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「MVPは岡田監督」05年V戦士・鳥谷敬が語る、阪神18年ぶりの「アレ」を引き寄せた岡田野球の劇的進化

集英社オンライン / 2023年9月15日 7時1分

9月14日、圧倒的な強さで阪神タイガースが18年ぶりにセ・リーグ優勝をはたした。長らく優勝から遠ざかっていたチームを戦う集団に変えたのは、いったいなんだったのか? 阪神OBで2005年V戦士の鳥谷敬氏は、2次政権就任1年目でのVとなった岡田彰布監督の采配を要因にあげる。

大きかった「中野のコンバート」

9月に入って負けなしの11連勝。周囲が驚くような勢いのまま、阪神タイガースが、18年ぶりに「アレ」をつかみ取りました。

MVPが誰かと問われると判断が難しいですが、誰がチームに最も大きな変化をもたらしたかといえば、岡田彰布監督で間違いないでしょう。もし、岡田監督でなかったら…。



シーズン前に中野拓夢選手を遊撃から二塁にコンバートしていたでしょうか? 右翼の選手をうまく入れ替えることで、ファームの選手たちのモチベーションを保ちながら、ルーキーの森下翔太選手を育てるという戦い方ができたでしょうか?

これは他の誰が監督をやったとしても、なかなかできなかったことだと思います。

岡田監督(写真/共同通信社)

ひとつひとつの采配を見ても、勝負どころでの代打起用や、想像できない投手起用など、ほぼ岡田監督の思った通りに事が進んでいるように見えました。

リーグ優勝への貢献度が高かったのは、リーグ唯一の防御率2点台をキープする安定した投手陣でしょう。シーズン序盤、青柳晃洋投手、西勇輝投手という実績ある選手が苦しんでいるなか、村上頌樹投手、大竹耕太郎投手が、その穴を補って余りある活躍を見せてくれました。

湯浅京己投手、浜地真澄投手がいないブルペン陣も、全員でカバーしていた印象がありますし、島本浩也投手、桐敷拓馬投手などの台頭もチームにとっては非常に大きかったと思います。

最大13ゲーム差を逆転された08年の屈辱

岡田監督は、2008年に最大13ゲーム差を逆転され、リーグ優勝を逃した経験があります。そのことがどこか頭にあったのでしょう。

なので春季キャンプから、8月〜9月に勝てるようなチーム作りを意識していたように感じます。勝負どころの9月に入って怒涛の連勝で優勝マジックをあっという間に減らしましたが、その間、すべての試合で先発投手に勝ち星がついたことは、決して偶然ではありません。

細かい登板間隔の調整に加え、思いきって若い投手を起用するなど、先発投手を5人、6人ではなく、7人、8人のローテーションで戦うという形を徹底したことが、ここにきて結実したのでしょう。

鳥谷敬氏

結果だけみると、シーズンのどこかでいつか来るであろうと思っていた、本当に苦しい時期がないまま、リーグ優勝まで突っ走ってしまいました。

投手陣が安定していたことで、僅差の試合をものにすることができました。ここまで1点差ゲームが23勝10敗、勝率が7割近くと12球団の中で圧倒的なのも当然だと思います。同一カード3連敗は、ここまででわずかに1度だけ。本当に負けないチームだったと思います。

さらには、8月4日からの横浜DeNAベイスターズとの3連戦3連勝、9月8日からの広島東洋カープとの3連戦3連勝など、追いかけられているチームとの直接対決での強さも際立っていました。

優勝までの戦いを振り返ってみると、いろいろなポイントがあったとは思いますが、個人的には、1点ビハインドの9回表2死ランナーなしから逆転した、5月24日の東京ヤクルト戦の勝利がシーズンの流れを作ったと思っています。

翌日も、同点の延長10回2死ランナーなしから勝ち越しと、ギリギリで勝利をつかみました。結果的には、この2試合が9連勝につながり、5月は19勝5敗と大きく勝ち越し。早い時期に貯金が作れたので、その後も楽に戦え、どんどん思い通りにできるという、いい循環が生まれました。

もし、この神宮での2試合に負けていたら、シーズン全体の流れも変わっていたかもしれません。

「四球は安打と同じ価値がある」という岡田監督の野球観

チームの中にいるのと、外から見ているのは違うので、あまり勝手なことは言えませんが、自分が選手だったころと比べると、岡田監督は、選手とのコミュニケーションの取り方なども意識して変えたのではないでしょうか。

頑固に見えて、柔軟なところもあるので、年齢の離れた選手たちにとって最善だと思う方法をとったのだと思います。

この1年間、選手たちの成長を見ていると、あらためて自分がルーキーから5年間、岡田監督のもとで、いい過ごし方をさせてもらっていたのだな、自分もこうやって野球を覚えさせてもらったのだなと感じます。

甲子園球場(写真/shutterstock)

岡田監督はよく「普通にやればいい」と言われますが、自分が一番学んだのは、やはりグラウンドに立ち続けるということです。岡田監督のもとで戦った5年間、オープン戦からシーズンまで、ケガがなければ当たり前のようにフルイニング出場でした。そこで、グラウンドに立ち続ける意味、価値を教わったことで、自分の野球観も大きく変わりました。

今シーズンの戦いをみていると、四球というものに対する岡田監督の野球観が、選手にうまく伝わったのだと思います。

シーズンが始まる前に、四球の価値をあげるため、年俸の査定ポイントを変えたという話も聞きましたが、選手の立場からすると、実際の金銭面では、そこまで大きいものではありません。

ただ、岡田監督が「四球は安打と同じ価値がある」ということを選手に伝えたことが、非常に大きかったと思います。実際に、昨シーズンと比べて四球は圧倒的に増え、打率や本塁打数が突出した選手がいるわけではないのに、得点はリーグ1位です。

打順やポジションを固定するなど、他にもいろいろな要因はあると思いますが、最も難しいと思われる「意識を変える」ということが、選手たちが1年間かけてじっくり成長し、自信をつけるということにつながったのでしょう。チームを勝たせることが監督にとって一番の仕事なわけですから、選手の野球観を変え、チームの勝利に結びつけた岡田監督の手腕は、本当に「すばらしい」の一言です。

18年前、2005年のリーグ優勝のことを少し思い返してみました。当時はまだプロ2年目、初めてレギュラーとして試合に出続けていた自分にとって、優勝がどうとか、チームの勝ちがどうとか、そんなところまで気が回るレベルではなかったというのが正直なところです。

もちろん、うれしくないというわけではなかったのですが、目の前の自分がやるべきことに必死で、勝ち負けを考える余裕がなかったのです。そもそも、チームが強かったので、当時はその後、何度もリーグ優勝できるものだと思っていました。まさか、自分自身にとって、あれが最初で最後のリーグ優勝になるとは…。今思えば、もう少しちゃんと味わっておけばよかったと思います。

まだ、シーズンが終わったわけではないですが、1年間の集大成として最高の結果を出した選手たちには、しっかりと「アレ」の歓びをかみしめてほしいと思います。

構成/飯田隆之

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