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1億超が当たり前、高騰し続ける「首都圏駅チカ物件」がぼちぼち一等地ではなくなるのは本当か? ロボタクシー、スペースXは普及するのか

集英社オンライン / 2023年9月28日 10時1分

ChatGPTに代表されるような生成AIやそのほかの人口知能と呼ばれるデジタルテクノロジーの進化にはすさまじいものがある。それらが私たちの生活に及ぼす未来とは? 住む家や通勤方法といった身近なことがいったいどう変化していくのかを見てみよう。『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』 (SB新書) より、一部抜粋・再構成してお届けする。

#1

資材や職人の調達から安全確保までデジタル・AI化が進む

日本の建設、建築・土木技術は、世界的に見ても質が高いと言えます。

一方で、これは他の業界の多くにも当てはまることですが、AIの活用も含めたデジタル、テクノロジーの導入が遅れています。しかし、これから先の未来ではデジタル、AI化が進みます。



まずは、資材の手配です。どの現場の、どの作業箇所でどのような資材が必要なのか。これまでは現場監督が、職人などからそのたびにヒアリングし、自らが発注していたのを、AIが代わりに行ってくれるようになります。

現場で働く作業員、技術者の調達においても、これまでは現場に行くまでどのような技術やキャリアを持つ職人が来るのか、現場監督は把握できない状態でした。これは日本の建設業界のネックでもある、多重下請け構造が大きく関係しています。

この構造を抜本的に変えるには時間がかかるでしょうが、資材と同様、職人のこれまでのキャリアもデータで保存され、現場監督などが閲覧・管理できるようになります。

その結果、たとえばトンネル工事であれば、同業務に強い職人をデータから探し出し、アサインすることができる。勤怠管理においても同様です。

安全管理においては、現場の各所や作業員のヘルメットにカメラを設置。現場の状況を一元的かつタイムリーに把握することが可能となり、トラブルが生じた際にはすぐに対応できます。

トラブル発見においても、AIによる画像解析技術を使えば、人がモニターの前にずっと座って監視している必要はありません。異常を検知した場合には、アラートを発すればいいのです。

トラブルが発生した際にも、カメラが各所に設置されているため、すぐに現場に行く必要はなく、遠隔で状況を知ることが可能です。これはカメラに限ったことではありませんが、スマートウォッチなどとも連動することで、作業員の健康状態も把握できるため、事故防止や健康被害の対策にも、大きく貢献します。

このようなサービスは、すでに広まりつつあります。2014年に設立したベンチャー、セーフィーがリードしており、鹿島建設や大林組といった日本を代表する大手建設会社の現場で導入が進んでいます。

セーフィーについては、カメラといったハードウェア領域に限らず、ソフトウェア領域、クラウド、AIに必要なデータ解析ソリューションなど、映像に関する技術やサービスを包括的に手がけている点も、特筆すべきだと言えます。

セーフィーと同じくクラウド、データを積極活用し、工事の業務効率化に寄与するサービスを展開しているベンチャーも出てきています。2012年創業の、アンドパッドです。

同社のサービスを使えば、これまで電話やメールなどで行っていた本部と現場監督、作業員とのやり取りがスマホで簡単に行え、管理も同じく簡便にできます。

加えて、工事の進捗などの情報、適宜修正が入りがちな図面や工程表、作業員の稼働状況、今後の空き状況などを、クラウドを介することで工事に携わる関係者全員がタイムリーに共有できます。

アンドパッドも先のセーフィーと同様、数多くの工事現場で導入が進んでいます。

駅前が一等地という定説は崩壊する?

東京都内に限らず、首都圏の新築マンションの平均価格が1億円を超える(平均では6000万〜7000万円)など、賑わいを見せています。

ただし、高値がついている物件にはいくつか特徴があります。昔から定説のように言われてきた駅前の一等地、駅チカ物件であることです。

なぜ、ここまで駅チカの物件に人気が集まっているのでしょうか?

現時点では、鉄道が最も安い移動手段だからです。コロナ禍によりリモートワークなどが浸透したかに見えましたが、特に日本においては物理的に会社に行く、という行為が未だに評価される傾向が強いため、交通の便が付加価値となります。

しかしこのような定説も、この先の未来では変わる可能性があると私は見ています。

今の話の裏返しになりますが、駅を使うことを前提とした鉄道が、最適な移動手段ではなくなる未来です。

筆頭として挙げられるのは、ロボタクシーでしょう。ロボタクシーが浸透し、既存のタクシーはもちろん、各種鉄道より安価に利用できるようになれば、駅まで歩いていくことはなく、自宅前にタクシーを呼び、オフィスまでドア・ツー・ドアで移動できるからです。

出勤に限りません。学校、買い物、バカンスなど、あらゆるシーンでの浸透が進むと考えられます。その結果、ターミナルの基点とされていた駅は、これまでよりも使われなくなり、周辺の不動産価格が下落。そのような未来もあり得るかもしれません。

