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「K-POPでは普通にできることが、日本ではできない」若い才能が次々と韓国に流出するなか、国内レーベルを立ち上げたSKY-HIの覚悟

集英社オンライン / 2023年9月28日 12時1分

2020年にマネジメント/レーベル「BMSG」を立ち上げ、BE :FIRSTをプロデュースするなど、そのビジネス手腕が注目を集めているSKY-HI氏。アーティストでありながら起業するに至った理由とは。著書『マネジメントのはなし。』(日経BP)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

#1

起業精神は高校時代からありました

オーディション番組「THE FIRST」を開催し、そこから誕生したボーイズグループ「BE:FIRST」を瞬く間に日本のトップグループへと押し上げたSKY-HI。その手腕は、ビジネス的な視点からも注目を集め、経済誌のインタビューや講演などに登場する機会も多い。

ここでは、2022年7月21日に登壇した「日経クロストレンド FORUM 2022」での講演を再録。SKY-HIはなぜBMSGを立ち上げ、THE FIRSTを開催したのか。また、今の時代のヒットに必要不可欠だと考えるものは何か。その思いを語った。(聞き手は吾妻拓 日経クロストレンド編集委員)。



──ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど幅広く活躍されているSKY-HIさんですが、今回は、20年に設立したマネジメント/レーベルBMSGの経営者として登壇してもらいました。まずは、なぜ20年にBMSGを立ち上げたのですか?

起業精神は高校時代からありました。自分の好きな音楽が明確にあり、好きな音楽を好きなように突き詰めて、それをその時代に一番適した形で大きくしていくのはかっこいいなあと思っていたんです。

アメリカのアーティストで言えばJAY-Z(ロッカフェラー・レコードの創業者、Def Jam Recordingsの元CEO[最高経営責任者]などビジネスでも成功を収める)や、Def Jam Recordingsを立ち上げたラッセル・シモンズの本を読んだりして、起業に対する憧れもありました。

そもそも僕が10代で「AAA(トリプルエー)」というグループでデビューした背景もそこにあり、当時、貸しレコード店の店長から好きな音楽を極め続けてエイベックスを作った松浦さん(松浦勝人氏/現同社会長)が日本で1番JAY-Z的な成功を収めた人だったので生で見てみたい気持ちが強かったんです。ずっと会社を立ち上げることは自分のビジョンにありましたが、今のような形とタイミングに決めたのは19年くらいだったと思います。

世界にインディペンデントレーベルは無数にありますし、音楽業界に限らず、近年では芸能人の独立も多いし、所属するのが自分だけ、もしくは5人程度という形も多いと思います。最初に思い浮かべていたのはそんな形でした。

K-POPでは普通にできることが、日本ではできない

サブスクリプション興隆時代の今、特にヒップホップのアーティストでいえば、個人で楽曲を作ってTuneCore(デジタル音楽配信の委託を行うサービス)などを通してストリーミング視聴に提供することで、普通に食べていけるし、むしろライブをするにしても中間マージンが不要なぶん、ある程度の多い売り上げが得られる。インターネットやSNS、ストリーミングサービスなどの発達によって、シンプルなシステムで活動しやすい環境になっていました。

ただ、19年頃、自分自身がある程度のキャリアを積んできたときに、自分のもとに多くの相談が寄せられるようになり、その相談内容が、自分が10代や20代前半の頃に抱えていた悩みとさほど変わらなかったんです。やりたいことがあるけれども、例えば世界、特にK-POPでは普通にできることなのに、その土壌が日本にない。種はあるけれども、その種をまく畑がない、どこに植えていいか分からないわけです。

自分の見た例で言うと、例えばラップで活動するにあたりアンダーグラウンドのヒップホップとの接点が増えるのは必然ですが、そういったアンダーグラウンドたたき上げの出身でありながら、もっと広い意味での音楽シーンや、時に芸能にもコミットしていきたい、と今までとは違う一歩を踏み出したときに、ただそれだけで手ひどくいじめられる人もいます。

それはごく一部の人がすることだから気にするな、と言う人もいるかもしれませんが、まだ若く、活動を始めたばかりの本人からしたら、それまで応援してくれた人からの手のひら返しはやっぱりすごく怖く感じると思います。

