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世界と比べても「ワクチン接種」しまくった日本人…それでも2022年からコロナが急増しているのはなぜなのか

集英社オンライン / 2023年10月5日 17時1分

新型コロナウィルスに対し、厚生労働省は今年度末まで自己負担なしでワクチン接種できる特例接種を続けている。今年の5月に感染症法上の位置づけが5類に変更されたが、コロナの感染予防対策としたワクチン接種は、どのような効果をもたらしていたのか。膨大なデータをもとに見てみよう。『全検証 コロナ政策』 (角川新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。

世界と比べて日本はどれくらいワクチンを接種したのか

まず、日本がどれくらいワクチンを打っているのか、これは他国と比較しないと多いのか少ないのかわかりませんので、世界における日本の位置づけを確認します。2022年末の時点において、ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合を、多い順に並べたグラフを見てみましょう。データのある国は230か国ありますが、そのうち上位49か国を抽出します(図1)。


図1 ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合(上位49か国)。『全検証 コロナ政策』より

日本はデータのある230か国中42位の84.35%で、かなり上の方です。なお、最上位の方は100%を超えていますが、これは住民以外の人にもワクチンを打っているためです。

このグラフはイギリスのオックスフォード大学が公表している「Our World in Data」のデータを使ったものですが、首相官邸のサイトを見ると、1回以上接種者の割合は81.0%となっており、数字にズレがあります。ズレの理由は分かりません。

次に、同じく「Our World in Data」から、「people_fully_vaccinated_per_hundred」のデータを確認します。この数字は、2回接種を完了した人の割合を指すものと思われます(図2)。

83.22%と、少しだけ数字が下がりましたが、順位は上がり、データのある230か国中30位です。首相官邸のサイトでは80.1%となっています。

図2 ワクチンの2回接種を完了した人の割合(上位49か国)。『全検証 コロナ政策』より

高齢者の方ほど積極的にワクチンを打っている

「ブースター接種」と呼ばれている3回目接種以降の接種者割合については、「Our World in Data」にありません。

首相官邸のサイトを見ると、日本の3回接種完了者の割合は68.7%となっています。4回接種以降の完了者の割合は首相官邸のサイトにも掲載されていません。なお、オミクロン株対応ワクチンの接種率は掲載されていて、45.0%となっており、回を重ねるに連れて接種率が落ちていることが分かります。

首相官邸のサイトにおいて、65歳以上の高齢者に絞ると、1回以上接種者92.7%、2回接種完了者92.5%、3回接種完了者91.3%、オミクロン株対応ワクチン74.5%となっています。高齢者の方ほど積極的にワクチンを打っていることが分かります。

先述のとおり、「Our World in Data」には、3回目以降の接種者割合は無いのですが、「100人あたりの追加接種回数」のデータはあります。このデータは、3回目以降のワクチン接種回数を総人口で割り、100を乗じた数字です。例えば、国民全員に3回目及び4回目の追加接種をした場合、200となります。

それでは2022年末の時点の100人あたり追加接種回数のデータを見てみましょう。トップ50を抽出します(図3)。

図3 100人あたりの追加接種の回数(上位50か国)。『全検証 コロナ政策』より

日本は「ブースター接種先進国」

こちらについてデータがあるのは210か国なのですが、日本は133.36で世界3位です。ただ、1位のジブラルタルはイギリスの海外領土であり、人口も3万数千人しかいないので、比較対象としてあまり適切ではありません。

イギリスはその他にイングランドが112.6、イギリス王室属領であるガーンジーが109.49ですが、「United Kingdom」で見ると59.81 です。

OECD加盟国で100を超えているのは、日本とチリのみであり、かつ、他の加盟国を大きく引き離しています。極めてたくさん追加接種を行っていることが分かります。

日本は「ブースター接種先進国」と呼んでもよいでしょう。1回接種・2回接種の接種者割合も上位に位置する上、このように100人あたり追加接種回数が世界トップクラスですから、日本は世界的に見ても極めてワクチン接種に積極的な国と言えます。

なお、2022年11月7日付財務省の資料「社会保障」によると、令和2(2020)年度〜4(2022)年度にワクチンの確保に2.4兆円、ワクチンの接種に2.3兆円、合計4.7兆円が投入されたようです。これはこの資料が作成されるまでに発生した費用ですから、今はもっと増えて5兆円は超えているでしょう。

ではその効果についてはどうでしょうか。感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果、後遺症予防効果に分けて見ていきましょう。

感染予防効果

ワクチン接種率と感染者の推移を見ることで感染予防効果の有無を確認していきたいと思いますが、そもそも「感染」とは何でしょう。厚生労働省のウェブサイトを見ても肝心の感染の定義が載っていないのですが、世界大百科事典第2版はこう解説しています(太字は引用者)。

病原微生物がヒト、動物、植物の組織や体液に侵入し、あるいは表面に定着して増殖する状態になるのを感染という。微生物が体内に入っても、すぐに死滅してしまったり、素通りしてしまう場合は感染とはいわない。

このように、「増殖する状態になる」ことが必要です。体に侵入してきたコロナを免疫で「瞬殺」できれば、PCR検査にも引っかからないでしょうから、感染はしていないことになります。

デジタル庁のサイトを見ると、1〜3回目のワクチン接種率の推移を確認できます(図4)。

図4 新型コロナのワクチン接種率の日次推移。『全検証 コロナ政策』より

なお、1回目と2回目接種については、一般接種のみを対象としているので、首相官邸が公表している接種率よりやや数字が落ちます。

これを見ると、2021年4月からワクチン接種が開始され、同年11月には2回目接種が70%を超えていますので、一通り接種したことになります。3回目接種については、同年12月から始まり、翌年の6月には60%を超えましたが、70%に届かないあたりで止まっています。

