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『探偵!ナイトスクープ』は絶滅危惧種? テレビ番組オープニングも決まり文句も減少傾向か? タイパ重視の今、レギュラー番組の冒頭部分を調べてみたら…

集英社オンライン / 2023年9月21日 18時1分

昭和の時代――テレビ番組はオープニングで毎回長い口上が述べられ、テーマ曲が流れ、出演者の紹介にも時間がかけられていた。いわゆる文化の一つでもあった番組のオープニングは、タイパ重視の社会でいかにして存在しているのか? テレビ番組に関する記事を多数執筆するライターの前川ヤスタカが、「挨拶程度が大半」という自説をもとにレギュラー番組の冒頭について検証する。

テレビ番組のオープニングに見る令和と昭和のコントラスト

少し前、タイパ重視の現代においては流行歌のイントロが短くなっているというようなトピックがあった。同時にB’zの「LOVE PHANTOM」の異様なイントロの長さも改めて話題になっていたと記憶している。



テレビ番組も同様だなと感じることは多い。
例えば、番組最後のスタッフロールは昔のような目で追えるスピードでは流れず、一時停止しないと確認できないくらいの勢いで過ぎていってしまう。

では、テレビ番組のイントロともいうべき番組冒頭はどうだろう。

昭和のテレビ番組では、多くの番組で毎回長い口上が述べられていた。
有名どころでは桂小金治が司会の『それは秘密です!!』(日本テレビ系列)なんかがそうだ。

「雨止んでひと傘を忘る。兎角人間は時の流れに過ぎし日のことを忘れがちなものです。推理と思い出のご対面。それは秘密です!!」

ここまで長いフレーズを話してから番組本編はスタートしていたのである。

例外的な番組は『探偵!ナイトスクープ』のみ?

今、こんな始まり方をしている番組はパッと思いつく限り『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)くらいではないだろうか。

「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、さまざまな謎や疑問を徹底的に究明する探偵ナイトスクープ。 私が局長の◯◯です」

という口上は、初代局長から脈々と引き継がれている。上岡龍太郎時代は流麗なこの口上が実にハマっていたが、西田敏行局長以後はやや様式美として残した感があり、松本人志現局長はこれを言う際、いまだにちょっと照れが見える。

しかし、これは現代ではかなり例外的なように思う。

また、タイパとはちょっと違う観点だが、以前は「毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部でございます」といった「口上」とまではいかないものの「お決まりのフレーズ」が発せられることが多かった。こういったものもずいぶん減った気がする。

なんとなくのイメージだが「さあ、始まりました」程度の挨拶で始まるのが大半ではないか。出演者紹介も早々にどんどん本編に入っていくというのがやはり最近の流れのように思う。

ならば、ちゃんと調べてみようというのが本稿の趣旨である。

『探偵!ナイトスクープ』に近いのは『FNN Live News α』

今回は東京キー局、NHK総合の6局につき、2023年8月現在のレギュラー番組の冒頭部分がどうなっているのかを調べてみた。

いつものように全録の手作業チェックなので、漏れなどがあった場合はご容赦願いたい。

「口上」っぽいものとして唯一かなと思ったのは『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系列)の「この番組は世間で話題となっている様々な件に対しちょっとだけ首を突っ込んだり 突っ込まなかったりする番組です」のところくらい。他は基本的に無かった。

ただ口上とまでは言わないまでも、一つだけだいぶ長く冒頭に喋る番組があった。フジテレビ系列のニュース番組『FNN Live News α』である。

冒頭に堤礼実アナが「こんばんはLive News αです。今夜も最後までお付き合いください。働く皆さんの1日の終わりに、明日のプラスアルファにつながるニュースをコンパクトにまとめてお伝えします」と話すのだ。

その他のニュース番組は、基本的に冒頭は「おはようございます」「こんにちは」などの挨拶だけで本題に入っていたが『FNN Live News α』だけは例外的に長く、全然「コンパクトにまとめてお伝え」していないのが印象に残った。

あの決まり文句を言わなくなっていた『出没!アド街ック天国』

また決まり文句系もかなり少なかった。

かつては決まり文句の代表格だった「アド街」も今は言わなくなってしまっている。

「地域密着系都市型エンターテインメント『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系列)。あなたの街の宣伝本部長、愛川欽也です」