また、ダンス&ボーカルを志向している人にとっては、その出口は日本の芸能事務所に多くありません。もちろん素敵なダンス&ボーカルは大手芸能事務所から世に出ていますが、スタイルとかカラーも固まったものが多いと感じます。歌ったり踊ったりという活動を通して自分のアーティスト性を突き詰めたり、もしくはラップをしながら、自分がやりたいことを自分のままで活動できる土壌がないという方が非常に多いわけです。

それがすごく孤独感や閉塞感として高まることは自分も身を持って知っていたので「俺がやらなくちゃいけないやつだ」と。もともと持っていた起業精神とそれが点と点でつながったというか。やりたいことやるべきことがつながったのが19年頃でした。

日本にはものすごい数の才能が発掘されないまま眠っている

──社名を「BMSG」にしたのは?

Be My Self Groupの略です。Be Myself=「自分のままにあれ」。あと、Brave(勇敢な)、Massive(大規模な、超すごい)、Survive(生き残る、生き抜く)、Groove(大いに楽しませる)の4つの頭文字でもあり、もともと25歳の頃にBULL MOOSE(ブルムース)というインディーズレーベルをやっていたことがあり、その遺伝子を引き継いでいる。その3つの意味があります。

──Be Myselfな環境をつくることが、新しい音楽ビジネスにつながっていくと。

ただ、ビジネス面での成功が目的になる組織はうまくいかないとは思います。BMSG自体も、もちろん目標の1つに組織としての成長は当然ありますが、まず前提としてはBe Myselfです。普通のことに聞こえるかもしれませんが、それがカウンターになってしまう今のその状況は、絶望的な気もします。

──Be Myselfな環境をつくる過程の1つのステップが私財を投じたオーディション「THE FIRST」だったと思いますが、始めた理由は?

BMSGの第1弾アーティストはラッパーのNovel Coreですし、自分の経験や知見が誰かの才能の役に立てると思ったのは、ダンス&ボーカルに限ったことではないのですが、特にダンス&ボーカルを志す方の中に肩身の狭さややるせなさ、行き場のない憤りや絶望を感じている方が非常に多かったんです。自分に寄せられるだけでも「話を聞いてください」「相談したいんです」という声がこれだけあるということは、まだ出会ってない、自分のような思いをしている人が日本にたくさんいるんだろうなと。

日本中にはたくさんのダンススクールがあり、幼少期から習い事として歌ったり踊ったりできる環境にある。それは世界的に見てもまれですし、K-POPのアイドルの数とクオリティーを考えると、日本にはものすごい数の才能が発掘されないまま眠っているぞと。出口がないから誰にも見つかっていないだけで、旗を揚げればたくさん集まってくれるのではないか。そんな確信で立ち上げたのが「THE FIRST」でした。

──「THE FIRST」では、オーディション参加者にSKY-HIさんが丁寧な言葉で何をすべきか伝える姿も印象的でした。

「THE FIRST」という名前の通り、これはBMSGにとっても1歩目でした。自分の考える最高のグループをつくるぞとか、オーディションがはやっているからやってみようなどという浅はかな考えではなく、本当に大切な大切な今後の人生を一緒に歩んでいける仲間探しでもあります。僕自身が「掲げた旗」に集ってくださった方に対しては、本当に感謝してもしきれないんです。

結果として今一緒に仕事をしている方もいれば、トレーニー(練習生)としてレッスンを積み重ねている方もいますし、契約などの形を取らない方など様々ですが、すべての方が掲げた旗のもとに集まってきてくれたことに変わりはないですし、本当に感謝しています。立ち上げのメッセージが届いたこともうれしいですし、最大限リスペクトは尽くしたかったのです。

Huluや『スッキリ』(日テレ系)での放送は5カ月でしたが、オーディション自体は10カ月。そのうち合宿は1カ月でした。正確にはそこから最終審査までに3回ほどの1週間合宿もありましたが、最初の1カ月の合宿は何よりも濃い1カ月で、一生の宝物をいただいていると思います。最高の一歩目でしたね。

#3に続く

『マネジメントのはなし。』(日経BP)

SKY-HI

2023年3月30日

¥1,760

256ページ

ISBN:

978-4-296-20163-1

社長・SKY-HIの挑戦をたどれる"ドキュメンタリー本"。課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊。今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!

オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。

本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。

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