「最終回は“100倍返し”。 “自然”と“笑い”に包まれた撮影を語る」中村倫也×川口春奈 ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念スペシャル対談
集英社オンライン / 2023年9月15日 18時1分
都心からクルマで1時間半ほどで辿(たど)り着く、東京都でありながら緑濃い山々に囲まれた、自然豊かな集落の中に建つ一軒の古民家。ここは池井戸潤さん原作のドラマ『ハヤブサ消防団』で中村倫也さん演じるミステリ作家の主人公・三馬太郎(みまたろう)が暮らす桜屋敷のロケ地であり、この日は川口春奈さん演じるヒロイン・立木彩(たちきあや)との重要なシーンの撮影が行われていた。
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ハヤブサ消防団
著者:池井戸 潤
定価:1,925円(10%税込)
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ドラマ『ハヤブサ消防団』は、全話を通して、緑あふれるロケーションで撮影が行われた。
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ドラマの最終回の収録現場にお邪魔して、中村さん、川口さんにお話を伺った。
都心からクルマで1時間半ほどで辿(たど)り着く、東京都でありながら緑濃い山々に囲まれた、自然豊かな集落の中に建つ一軒の古民家。
ここは池井戸潤さん原作のドラマ『ハヤブサ消防団』で中村倫也さん演じるミステリ作家の主人公・三馬太郎(みまたろう)が暮らす桜屋敷のロケ地であり、この日は川口春奈さん演じるヒロイン・立木彩(たちきあや)との重要なシーンの撮影が行われていた。
ドラマはいよいよクライマックスを迎えるとあって、時折漏れ聞こえてくるせりふからもシリアスな場面であることが伝わってくる。
山の向こうに陽が落ち、日中の強烈な日差しも和らぎ、吹く風も心地よく感じられる夕暮れどき、中村さんと川口さんとの対談が始まった――。
構成/澤田真幸 撮影/松林寛太
初日からヒルに咬(か)まれる
――撮影、お疲れさまでした。物語も佳境を迎え、撮影自体も残すところあとわずかという状況かと思いますが、まずはこれまでを振り返って印象に残っているエピソードや思い出を教えてください。
中村倫也(以降、中村) 僕は1話目の長回し(編集部注:消火活動のシーンを約4分にわたってワンカットの長回しで撮影を行った。太郎が、初めて地元の消防団による消火活動を目の当たりにする場面)ですね。消防団のみんなとの絆が深まったシーンなので、そこがパーンと思い浮かぶかな。あとは何だろう。如実にCGで増やされている第4話のホタルとか。
川口春奈(以降、川口) あぁ(笑)。
中村 実際にホタルはいたんですよ。ただ、人が集まって照明をたいたら逃げちゃうので、完成版を見たらけっこうCGで増やされていたなって。それでいうと、自然豊かな田舎が舞台の作品だから、やっぱりロケーションは印象に残っていますね。
川口 私もそうです。ホタルが飛んでいたり、虫が本当にたくさんいたり、そういう自然に囲まれた場所にしょっちゅう行っていることが、この作品では当たり前になってますけど、普通はなかなかないですよね。私は田舎出身だから、毎回すごく懐かしい気持ちになります。ちょっと遠いけど、この環境はやっぱりいいですよね。すごく癒やされます。
中村 嘘ついているでしょ、今。
川口 えっ、ついてないですよ。遠いのはちょっと大変だけど、本当に癒やされてます。
中村 本当? 遠いと暑いしかインスタに載せてなかったから。
川口 「しか」って(笑)。そんなことないです。
――川口さんのオフィシャルYouTubeチャンネル「はーちゃんねる」では、ヒルに咬まれたとおっしゃっていましたね。
川口 そう、初日でしたね。ここじゃなくて、群馬のほうだったのかな。そこもすごく自然があって、気づいたら咬まれてました。
中村 初日から大変だったよね。クランクインしてすぐに泣かなきゃいけなかったし。
川口 そうそう。しかも、最初の頃はあんまり出番がなくて。
中村 1シーン、2シーンだけで終わりっていうときがあったよね。
川口 だから、移動している時間のほうが長くて。贅沢だなと思いながら行かせていただいていました(笑)。
中村 偉いなあ。
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なかむら・ともや ◆ 1986年東京都生まれ。ドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」「仮面ライダー BLACK SUN」、映画『ハケンアニメ! 』、ミュージカル『ルードヴィヒ~ Beethoven The Piano ~』、舞台『ケンジトシ』など、幅広く活躍。著書に『THE やんごとなき雑談』などがある。9月29日公開の映画『沈黙の艦隊』、11月から上演の舞台『OUT OF ORDER』への出演を控える。
いまだにあれの正解がよく分からない
――川口さんは五島列島の出身ということもあって、自然に触れて懐かしいということでしたが、中村さんはいかがですか? リフレッシュされていますか?