感染の推移はどうなっているのか

では、感染の推移はどうなっているのでしょうか。2020年と21年の感染者数の推移を縦に並べたグラフで確認してみます(図5)。これはワクチンの無かった20 年と比較するためです。

これをみると、21年の感染者数は、10月頃までは常に前年同日の感染者数を大きく上回っていましたが、ワクチン2回目接種率が70 %を超えた11月あたりになると極端に減少し、20年の数字を下回っています。この点について、「感染の波が収束したタイミングと一致しただけだろう」という見方もあるでしょう。たしかにそれもあります。しかし、「底」が非常に低い点が重要です。

第3波ピーク(21年1月8日)と第4波ピーク(同年5月8日)の間で最も感染者数が少なかったのは、3月8日の599人。

そして第4波ピークと第5波ピーク(同年8月20日)の間で最も感染者数が少なかったのは、6月21日の864人です。

図5 新型コロナの感染者数の推移、2020年と21年比較。『全検証 コロナ政策』より

ワクチンの予防効果はあったのか

つまり、波の間の「底」ですら、数が増大していたのですが、第5波ピーク以降で最も感染者数が少なかったのは、11月22日の22人であり、圧倒的に少なくなりました。11〜12月にかけて、感染者数が100を切った日は、合計で11日もあります。なお、21年の感染者数が100を切ったのは、11月よりも前の月では1日もありません。

このように、「底」の数字が極端に減ったのは、単に「5波の収束のタイミングと一致して減っただけ」とは言えないでしょう。4波と5波の「底」は864人もいたのに、5波と6波の間の「底」は22人、約40分の1にまで減少したのですから。これをワクチンによる感染予防効果と言われれば、納得する人の方が多数派ではないかと思います。

では、22年についてはどうなのか。これは3年間の感染者数を横に並べた方が分かりやすいので、そのグラフを見てみましょう(図6)。

図6 新型コロナの感染者数の推移(2020〜22年)。『全検証 コロナ政策』より

ほとんど制圧したといえるぐらい感染者数が少なくなっていたのに…

このように、21年11〜12月頃は、ほとんど制圧したといえるぐらい感染者数が少なくなっていたのに、22年になると、まるで崖が生えてきたかのように感染者が急増しました。これはオミクロン株が出現したからです。

この株が最初に国内で発見されたのは、21年11月30日でしたが、そこから徐々に広がり、年が明けて大爆発しました。あまりにも凄すぎるので、この株の登場以前の感染状況を見ると、まったく大したものではないように見えてしまいます。

さきほど確認した3回目接種の接種率は、22年6月には60%を超えましたが、その後現在までで最大の波となる第7波(ピークは22年8月19日の26万1004人)が来ていますので、太刀打ちできていません。むしろ増えています。

こうやって見てみますと、21年のデルタ株まではワクチンの感染予防効果が発揮できていたと言われても納得ができますが、オミクロン株については無理でしょう。感染者数がそれまでとは比較にならないくらい爆発してしまったのですから、感染予防効果は期待できません。

ワクチンを打っても感染してしまうのであれば、ワクチンを打つ人は減るでしょう。現に減っています。これは感染が大爆発している現実を見て、「打っても意味が無いのでは」と思った人が増えたのが一因ではないかと思います。

発症予防効果

発症予防効果についてはどうでしょうか。前述のとおり、デルタ株までは感染予防効果が発揮されていたと言ってよいかと思いますので、発症予防効果もあったと言ってよいでしょう。

ではオミクロン株以降についてはどうでしょうか。感染者数が急増しましたが、これは、発症した人がPCR検査を受けて感染が確認された、というケースが大半を占めるでしょう。要するに発症者が大量発生したということですから、発症予防効果もあまり期待できないのではないかと思います。

本当はもっと感染者がいて、ワクチンのおかげで発症が抑えられていた可能性もあるかもしれませんが、それを確認できるデータがありません。

(抜粋はここまでです。書籍では重症化予防効果と後遺症予防効果についても分析しています)

文/明石順平 図版作成/小林美和子 写真/shutterstock

『全検証 コロナ政策』 (角川新書)

明石 順平 (著)

2023/8/10

¥1,210

344ページ

ISBN:

978-4040824574

緊急事態宣言、ワクチン、給付金…その政策、効果はあったの、なかったの?

(目次)
はしがき

第一章 コロナの現実
1 はじめに
2 感染者数
3 死者数
4 重症者数
5 入院治療等を要する者等推移
6 集団感染等発生状況
7 コロナ後遺症
8 スペイン風邪との比較

第二章 海外との比較
1 世界との比較
2 各地域との比較

第三章 コロナ対策
1 ワクチン
(1)ワクチン接種国際比較
(2)感染予防効果
(3)発症予防効果
(4)重症化予防効果
(5)後遺症予防効果
(6)ワクチン副反応
2 マスク
3 行動制限
4 PCR検査

第四章 医療崩壊
1 救急搬送困難事案
2 病床多くして医師少なし
3 民間病院が約8割
4 他の国ではどうか
5 5類変更で何が変わるか

第五章 コロナ予算
1 2020年度決算の規模と上昇率は1950年度以降で最大
2 何に使われたのか
(1)執行率を算定できたのは8割、その中で使われたのは8割
(2)地方にばらまかれたお金
(3)コロナ防止策に使われたお金
(4)経済・雇用対策
(5)予備費の行方
(6)効果は?

第六章 経済へのコロナ後遺症
1 日本の資金繰り
2 アベノミクスとは
3 失敗を統計操作でごまかす
4 アベノミクスの真の狙い

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