AV(autonomous vehicle:自律走行車)、特にSAV(Smart Access Vehicle:乗合型自立運転車)が普及していくと、これまで地価や家賃の安かった、いわゆる交通の便の悪い郊外の土地や、物件の価格が上昇する可能性が高くなります。

つまり自動運転技術の発展は、都市設計や不動産価格にも影響を与える可能性が高いと主張されているのです。

ロボタクシー以外でも、このような未来の実現を予測させる動きはいくつもあります。
先述したスペースXの超高速飛行機も、そのひとつと言えるでしょう。

リニア新幹線や飛行機で地方から都市部に出勤するのが当たり前に

今後、より高速で移動できる乗り物が開発されていけば、人々の動線、アクセスエリアは大きく広がっていきます。現在工事が進んでいるリニア新幹線は、代表格と言えるでしょう。

500㎞を超える時速で走ると言われており、運行がスタートすれば、東京と関西圏はこれまでの新幹線の約半分の時間で移動できるようになります。東京―名古屋間は、約90分から約40分に。東京―大阪間は2時間以上かかっていたのが、1時間ちょっとに短縮されます。

つまり、JR中央線の始発駅である東京駅から、終点の高尾駅に行くのと同じぐらいの時間で、東京から大阪に行けるようになるのです。関東圏と関西圏の人たちが、今よりもより活発に、両エリアを移動するでしょう。

関西圏で暮らしながら、毎日東京の会社に通う人も出てくるでしょうし、逆のケースもあるでしょう。子どもの学校や習い事なども同様です。どうしてもこの学校で学ばせたい。ある先生に師事したい。そのような願いが、テクノロジーの発達により、叶うようになるのです。

このようなテクノロジーの進化や社会の変化を、いち早く許容している企業も出てきています。ヤフーでは、以前から新幹線通勤を認めていましたが、飛行機や高速バスも認めるようになりました。

交通費の月額上限額も15万円。リモートワークも推進しており、毎日飛行機通勤する必要はない、とも公言しています。企業にとっては、優秀な人材を全国各地から採用できるメリットがあります。

一方で、働く側にとっても、現在の生活を変えることなく、さらなる成長ややりがいを感じることのできる企業、職場で働くことができる。両者にとってWin-Winの未来だと思います。

このような働き方がさらに進めば、海外在住の人を日本企業が雇うような動きも活発化するでしょう。ふだんはリモートで働いてもらい、数カ月に一度物理的に顔を合わせればいい。有事の際には、その宇宙船で駆けつけることもできます。

企業にしてみれば、自社にとって欠かせないスキルを有した心強い人材を、より広いエリアから迎え入れることができるメリットがあります。

他方、働く側にとっては、地の利ではなく、己の持つスキルやキャリアが採用基準の大半を占めることになりますから、実力を持つものが正当に評価される。よりシビアな世界が待っているとも言えます。


文/山本康正 写真/shutterstock

『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』 (SB新書)

山本康正

2023/9/6

¥990

272ページ

ISBN:

978-4815622343

海外のトップ頭脳も予測した!最新テクノロジーによる2030年の世界

テクノロジーはどこまで進化するのか?
人間は駆逐される?
AIって結局、わたしたちにどんな影響を与えるの?
今、多くの人がこのような疑問を抱いているのではないでしょうか。

ChatGPT、Bing、Midjourney、Stable Diffusion…世界を大変革の波に包み込んだ最先端AI。一昨年の2022年は「画像生成AI元年」とも称されますが、現代に生きるわたしたちにとって、人工知能をはじめとする最新テクノロジーは、仕事、くらし、教育など人生のどの側面から見ても、もはや切り離して考えることが難しい存在にまでのぼりつめました。

そのような今、わたしたちの仕事やくらしのあり方、テクノロジーとの共生方法を模索することが、世界中で喫緊の課題となっています。
トレンドトピックでいえば、「教育現場で教師はAIに取って代わられるのではないか」「クリエイターはAI以上の価値創造ができるのか」など、人間にとって当たり前だった「働く行為」の見直しが各所で進んでいます。

本書では、ハーバード大学客員研究員であった山本康正氏が、「ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)など、世界を舞台に活躍する一流エンジニアを輩出する名門大学・研究機関の研究者や関係者が発表している研究データ」に基づき、ジェネレーティブ AI などをはじめとした、さまざまな最新テクノロジーによって、これから業界・産業にどのような地殻変動が起こるのかを見通しています。

エンターテインメント、金融、不動産、製造、医療・ヘルスケア、教育など、各産業ごとに、最新テクノロジーによってそのしくみや働き方、ビジネスモデルのあり方がどう変わるのか、豊富な具体例とともにみなさまにご紹介します!