というフレーズで始まっていた「アド街」だが、現在は番組ロゴに「地域密着系都市型エンターテインメント」とあるだけで、現宣伝部長の井ノ原快彦は言っていないのだ。

司会者が言う決まり文句系だと以下くらいである。

・有吉ゼミ!開講ー!(『有吉ゼミ』日本テレビ系列)
・行列のできる法律相談所へようこそ(『行列のできる法律相談所』日本テレビ系列)
・題名のない音楽会へようこそ(『題名のない音楽会』テレビ朝日系列)
・あなたの常識は非常識、ソレダメ!(『ソレダメ!〜あなたの常識は非常識!?』テレビ東京系列)
・ぶっつけ本番だから生まれる旅がある、サンドどっちマンツアーズ(『サンドどっちマンツアーズ』NHK)
・働く大人の昼ごはん、それが!サラメシ(『サラメシ』NHK)
・あしたが変わるトリセツショーへようこそ(『あしたが変わるトリセツショー』NHK)

意外とあると思ったかもしれないが、よく見るとただの「ようこそ」で3つも稼いでいる。それを除けばかなり絶滅危惧種といえる。

司会者ではなく番組のタイトルバックでの決まり文句も入れると

・マンデーレイトショー、月曜から夜ふかし(『月曜から夜ふかし』日本テレビ系列)
・裸のトークバラエティ、あちこちオードリー(『あちこちオードリー』テレビ東京系列)
・サッカーをこの国の文化へ、FOOT×BRAIN(『FOOT×BRAIN』テレビ東京系列)
・あらゆる金額を可視化して現代社会を学ぶ、有吉のお金発見突撃カネオくん(『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』NHK)

といった感じであった。

「視聴者を一刻も早く本編へ」。番組の意識がもたらすアイデア

では、これ以外の番組はどう始まっているかというと

(1)挨拶(おはようございます・こんにちはなど)
(2)さあ始まりました、◯◯◯
(3)番組名のみ叫ぶ
(4)コーナー名を叫ぶ、

大体がこの4類型に当てはまっていた。

「(4)コーナー名を叫ぶ」というのは、番組名はみんな知ってますよねの前提で「ハモリ我慢ゲーム!」とか「色鉛筆の才能ランキング〜」とかのように、コーナー名からいきなり入るパターンである。

これを見るとそもそもイントロに力を入れようとか、時間をかけようという番組が、だいぶ減っているのがよくわかる。とにかく一刻も早く本編へという感じである。

また、スタジオに司会者がいるにもかかわらず、スタジオパートからではなくVTRからヌルッと入る番組も多かった。

その場合、スタジオパートに初めて来たときが冒頭ご挨拶のタイミングになるのだが、指原莉乃の『ゼロイチ』(日本テレビ系列)に至っては、VTRを延々25分も見てから「さあ今週も始まりました!ゼロイチ」と言っていた。

こうなると何が番組イントロなんだかよくわからない。いきなりサビから入る歌みたいなもんだろうか。

さらには、タイトルバックだけで何も言わず始まる番組も多かったし、タイトルバックすらないものもあった。

現代の番組では、テレビ画面の左上あたりにテロップで番組タイトルが常に出続けているので、別にそれで困ることはないのかもしれない。

番組のオープニングから失われていったものとは…

こうなると「番組オープニング」という文化自体が廃れていくことを懸念してしまう。

かつての番組は長々と耳に残るオープニングテーマが流れたり、出演者の入場や紹介にもずいぶん時間をかけていた。
今、オープニング曲に長い時間を割くのは、一部のアニメ、NHKの朝ドラ、大河ドラマ、日本テレビ系列の『笑点』くらいである。

出演者紹介も多くの番組が名前テロップのみで終わらせがちで、現在は『アメトーーク!』(テレビ朝日系列)ですら、出演者が一人一人登場したり「僕たちは、◯◯芸人です」と言っていたりした箇所はカットされている。

番組のオープニングには視聴者を引き込む「導入」という役割がある

タイパ重視の世の中とはいえ、これでいいのだろうか。

歌のイントロも、テレビのオープニングも「導入部分」として客を引き込む重要な役割がある。
落語だって、いきなり本題に入ることはなく、枕と呼ばれる世間話や小噺をしてから本題に入るのが普通だ。格闘技でも選手入場やリングアナのコールがあるからこそ、ゴング前の緊張感は高まっていく。

何でもかんでもいきなり本題、いきなりゴングではやっぱり味気ない。
これから始まる本編にワクワクしながら、オープニングをゆっくり見る余裕が欲しい。
古い感覚かもしれないが、私はどうしてもそう思うのだ。

番組オープニング文化、何とか残してほしいものである。

最後に余談だが『ヒルナンデス!』(日本テレビ系列)のスタジオパート冒頭、ナンチャンが叫ぶ最初の一言が何度聞いても毎回聞き取れなかった。

「はいおっちゃんしたー月曜ヒルナンデスです」
「はいまいやしたー水曜ヒルナンデスです」
「はいわしたー金曜ヒルナンデスです」

あれなんて言ってるんですか?

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太

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