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【リーグ3連覇】佐々木朗希、奥川恭伸を上回る成績をあげる宮城大弥は本当に「技巧派左腕」なのか? 「由伸さんがいなければ」

集英社オンライン / 2023年9月21日 18時30分

プロ野球パリーグでオリックスバファローズが3連覇を達成した9月20日。左腕エース・宮城大弥は優勝に貢献しながら体調不良で登録を抹消され、胴上げやビールかけに立ち会うことができなかった。

宮城大弥は、技巧派なのか?

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宮城大弥は、「愛されキャラ」だ――。

球団の公式YouTubeや選手のSNS、グラウンド上での選手たちとのやり取りをみるだけでも、それはわかる。

シーズン開幕前に行われたWBCでも、侍ジャパン最年少選手として周囲からかわいがられている姿が何度となくメディアで放送された。

筆者も、これまでに、ブレイクを果たした2021年シーズン中、昨季シーズン終了後、そして今春の宮崎キャンプの3度ほど、宮城本人をインタビューする機会に恵まれたが、いつ話を聞いても物腰が柔らかく、ときに冗談を交えながら笑顔で話をしてくれたのが印象的だった。



しかし、ことマウンドで見せる表情はグラウンド外のそれとは大きく異なる。

高卒4年目、まだ22歳ながらプロ2年目から3年連続2ケタ勝利。9月20日の優勝決定時点で、すでにプロ通算勝利数は35を数える。宮城の同期は佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、西純矢、及川雅貴(ともに阪神)といった好投手がズラリと並ぶ“当たり年”だが、その中でも宮城の勝利数は群を抜いている。

宮城の投球スタイルはたびたび「技巧派」「ベテランのようだ」と称される。たしかに、マウンド上での落ち着きは22歳のそれではないし、現在は封印しているが、以前は試合中、シチュエーションによってプレートを踏む位置を変えるなど、「若手」とは思えない投球術が宮城の魅力でもある。

だが、本当にそれだけだろうか――。

プロ野球選手としては小柄な171センチという身長や、サイド気味のスリークォーターというアームアングル、さらには“左腕”というスペックはたしかに「技巧派」のそれだ。しかし、数字を見ればそれが「すべて」ではないこともわかる。

左腕から繰り出される速球は150キロを超える。奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)も、プロ通算で7.79を誇る(今季は9月21日時点で7.50、リーグ5位)。この数字を見てもなお、宮城を「技巧派」の一言で片づけていいのだろうか。

剛速球を投げることができ、三振も奪える。そのうえで、四隅を突く制球力やマウンド上での落ち着きを併せ持つ。宮城は「本格派」と「技巧派」のハイブリッドだ。

「由伸さんのタイトル独占を阻止したい」

本格派と技巧派のハイブリッドは、現代野球のトレンドでもある。日本人でいえば多彩な変化球を持ちながら160キロ近いボールを投げるダルビッシュ有(カブス)が代表格。そして何より、宮城のチームメイトには「NPB最高のハイブリッド投手」がいる。

山本由伸――。

150キロ中盤の速球を持ちながら、多彩な変化球のすべてが“決め球”になりうる。昨季まで最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の「投手四冠」を2年連続で達成。今季も4部門すべてでトップに立ち、空前絶後の「3年連続投手四冠」を射程に捉えたNPB最強投手だ。

宮城が一軍でローテに入った2021年以降、チームのエースの座はつねに山本のものだった。当然、宮城もそれは認めている。一方で、決して白旗を上げるつもりもない。2021年シーズン中、当時大ブレイクしていた高卒2年目の宮城をインタビューした際、こんなことを語ってくれた。

「由伸さんのタイトル独占をひとつでもいいから阻止したいんです」

朴訥な印象の20歳の若者から出た言葉に、思わず息をのんだ。同時に、投手としてのプライドを感じることもできた。ただ、結果的にこの年、宮城は山本からタイトルを奪うことはできなかった。

時は経ち、今春のインタビュー。当時の話を振ると、宮城は笑顔でこう返してくれた。

「今でも、『由伸さんがいなければ僕がタイトルを獲れたのに』と思っていますよ(笑)」

と同時に、偉大な先輩に対してこんな言葉も残してくれた。

「由伸さんがいるから頑張れるし、上を目指そうという思いを持ち続けることができる。本当にすごい投手だし、最高のお手本が身近にいるのは幸せだなと思っています。でも、やっぱり僕も獲れるならタイトルは獲りたいし、今年も由伸さんのタイトルを奪いたいという気持ちは持っています」

オリックスには宮城大弥もいる

3歳上のNPB最強投手を最大限リスペクトしながら、決して負ける気もない――。

先輩・後輩という意味では最高の関係性にあると感じた一言だった。優勝決定時点で宮城の成績は10勝(パ・リーグ2位タイ)、防御率2.35(同4位)、118奪三振(同7位)、勝率.714(規定の13勝に満たず)。山本はこのすべてでリーグ1位に立っている。

このままいけば、今年も「由伸さんからタイトルを奪いたい」という思いは成し遂げられないかもしれない。ただ、たとえタイトルが獲れなくても、得られるものはあるはずだ。

9月20日。オリックスバファローズ3連覇の瞬間、宮城は体調不良で登録を抹消され、胴上げやビールかけに立ち会うことができなかった。


それでも、まだチャンスはある。シーズン残り試合はもちろん、その先のクライマックスシリーズ、日本シリーズ制覇には宮城の力が不可欠だ。

現時点でオリックスの“エース”は間違いなく山本だ。だが、オリックスには宮城大弥もいる――。

ファンがそれを改めて実感するような投球を、ここから先も見せ続けてほしい。

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取材・文/花田雪

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