中村 僕は自然とか虫が好きなので、この撮影はかなり満喫していますね。あまりにも暑いときは危ないので外に出ないようにしていましたけど、撮影がスタートしたのは5月頃で、その頃は気候もよかったから、よく虫を探しに歩いていました。
川口 この間、猿が出たんですよ。6頭ぐらい。ボスがすごく大きくて。何かワクワクしましたね。東京で大きな猿が見られるなんて。
――本当に自然豊かなところですよね。目の前の山の緑もモリモリしていてすごいです。
川口 すごいですよね。ブロッコリーに見える。
中村 どうしたのかな、春奈ちゃん、疲れているのかな(笑)。
――話題をドラマに戻しますが(笑)、中村さん演じる三馬太郎が、ドラマの最初と最後でカメラ目線になって語るという演出がとても印象的でした。視聴者との橋渡しをする役でもあると思いますが、このシーンはどのように作られていったのでしょうか? 中村さんのアイデアがあったりしたのですか?
中村 ないです。台本に書いてあったままですね。いまだにあれの正解がよく分からないままやっています。
川口 安心しますね!
中村 安心するの?
川口 はい。問い掛けられている気がして。
中村 皆さんやったことがないから分からないかもしれないですけど、あれをやるとき、カメラのレンズの手前にフィルターがあるんですよ。そのフィルターに反射して、だいたい自分の顔が見えているんです。自分の顔を見ながら芝居しているような感じになって、すごく気持ち悪いんですよ(笑)。だから、いまだに慣れないですし、正解もよく分からずやっています。ただ、今の時代、本当にCGが発達しているので、僕がどんな芝居してもCGで思うように直してくれるので。
プロデューサー そんなわけないですよ。
中村 金さえ積めば何でもできるんです。
プロデューサー そんなわけありません(キリッ)。
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かわぐち・はるな ◆ 1995年長崎県生まれ。ドラマ「麒麟がくる」「極主夫道」「着飾る恋には理由があって」「ちむどんどん」「silent」、映画『九月の恋と出会うまで』『聖地X』など多くの作品に出演。映画『マイ・エレメント』では、日本版主人公の声優を務めた。2024年2月9日公開の映画『身代わり忠臣蔵』への出演を控える。オフィシャルYouTubeチャンネル「はーちゃんねる」も人気。
消防団のおじさま達とは仲良くなれた!?
――川口さん演じる立木彩は、東京からハヤブサ地区に引っ越してきた映像ディレクターですが、時に太郎に嘘をつくなど、本心が見えづらい謎の女性でした。物語の中盤になって正体がどんどん明らかになっていき、SNSなどではその謎をめぐる考察でも盛り上がりましたが、川口さん自身、どのように役と向き合っていましたか?
川口 激ムズでしたね。今までで一番、よく分かってないと言ったらあれですけど、難しい役だなという印象です。彼女の気持ちとか、葛藤していくさまみたいなものは分かってはいるんですけど、実際に表現するのはなかなか難しいなと思いながら演じていました。
中村 特に前半は、作劇上の都合じゃないけど、細かい心情と動きが必ずしも一致していないときもあったと思うし。
川口 そうですね。怪しさを演出するための。
中村 何だか分からないけど、すっと無表情になるとか。
川口 そういうのも難しかったですね。
――今日の撮影はどうでしたか? 重要なシーンの撮影だったようですが。
川口 今日のシーンはほぼほぼラストに近いので、難しさでいったら中盤のほうが難しかったです。やっぱり後半になるにつれて自分なりに理解も進んでいくし、腑に落ちていくことが多いんですけど、中盤はどっちつかずというか、どう見せていけばいいか考えることが多くて難しかったですね。
――先ほどの写真撮影のとき、お二人で軽口を言い合ったり、とても自然な感じで会話をされていましたが、ドラマ撮影の合間はどんな話をしていますか?