この時代を生きるわたしたちにとって、これからの世界を生き抜くヒントと正しい危機感、そして心に灯がともるような希望を与える1冊です。



本書では、エンターテインメント、金融、不動産、製造、医療・ヘルスケア、教育など、各産業ごとに、生成AIをはじめとする最新テクノロジーによって、どのような変革が起きるのかを予測しています。

1章ではエンターテインメント業界。文字、画像、動画など、生成AIがさまざまなクリエイティブ生成を肩代わりし始めた今、クリエイターや広告業界にはどのような影響、ゆらぎが生じるのでしょうか? また、生成AIクリエイターの手助けが得られることにより、人間が人間らしい価値創造に時間を捻出できるようになるという明るい見方もできるでしょう。
2章では金融業。窓口業務などの大幅縮小など、特に銀行が近年テクノロジーによって受けている影響は計り知れないものです。いずれ銀行や証券、保険会社はなくなってしまう運命にあるのでしょうか? GAFAM(最近ではMATANA)による巨大経済圏の話とからめながら、解説します。
3章では不動産。メタバースの波は直近では沈下気味にありますが、いまだにわたしたちは実体を伴った生き物として現実界に存在しています。住む場所の選定や、不動産価値の判定など、リアルな世界における住む場所や働く場所に関しても、テクノロジーの力を借りれば円滑なエコシステムが構築される可能性があります。
4章では製造業。生産、物流、小売りなど、製造業は巨大なシステムサイクルで動いています。倉庫管理や商流など、モノを作り、運び、売る行為の骨組み自体が、テクノロジーによって効率化、自動化される未来も近いのではないでしょうか。
5章では医療・ヘルスケア分野。超高齢化社会では、日常的な健康管理に多くの人が関心を持っています。ウェアラブルデバイスを通して、人名が救われた事例など、テクノロジーがわたしたちの生活と福祉をサポートしてくれる未来が待っているのかもしれません。
6章では教育領域。目的意識を持って学ぶ姿勢を持たなければ、人間として生きる価値が失われていってしまいます。日本と海外の教育事情を比べつつ、教える側と教わる側との最適なマッチング策などを考案する必要性を説きます。



はじめに
・世界トップ研究機関の「警告」
――最先端テクノロジーが全産業にもたらす大地殻変動
(2030もしくは2035年を舞台に、テクノロジーがもたらした地殻変動後の世界に生きる男性/男女を主人公にした架空小説仕立て)
・本書の構成について
・なぜ今テクノロジーとその未来について考える必要性があるのか

第1章 エンターテイメント業界――破壊的技術が迫る時代の危機
【文章、画像、動画】
・ジェネレーティブ AI による脅威
【ゲーム】
・VR/AR技術がもたらす激変
【音楽、映画】
・ストリーミングサービスによる既存ビジネスモデルの崩壊
【ゲーム】
・ゲーム産業の競争激化とAI技術の台頭
【芸術、クリエイティブ表現】
・デジタルアートの台頭と伝統的アート市場の危機

第2章 金融業界――ブロックチェーンが引き起こす未曾有の地殻変動
【銀行】
・仮想通貨とブロックチェーン技術の衝撃
・AIによる資産運用戦略の革新
・銀行業界へのデジタル決済技術の波及
【保険】
・保険業界のデータ活用とプライバシー問題
【証券】
・不正取引(詐欺)対策とブロックチェーンの可能性

第3章 製造業――次世代テクノロジーがもたらす革新と破壊
・サプライチェーン管理におけるブロックチェーンの活用
・IoTによる製造業の確変
【IT・電子】
・量子コンピューティングの革命
【機械・化学・金属】
・AIによる自動化の加速と労働力不足への対策
【建築】
・3Dプリンティング技術の進化

第4章 不動産業――拡大する不動産テックと計り知れない効果
・最適な価格提示と未来予想で崩壊する既存接客モデル
・顔認証でますます便利になる住宅環境
・税金対策のシミュレーションから最適プラン提示まで

第5章 医療業界――生命と倫理にかかわる技術革新の波紋
【生命の誕生】
・ゲノム編集技術の進歩と倫理的問題
【ヘルスケア:長寿、不老、アンチエイジング】
・AIとデータ解析がもたらす個人化医療の展望
・遺伝子治療と再生医療の可能性
・医療デバイス産業の激変
【医薬品】
・バイオテクノロジーの環境リスク

第6章 教育業界――従来の教育システムが崩壊する
・オンライン教育がもたらす業界の再編と新たな競争
・VR/AR技術が生み出す革新的な学習手法
・AIによるパーソナライズド学習の台頭
・世界的な教育格差の拡大とテクノロジーの役割
・高等教育機関におけるビッグデータ活用の脅威とチャンス

おわりに
・テクノロジーの大航海時代に生き残る企業になるための処方箋
・先生が本書を通じて読者、社会、しいては世界に届けたいメッセージ

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