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ニコラス・ケイジが落語家になったら先代のネタを大切にする古典派に? 主演ふたりが入れ替わる『フェイス/オフ』と落語との意外な共通点

集英社オンライン / 2023年9月24日 11時1分

本業の落語のみならず、映画や音楽など幅広いカルチャーに造詣が深い22歳の落語家・桂枝之進。自身が生まれる前に公開された2001年以前の作品を“クラシック映画”と位置づけ、Z世代の視点で新たな魅力を掘り起こす。

ジョン・ウー監督のハリウッド出世作

Album/アフロ

昔の作品でも見たことがなければ新作映画!

一周まわって新しく映った作品の数々をピックアップする「桂枝之進のクラシック映画噺」、今回は『フェイス/オフ』(1997)をご紹介。

連邦捜査官ショーン・アーチャー(ジョン・トラボルタ)は、長年追っていた国際テロリストのキャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)をついに捕まえる。
ところがキャスターは細菌兵器を仕掛け、すでにカウントダウンを開始していることが判明する。



そこでアーチャーは、昏睡状態に陥っているキャスターの顔を自分に移植し、刑務所に収監されているキャスターの兄から細菌兵器の場所を聞き出すという驚きの計画を実行。
しかし、キャスターが昏睡状態から目覚めてしまい、アーチャーの顔を移植した姿で現れる……。

『フェイス/オフ』は、 以前本連載でも取り上げた『男たちの挽歌』(1986)でもおなじみ、香港の映画監督ジョン・ウーがアメリカに本格進出するキッカケとなった作品だ。

二丁拳銃の銃撃戦、スローモーション、鳩の羽ばたきなど、ジョン・ウー独特の作風が随所に見られる。一方で、アメリカ的スケールを意識した冒頭の滑走路チェイスシーンや、少々無理のあるSF設定には、異国で挑戦する苦悩も見え隠れした。

しかしながら、大規模な予算が投入された“外せない”作品で、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジという大物映画スターふたりの顔と役を交換するのだから、その姿勢はあまりにもチャレンジングで強心臓と言えるだろう。

相手の人となりをインストールした見事な演技

この無理難題を引き受けるにあたって、トラボルタとケイジはお互いの演技を研究し、些細な癖に至るまで入念にコピーしたそうだ。
1人2役の斬新な設定を取り入れたことで、それぞれのシーンが対比され、キャラクターがより際立っているように見えた。

ちなみに落語家は、役者と違って完全に役を演じきるわけではない。先代である師匠や大師匠の“匂い”が透けて見えることを意識して高座に上がる。
自分が演じているようで、その自分はある意味、容れ物のような無我の側面もあるのだ。

本作ではトラボルタとケイジ、それぞれが自分を殺して相手のニン(人となり)をインストールしている点で、落語とよく似た奥行きを感じた。

特にケイジの演技は振れ幅が大きく、見どころのひとつだ。
彼が落語家になったらきっと、先代のネタを大切にする古典派になるのだろう。
反対に、朝起きて自分の顔が師匠の顔になっていたら果たしてどうなるのかを考えると、あまりにも過酷なミッションだった。

ちなみに上方落語には、猫が自分そっくりに化けて勝手なことをする『猫の忠信』という演目がある。
長唄の師匠を口説く猫を障子の穴から覗きながら「おれがあいつであいつがおれか」と呟く場面があるのだが、アーチャーに扮したキャスターが妻のイヴを口説くシーンなんかは、もはやこの噺が元ネタなんじゃないかと思うくらいシンクロしていた。

『フェイス/オフ』を見ていると、落語を原作にしたハリウッド映画もあり得るような気がしてくる。
派手なアクションは演じられないが、うどんをすするシーンならぜひ任せてほしい。


文/桂枝之進

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