌倉の街は例年より活気が増しています。私、自称&押しかけ鎌倉大使なんですが、これは鎌倉をさらに売り込むチャンスと思い、「甘糟りり子が選ぶ鎌倉商店」を企画しました。観光地としてはお馴染みですが、もっと鎌倉の日常を知って欲しくて。

甘糟さんおすすめのお店の逸品が並ぶコーナーは、1号館1階のブックフロアに

「自称&押しかけ鎌倉大使です」と甘糟さん。フェア中はこまめに訪れて、草花を活けかえたり、ディスプレイのチェックをしているそう

ブックフロアに冷凍庫が登場!?

紹介したいお店はたくさんあったので、選ぶのは楽しかったです。

勝手に“鎌倉三大中華”と認定した「イチリンハナレ」のよだれ鶏のタレ&とまらないナッツ、「かかん」の麻婆豆腐の素、「邦栄堂製麺」のスープ付き生中華麺は予想以上の大人気で、驚きました。
これらは前回もご紹介したかったのですが、冷蔵庫が必要だったので断念した経緯がありまして、今回は無理を言ってブックフロアにも冷凍庫を設置してもらいました。

邦栄堂製麺の生中華麺は、鎌倉で食事しているときに思い付きました。
鎌倉の美味について綴った『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)にも書いた日本料理「田茂戸」で食事していて、シメに邦栄堂製麺さんの麺を使った「鯛のうしお柳麺」が出てきたんです。これだ!と思い、邦栄堂製麺の代表に連絡して「鎌倉商店」の特別セットを作っていただきました。

他にも、『鎌倉だから、おいしい。』に書いたお店のものがたくさん並んでます。イタリア料理の「オルトレヴィーノ」からは煮込みやパスタソースの缶詰、コーヒーショップ「ヴィヴィ・ディモンシュ」からはここでしか買えないオリジナル・ブレンドのコーヒー、「ハウス・オブ。フレーバーズ」の焼き菓子など。飲食以外には、鎌倉の生活のマスト・アイテムであるTシャツやキャップ、人気のパン屋さんのトートバッグ、お香やハーブティー香りなんかも揃います。手に取りやすいものばかりですよ。

ブックフロアには、よだれ鶏のタレや生中華麵などが入った冷凍庫が設置されている

海沿いの生活に欠かせないキャップは、シンプルながらこだわりのあるデザイン

おしゃれなパッケージの缶詰はオルトレヴィーノのパスタソース。「保存食のつもりがおいしくてつい食べちゃいます」

ここでしか出会えない貴重なものもラインナップ

売り場にあるお店のご紹介文はぜひ読んでいただきたいです。短いエッセイのつもりで私が書きました。

もちろんどれも気に入ったものばかりなんですが、中でもamanaiさんの黒檀のお箸は特におすすめ。うちのお客様用にずっといいお箸を探していたんですが、新しくできたこのセレクトショップでようやく見つけました。お客様用に買ったつもりが、すっかり自分用にしてしまいました。

貴重なのはインディアンジュエリーです。由比ヶ浜通りにあった「井上宝飾店」は、70年代、日本に初めてインディアンジュエリーを紹介したお店。数年前にお店を閉められましたが、頼み込んで、その残り少ない在庫の中からナホバ族とズーニー族のバングルを出品しています。重みと輝き、細工の美しさは、こう言ってはなんですが、買わなくても実際に見て欲しい。すばらしいですから。

器好きな方には、金継ぎの器は今回のポップアップで初めて選びました。陶器や磁器だけでなくて、漆やガラスを金継ぎしたものもあるんですよ。鎌倉在住の金継ぎ作家によるものなんですが、こちらも仕事の丁寧さを味わってもらいたいですね。

今回の「鎌倉商店」は5月31日までですが、鎌倉の自宅には古い器がたくさんあるので、今後、金継ぎやアンティークの器でお茶や食事をして気に入ったものを買えるような仕組みを作れたらと考えています。

鎌倉在住の金継ぎ作家による金継ぎ。漆やグラス、洋食器もある

お店の紹介文はすべて甘糟さんが書いたもの。まるで小エッセイを読むよう

鎌倉はお経と潮風の街

今年のゴールデンウィークはコロナ禍前と同じくらい鎌倉は人で溢れていて、街に活気が戻ってきたのを実感しました。

「古都・鎌倉」といっても、例えば京都や金沢のように歴史的な街並みがたくさん残っているわけではないんですよね。お寺や神社はたくさんありますけれど。点在するお寺や神社、そして山があって海がある。私なりにいえば、鎌倉はお経と潮風の街でしょうか。その二つの相反する要素をうまく溶け合わせているのは、やっぱり江ノ電だと思います。

コンパクトなのも鎌倉の良さですね。旧市街って本当に小さなエリアですから、多分、1日あればいろいろな名所やお店を回ることができるんじゃないかな。江ノ電という最強の移動手段がありますし。

