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〈7車種12モデルを展開〉メルセデス・ベンツのEV販売台数が飛躍的伸長のわけは?-2024年中には自社による充電インフラの整備も視野に

集英社オンライン / 2023年10月4日 10時1分

2023年上半期のメルセデス・ベンツのEV世界販売前年比93%増となった。自動車業界では、脱炭素社会に向けてEVシフト(電気自動車への移行)が加速している。各社ごとに取り組みが進むなか、メルセデスは、日本市場において7車種12モデルのEVを揃え、ラインナップを急拡大させている。なぜ、ここまで電気自動車を強化しているのか。メルセデスが描くEV戦略と見据える未来について、メルセデス・ベンツ日本営業企画部・部長の上野麻海さんに話を聞いた。

EVもメルセデス“らしさ”を継続

メルセデスは2019年に国内で初めて量産型EVモデル「EQC」を市場へ投入。



以降も、都市型SUV「EQA」やクロスオーバーSUV「EQB」からフラッグシップモデル「EQS」、ビジネスセダン「EQE」、7人乗りラグジュアリーSUV「EQS SUV」、5人乗りラグジュアリーSUV「EQE SUV」まで、数年間で多くのラインナップを展開してきた。

その理由について、上野さんは次のように説明する。

メルセデス・ベンツ日本営業企画部・部長の上野麻海さん

「私たちメルセデス・ベンツは、『2039年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量をゼロにすること)を達成する』という目標を掲げています。この実現には、電気自動車の普及が大きな鍵を握ると考えています。
CO2排出を軽減するという観点では、別の選択肢もありますが、生産拠点を含むサプライチェーン全体を踏まえた上で、EVシフトは現時点で最適解だと捉えています。このような背景から、日本市場でもEVのラインナップ拡張に努めてきました」

直近では2023年5月に「EQS SUV」、同8月には「EQE SUV」を発表し、ラグジュアリーSUVのEVモデルにもラインナップを広げているが、「メルセデス自体がエクスクルーシブなブランドのため、ラグジュアリー路線への『転換』ではなく『強化』を行っている」と上野さんはいう。

2023年8月25日に新型「EQE SUV」発表会にてその魅力を語る上野さん

「メルセデスの内燃機関モデルとEVモデルで、基本的な設計は何も変えていません。メルセデスに乗ったときに、それが内燃機関かEVかはあまり関係なく、常に最高のテクノロジーを搭載し、他社にはないメルセデスの付加価値を感じてもらえるように意識しています。
“EVならでは”ではなく、“メルセデスらしさの継続”という考えのもと、お客様の選択肢に自然と入り込むことを目指しています」

2023年に入ってEV販売台数が飛躍的伸長

EV市場の変化については「お客様の選択肢にEVが確実に入ってきている」と上野さんは手ごたえを感じている。

「2019年度はEVの販売数は2桁台でしたが、今年は7月時点で昨年年間販売の2,100台という台数をすでに超えており、さらにEVの販売が伸長すると予測しています。これは脱炭素やSDGsなど環境への配慮に対する社会的認知の向上はもとより、数年前に『カーボンニュートラル社会』を目指す政府の指針が定められ、税制優遇や補助金制度などが整備されたことも大きな要因になっています」

国内初の量産型EVモデル「EQC」と代表取締役社長兼CEOの上野金太郎さん

そんななか、数年かけてEVのラインナップを7車種12モデルまで拡大させているのは「お客様の多様なニーズに応えるため」だという。

「現行の内燃機関モデルは100種類近くあるのに対し、EVの車種が少なければお客さまの選択肢に挙がらなくなってしまう。だからこそ、エンジン車か、それともEVか。お客さまにとって、選択肢の数をどれだけ用意できるかが重要になると考えています」(上野さん)

加えて、電気自動車における「ブランドの顧客の奪い合いはナンセンスだ」と見解を示す。

「現状、日本の自動車市場全体(除軽)で電気自動車を新車購入しているのは、わずか2%といわれています。その中で、他社メーカーとシェアを争うのではなく、『ガソリン車からEVへの乗り換え』に興味を持つ既存のメルセデスオーナーをはじめとしたお客様に、どうEVの魅力やメリットを訴求できるかが大事だと考えています。
すでにメルセデスをお乗りいただいて満足しているお客さまが持つニーズやクルマの使い方に対し、EVでもボディサイズや空間などさまざまな提案を可能にすることで、EVも『選択肢のひとつ』として検討してもらえることを念頭に置いています」(上野さん)

EVの「1日試乗体験」キャンペーンに申し込み殺到

そのため、メルセデスでは実際にEVに触れ、体験できる機会の創出にも注力している。

乗り慣れているガソリン車であれば、走行中のハンドリングや乗り心地の肌感覚は掴めるが、EVの性能や充電の仕方などは、メーカーによっても特徴が変わるために「試乗体験」が肝になってくると上野さんはいう。

「ふだんは30分の試乗体験を行っているのですが、今年、1日EVをお貸しするキャンペーンを実施したところ、通常に比べて4倍以上のお申し込みがありました。若いお客さまからも多数のお申し込みをいただき、幅広い層の方がEVに興味・関心があることにあらためて気づくきっかけとなりました。
航続距離や充電環境といった電気自動車に抱く不安も、言葉では利便性や特長などを説明できますが、何よりお客さまに体験してもらい、実際にEVに乗ってもらうことで、『EVならではのよさや魅力』を実感してもらうことが大事だと考えています」

昨年12月には横浜に世界初のメルセデスのEV専用ショールームをオープンした

EV市場の発展を考える上では、充電インフラの整備が喫緊の課題となっている。「EVの普及が先か、充電インフラの整備が先か」という、いわば“ニワトリタマゴ”の議論が生じるわけだが、メルセデスでは国内200店舗以上の販売店に急速充電スタンドを設置。

2024年中には自社で充電インフラの整備に乗り出す

また、充電インフラを整える取り組みも積極的に行っている。2024年中には販売店以外にも充電ネットワークを広げていく予定だという。

「当初は自動車メーカーが充電インフラの整備を行う必要性はない。そう考えていましたが、今では『自動車メーカーとして電動車を普及させていく上で、充電インフラを整えるのも責務である』という認識に変わり、2023年の始め、欧米や中国で急速充電ネットワークを広げる構想が発表されました。
そこに、日本もEV普及に重要な市場だと捉えられ、現在、2024年度中には販売店以外の場所に急速充電設備の展開を開始する予定で動いています。メルセデスがやる以上、効率的に充電できるような『エクスクルーシブな充電体験』を提供していけるように尽力していきます」

今秋には東京・青山に国内2店舗目となるEV専用ショールームがオープン予定だ。メルセデスが展開していくEVシフトに今後も目が離せない。

今秋オープン予定の「メルセデスEQ青山」

取材・文/古田島大介

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