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MBの“こち亀”愛。 「カルチェもアルマーニも、こち亀で学んだ」

集英社オンライン / 2022年5月29日 10時1分

日本を代表するメンズファッションブロガー/バイヤー/YouTuberとして活躍し、多くのフォロワーを持つMBさん。実は子どもの頃からこち亀の大ファンだったという噂を聞きつけ、話を伺うと、出てきたのは溢れるほどのこち亀愛だった…

紙の本で全巻揃えたのに、電子版まで大人買いしてしまった理由

――MBさんがこち亀(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。以降、こち亀)を知ったきっかけは、お母様が単行本を持っていたからなのだそうですね。

そうなんです。小学生時代、母が何冊か持っていたことから興味を持ち、僕と兄で継ぎ足して揃えていきました。確か高校生の頃には最新刊に追いつきましたが、まだそのときは100巻までいってなかったんじゃないかな。



――その後も買い続けて、全巻制覇したとか。

もう大好きで大好きで、どんなことがあっても買い続けようと誓っていましたからね。しかも、同じ巻を何度も買っていたりするんですよ。

――と言うと?

僕はオタク気質なので、1巻から順にすべて並べた背表紙を見て、装飾的に『いいなあ』と満足したりするんですが、兄は実(じつ)を取る人間だったので、すぐグチャグチャにしちゃうんです。読みにくいからとカバーを外して、その辺に置いておいたりする。思えば、あのときに兄弟の軋轢が生まれました(笑)。そしてほったらかしてあるこち亀を見つけると、母親がときどき、こっそり捨てちゃうんですよ。

――ああ、それはオタク気質の完璧主義にはキツい。

でしょ(笑)! 僕がまた綺麗に1巻から並べてみると、ところどころなくなっているんです。で、母に聞くと捨てたと言うから、憤りながらまた買い直しました。だからこち亀には、相当お金を注ぎ込んでいると思いますよ(笑)。『Kamedas』とか『下町奮戦記』とか、派生本も全部買ってますし。

――長い歴史を持つこち亀ですが、MBさんはどのあたりの頃のものが好きですか?

時代ごとにそれぞれ良さがあると思いますが、個人的には、実験的要素も強かった初期の頃が特に好きです。星逃田(ほしとおでん)が出てきてページをめちゃくちゃにする回とか、コマの上下でそれぞれ別の話が進む回。読者の視点を固定することで、定点カメラで舞台のように漫画が進行する回もありましたよね。

――紙の本で既刊の全巻を持っていたのに、電子版でも揃えられたとか。それはどうしてですか?

僕は新潟の故郷から東京に出てくるのが遅く、30歳になってからでした。そのとき、さすがにこち亀全巻を持ってこようという発想がなくて(笑)。

――わかります、わかります(笑)。100巻を超えたマンガの存在感は尋常じゃないですから、一人暮らしの部屋には厳しいですよね。

そうなんですよ。でもやっぱり、ときどき昔の回をふと読み返したくなるんです。それで、電子版を一括で大人買いしました(笑)。ちょっとお行儀の悪い癖なんですけど、食事をしながらこち亀を読むというのが昔から習慣になっていて、今も電子版を読みながらラーメン食べたりしています(笑)。

MBはなぜ、そこまでこち亀を愛するのか

――MBさんがそこまでこち亀を愛する理由は何ですか?

ストーリーがいい意味である程度パターン化されているので、読むだけで心が安定するんです。両さんが悪いことをしてどんどんエスカレートしていき、最後にはごまかしが効かなくなって部長を怒らせ、『両津はどこだ!?』となる、あの感じ(笑)

――お約束のコントのようですよね。

他にもいくつかのパターンがありますが、いずれにしても偉大なるマンネリですよね。その反復の中で毎回新しい要素が加わりつつ、一定水準以上の面白さを保つ。感情が大きく揺さぶられることなく、サプリのように安定感を持ってずっと楽しめるこち亀は、秋本先生が生み出した究極のエンタメだと思います。


――僕も小学生の頃からのこち亀ファンですが、子どもが読んでも分からないことを、秋本先生はときどきぶっ込んできますよね(笑)。

そこがまた、こち亀の好きなところでした。大人の世界が垣間見えるんですよね。ポルシェやカウンタックなど車の話とか、カメラはライカがいいとか、リアルタイムで読んだ子どもの頃は、何のことやらさっぱり分かりませんでした。当時はネットもなかったから、すぐに調べられないし。

――カルチェのライターとか(笑)。

星逃田(ほしとおでん)がなくしたカルチェのライター(笑)! あの回は最高です。星が『カルチェのライターを見つけたやつは連絡をくれ』と読者に呼びかけるんですよね。思えば、僕がカルチェというブランドを初めて認識したのは、あのときでした(笑)。

――今ではファッションに精通するMBさんが、こち亀でカルチェを知ったとは(笑)。

そうそう(笑)。アルマーニもそうです。白鳥麗次がよく口にするブランドでしたから(笑)。改めて考えてみると、僕の文化的インストールは、本当にこち亀からが多いですね。大人がかっこいいと思い、興味を持っているものをいろいろ学ばせてもらいました。大人の世界を覗き見する道具という役割もあったんですよね。