中村 今日、どんな話したっけ。
川口 何だっけな……。本当に覚えていないレベルの内容です。話さないときだってあるし。
中村 雑談ってやっぱり雑だから雑談なんですよ。
――演技に関して話をすることはないですか?
中村 そんな話はしないです。できる限り仕事の話なんかしないよね。
川口 はい。しないですね。
中村 役者で仕事の話をする人、滅多にいないですよ。話をしだしたらたぶん嫌われます。うるせえなって(笑)。
――ベテラン揃いの消防団のおじさま達とも?
中村 しないです。だって、そんなもの芝居で見せればいいんですよ。話さなくたって分からせるのが芝居なので。
――たしかにそうですね。ところで、消防団のおじさまといえば、ドラマの制作発表記者会見の際に、川口さんが消防団の皆さんのチームワークが良すぎてなかなか入っていけないということをちらっと話していましたが、撮影を重ねる中で関係性にも変化はありましたか?
川口 最後まであの中には入れず終(じま)いでした(笑)。
中村 後半になってからは一緒のシーンがあんまりなかったもんね。
川口 そうなんです。第4話で居酒屋さんかく(編集部注:ハヤブサ消防団のメンバーが毎晩のように集う居酒屋)に集まってみんなで乾杯しているところは、唯一わいわい楽しく迎えられたような、そういうシーンだったかな。その日の朝に(橋本)じゅんさんと共通の話題が見つかって、そのことでずっとおしゃべりしていたのは覚えています。
最終回メイキング写真から
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中村倫也さん演じる主人公・三馬太郎が暮らす桜屋敷での撮影の様子。
立木彩役の川口春奈さんとの緊迫した会話シーンを収録。
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太郎が執筆活動を行うデスク。
太郎は虫が苦手で、さりげなく殺虫剤が置いてある。
ボケを無視されるようになったら仲良くなった証
――最終回の見どころをそれぞれ伺ってもいいですか?
中村 やっぱり何十倍返しまでいけるかというのは、ぜひ楽しみにしてもらいたいですね。
川口 100倍ぐらいじゃないですか。
中村 100倍返しだ!
川口 最終回は拡大放送になるんでしたっけ?
プロデューサー いえ、通常放送です。
川口 じゃあ、とんでもなくぎゅぎゅっと回収されますね。とんでもないスピードでクライマックスに向かっていくので、きっと濃厚ですよ。
中村 ねぇ、今、ちょっと俺、『半沢直樹』でボケていたんだけど分かった?
川口 もちろん、分かってましたよ。みんな分かってましたよね?
一同 (頷(うなず) く)
中村 何の反応もないから不安になっちゃった。
川口 大丈夫ですよ(笑)。
中村 これはいい兆候なんですよ。僕のつまらないボケを無視してくれるようになったら仲良くなったという証です。なので、代々、共演者に無視されてきています(笑)。
川口 そうなんですね。
中村 今日、初のフル無視だったので、うれしい。
川口 よかったですね(笑)。
中村 話は脱線しましたけど、最終回は怒濤の展開が待っていますから、ぜひTVerで。
プロデューサー リアタイじゃないんですか?
川口 FODでお願いします。
プロデューサー FODは違います。他局です。
川口 じゃあ、Huluで。
中村 Huluも他局でしょ。
川口 じゃあ、Amazonプライムで。
中村 手当たり次第だな、この人(笑)。
川口 じゃあ、TELASAで。
中村 おっ、やっと正解!
――TELASAではスピンオフドラマ(『恋の妄想♡消防団』)も放送中ですね。
川口 そうですよ。
中村 リアタイでも配信でも、ぜひ楽しんでください。
「小説すばる」2023年10月号転載
9月14日(木)よる9時 最終回放送!
ドラマ『ハヤブサ消防団』
出演 中村倫也 川口春奈
満島真之介 古川雄大 岡部たかし 梶原善
橋本じゅん 山本耕史 生瀬勝久
原作 池井戸潤『ハヤブサ消防団』
脚本 香坂隆史
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