――MBさんがこち亀(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。以降、こち亀)を知ったきっかけは、お母様が単行本を持っていたからなのだそうですね。
そうなんです。小学生時代、母が何冊か持っていたことから興味を持ち、僕と兄で継ぎ足して揃えていきました。確か高校生の頃には最新刊に追いつきましたが、まだそのときは100巻までいってなかったんじゃないかな。
――その後も買い続けて、全巻制覇したとか。
もう大好きで大好きで、どんなことがあっても買い続けようと誓っていましたからね。しかも、同じ巻を何度も買っていたりするんですよ。
――と言うと?
僕はオタク気質なので、1巻から順にすべて並べた背表紙を見て、装飾的に『いいなあ』と満足したりするんですが、兄は実(じつ)を取る人間だったので、すぐグチャグチャにしちゃうんです。読みにくいからとカバーを外して、その辺に置いておいたりする。思えば、あのときに兄弟の軋轢が生まれました(笑)。そしてほったらかしてあるこち亀を見つけると、母親がときどき、こっそり捨てちゃうんですよ。
――ああ、それはオタク気質の完璧主義にはキツい。
でしょ(笑)! 僕がまた綺麗に1巻から並べてみると、ところどころなくなっているんです。で、母に聞くと捨てたと言うから、憤りながらまた買い直しました。だからこち亀には、相当お金を注ぎ込んでいると思いますよ(笑)。『Kamedas』とか『下町奮戦記』とか、派生本も全部買ってますし。
――長い歴史を持つこち亀ですが、MBさんはどのあたりの頃のものが好きですか?
時代ごとにそれぞれ良さがあると思いますが、個人的には、実験的要素も強かった初期の頃が特に好きです。星逃田(ほしとおでん)が出てきてページをめちゃくちゃにする回とか、コマの上下でそれぞれ別の話が進む回。読者の視点を固定することで、定点カメラで舞台のように漫画が進行する回もありましたよね。
――紙の本で既刊の全巻を持っていたのに、電子版でも揃えられたとか。それはどうしてですか?
僕は新潟の故郷から東京に出てくるのが遅く、30歳になってからでした。そのとき、さすがにこち亀全巻を持ってこようという発想がなくて(笑)。
――わかります、わかります(笑)。100巻を超えたマンガの存在感は尋常じゃないですから、一人暮らしの部屋には厳しいですよね。
そうなんですよ。でもやっぱり、ときどき昔の回をふと読み返したくなるんです。それで、電子版を一括で大人買いしました(笑)。ちょっとお行儀の悪い癖なんですけど、食事をしながらこち亀を読むというのが昔から習慣になっていて、今も電子版を読みながらラーメン食べたりしています(笑)。