――今回、MBさんには特に好きな回を5本選んでもらいましたが、そのラインナップを見ると、ギャグ全開の笑える回が多いですよね。こち亀ファンには、泣ける話をあげる人も多いのですが。

確かにそうですね。もちろん浅草物語や勝鬨橋の話など、泣ける話も好きなんですけど、5本だけと言われれば、僕は大笑いできる回を選びます。でも、このリクエストは難しかったですよ。あとから考えて、『しまった、あれも入れれば良かった』って、絶対思いますから。

――こち亀愛深きゆえの悩みですね(笑)。そういう葛藤も踏まえ、選んだ5本についてコメントをお願いいたします。

MBセレクト、こち亀オールタイムBEST五話

1.「ニセ車販売店を探せ!の巻」(ジャンプ・コミックス56巻収録)
今の僕は車好きで、結構詳しいのですが、やはりきっかけはこち亀だったのかもしれません。これは伝説の、“フュラーリテスタオッサンドナイシテマンネン”の回です(笑)。マークⅡに見える車は“マークⅡ(ソーズ)”。子どもの頃はまったく理解できませんでしたけど(笑)。大学に入って麻雀を始めた頃、「マークソーズってこれか!」とやっと腑に落ちました。子どもの頃に読んで謎だったこち亀ネタは、人生の節々でじわじわと解答をもらいました。その“謎解き感”も、こち亀の楽しみ方のひとつです。そういえば、今でも街でポルシェを見かけると麗子を思い出しますし、旧車のスバル360を見かけると「あ、あれだ! 両さんが本多と一緒に部長の家に行って、ボロボロになった車だ」と思います(笑)。

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2. 「質素大好き!?の巻」(ジャンプ・コミックス48巻収録)
人気のある話だと思いますが、両さんが靴を食べる回です。最後は意外なハッピーエンドで、ちょっと珍しいんですよね。靴って茹でると本当にステーキになるの?って、子ども心に興味をそそられました。公園の草って……、これ以上言うとネタバレになっちゃいますね(笑)。ありそうに思えて、実はありえないというギリギリをつく面白さが詰まった回です。お笑いのコントでもそうですが、絶対にありえないようなぶっ飛んだ世界観は笑えないけど、ギリギリありそうでありえないのはすごく面白く感じます。そうしたお笑いの美学のようなものを感じる回ですね。

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3. 「ゴキブリ大行進!の巻」(ジャンプ・コミックス76巻収録)
ゴキブリを研究所に売ることができるということを知ってしまった両さんが、寮の一室でゴキブリ養殖を始める話です。この時点ですでにオチは読めますが(笑)、本当に大変なことになります。この回は確か、中学生の頃に読みました。でも僕が当時住んでいた新潟って、寒い気候なのであまりゴキブリが出ないんです。たまに出ても動きが遅くてすぐに捕まえられます。だからゴキブリに対してあまり恐怖や抵抗感はなく、この回を読んでいろいろ驚きました。その後、東京に出てきて答え合わせができました(笑)。「わ! ゴキブリ早い! 飛ぶじゃん! こち亀で見た通りだ!!」って(笑)。

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4. 「アメリカよいとこ!?の巻」(ジャンプ・コミックス27巻収録)
アメリカに研修旅行へ来た両さんの話。この話を読んだ何年か後、僕はアメリカのサンフランシスコに短期留学しました。そこで “ピアーサーティーンナイン”とか“フィッシャーマンズワーフ”といった店を見て、「こち亀の舞台だ! 両さんがカニをめちゃくちゃ食ってた店だ!」と感動しました。留学先でたまたま子どもの頃に読んだ場所に遭遇して驚いたという、非常に個人的な体験と思い出によって選んだ回です(笑)。両さんのアメリカ訪問は、この後四話にわたって続きますが、偉大なマンネリのこち亀の中で、ときどきこうしたスペシャルな回があるのもまた刺激的でいいんですよね。そうそう、56巻の「ローザンヌの休日の巻(前・後編)」などもそうですが、海外だろうと腕まくりした制服にサンダル履きで行っちゃう両さんがやはり最高です(笑)。

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5. 「両さんメモリアル 新たなる旅立ちの巻」(ジャンプ・コミックス69巻収録)
こち亀古参ファンの間で語り草になっている回(笑)。リアルタイムの『週刊少年ジャンプ』で読んだ記憶があります。ネタバレになるのでこれ以上は語りませんが、ありえないと思いましたよ(笑)。聞くところによると、この回が掲載された後、編集部はクレームの嵐だったらしいのですが(笑)、そんなことをやっちゃうのもまた、こち亀の面白さですよね。この回の前半で、両さんが警察官になった経緯が語られますが、全巻読んでみてわかるのは、これもコロコロ変わっていることです。部長の誕生日が、“都合により”コロコロ変わるのは確信犯だし、葛飾署の署長の名前も適当に変わっている。秋本先生が「まあ、マンガですから」って言っているようで、こんな力の抜け方もこち亀の魅力なのではないかと思います。

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取材・文/佐藤誠二郎

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