さまざまな分野の専門店がけっこうあるので、それをみて回るのも楽しいと思います。和紙だけのお店やチーズだけのお店はもちろん、ハチミツ専門店や靴下専門店、手紙を書くためのものが揃うお店なんかもあるんですよ。きっと都心に比べて家賃がリーズナブルで店主のみなさんが自分のペースで商売できるんじゃないかなあ。最近は家賃も上がってきているようですが。

昨年、オープンしたレガレヴはスフレが大人気のお店。紅茶やコーヒーはもちろんお酒にも合うクッキーをセレクト

自宅の庭で摘んできた紫陽花をディスプレイ。この一角が鎌倉の雰囲気に包まれる

海を感じながら都会の楽しみを捨てなくていい

コロナ禍のこの2年間は東京に出て行くことはほとんどなかったのですが、最近は頻繁に東京を訪れています。
その度に、「空が小さい!」って感じます。ビルが高いですからね、海のそばで暮らしている私には、東京の空は少し息苦しいかも。車で鎌倉に帰ってきて向かって海岸線に出るとほっとします。私、バブルの申し子なんて言われますけれど、もう都会派じゃなくなったなあと思います(笑)。

鎌倉の暮らしで気に入っているのは、なんといってもすぐに海に出られること。
海辺を散歩するだけで気持ちが解放されます。

最近は、東京から人気のレストランが移転してくることも多いですね。鎌倉野菜や新鮮な魚介類も手に入りやすいから料理人には興味深いエリアなのかもしれません。

10年前に比べて鎌倉にはいいバーがたくさんできました。ホテルも増えていますし、夜も活気づいてきたんじゃないかな。自然を身近に感じながら、街の楽しみを味わえるので私には住みやすいところです。

「鎌倉の海辺を歩くと開放感に包まれます」と甘糟さん

変化していく鎌倉に思うこと

コロナの影響もあって、鎌倉に移住される方が多く、若い方が増えました。

古いビルが取り壊されて新しい商業施設に生まれ変わることも少なくなくて、インバウンド需要が戻ってくるとさらに街の景色が変わるかもしれませんね。
長くこの街に住む者としては、できる限り今までの景色を壊して欲しくない。古い建物を保存しながら進化する街であるといいなと思います。

まだコロナが完全に収束したわけではありませんから、鎌倉まで足を運ぶのを躊躇う方もいらっしゃるかもしれません。そういった方は「鎌倉商店」で鎌倉の雰囲気を味わってみるのはいかがでしょうか。
私のサイン本もありますので、よかったら手に取ってみてくだい。

まだまだご紹介したいお店やものがたくさんあるので、これからも“自称・押しかけ鎌倉大使”を続けますよ。

商品と一緒に甘糟さんの本や鎌倉に関する本も展示されている

撮影/井上たろう
構成/百田なつき

「甘糟りり子が選ぶ鎌倉商店」
鎌倉を知り尽くした甘糟りり子さんがセレクトしたおすすめの逸品が並ぶ。
会期 :2022年5月1日(日)~2022年5月31日(土)
場所 :代官山 蔦屋書店1号館 1階 ブックフロア
時間: 代官山 蔦屋書店の営業時間通り
主催: 代官山 蔦屋書店
共催・協力 :甘糟りり子
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/26388-1728310429.html
※入荷数に限りがあります。売り切れの場合はご容赦ください。

鎌倉だから、おいしい。

甘糟 りり子

2020年4月3日発売

1,650円(税込)

四六判/192ページ

ISBN:

978-4-08-788037-3

この本を手にとってくださって、ありがとう。 でも、もし、あなたが鎌倉の飲食店のガイドブックを探しているのなら、 ごめんなさい。これは、そういう本ではありません。(著者まえがきより抜粋) 幼少期から鎌倉で育ち、今なお住み続ける著者が、愛し、慈しみ、ともに過ごしてきたともいえる、鎌倉の珠玉の美味を語るエッセイ集。 お屋敷街に佇む未来の老舗(イチリンハナレ)、自営の畑を持つ野菜のビーン・トゥー・バー(オステリア・ジョイア)、カレーもいいけれど私はビーフサラダ(珊瑚礁 本店)、今はなき丸山亭の流れをくむ一軒(ブラッスリー・シェ・アキ)、かつての鎌倉文士に想いを馳せながら(天ぷら ひろみ)……ガイドブックやグルメサイトでは絶対にわからない、鎌倉育ちだから知っているおいしさと魅力に出会える1冊。 素材が豪華ならいいというものでもない、店の内装もまた味わいの一端を担うもの、いいバーとバーテンダーに出会う喜び……著者自身の思い出や実体験とともに語られる鎌倉のおいしいものたちは、自然と「いい店」「いい味」ってこういうことなんだな、という読後感をくれる。 版画のように精緻なタッチで描かれた阿部伸二によるイラストも美しく、まさに読んでおいしい、これまでなかった大人のための鎌倉グルメエッセイ。

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