1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「コロナワクチン副反応疑い報告」における死亡確率は飛行機事故に遭遇する確率以下…各国において接種による有益性はリスクを上回るとしているが…

集英社オンライン / 2023年10月7日 10時1分

感染者がまたもや徐々に増えている新型コロナウィルス。冬を前に感染拡大が懸念される中、9月20日から全国で新型コロナワクチンの「秋接種」が開始された。多い人では7回目のワクチン接種となるのだが、ワクチンで気になるのがやはり副反応だ。今回はそんなワクチンの副反応について、膨大なデータから読み取れた事実をお伝えする。『全検証 コロナ政策』 (角川新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。

ワクチン副反応疑いはあくまでも疑い

ワクチン副反応については、それが発生したことを知るルートが次の2つあります。

①医師・医療機関の開設者からの報告
②ワクチンによる健康被害を受けた人又はその遺族からの予防接種法に基づく救済給付の申請



まず前者から見ていきましょう。ワクチン副反応が疑われる事例を知った医師.医療機関の開設者には、報告義務が課されています。報告と評価の流れは次のとおりです。調査の中心となるPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)作成の図を引用します(図14)。

図14 ワクチン副反応が疑われるときの報告と評価の流れ(PMDA作成)。『全検証 コロナ政策』より

このように、医療機関は、PMDAにまず報告し、PMDAは製造販売業者にも情報を提供します。この図を見ると、製造販売業者の方でも独自調査をしてPMDAにその結果を報告するようです。そして、PMDAが情報を整理・調査し、厚労省に報告。厚労省では審議会で評価を行い、必要な措置を取る、という流れです。

医療機関はどのような場合にワクチンの副反応が疑われるとして報告しなければならないか、基準は次のとおりです(図15)。

図15 新型コロナに罹る副反応疑い報告基準。『全検証 コロナ政策』より

この報告基準に沿って、報告されたものが副反応「疑い」報告です。あくまで「疑い」なので、ワクチン接種との因果関係が肯定されるわけではありません。

この報告がどれくらいされているのかを見る前に、そもそもワクチンがどれだけ接種されているのかを確認しましょう。メーカーごとに分けて見てみます(図16)。期間は2021年2月17日〜23年1月22日の約2年間です。

図16 メーカーごとの総接種回数。『全検証 コロナ政策』より

ファイザーでも100万人摂取して死んだのは6.1人

ファイザーが約2.9億回、モデルナが約0.8億回、武田はそれに比べると非常に少なく約29万回しかありません。なお、ファイザーとモデルナはmRNAワクチンですが、武田は不活化ワクチンであり、ワクチンの種類が異なります。3つを合わせると約3.7億回接種されていますが、これがどれほど多いのか、インフルエンザワクチンの接種回数と比べてみましょう。

インフルエンザワクチン接種回数は2020年度の分までが公表されています。それを見てみると、一番多いのが20年度の2367万7920回で、その次が19年度の1812万2888回、この2年間を合計すると4180万808回です。これと比べると、コロナワクチンの接種回数は、約9倍あります。まったく規模が違うことがよく分かります。

では、副反応疑い報告のうちの死亡例をメーカーごとに分けて確認します(図17)。

図17 メーカーごとの死者数。『全検証 コロナ政策』より

ファイザー1782人、モデルナ215人、武田1人。ただ、接種回数が全然違うので、絶対数を比較してもあまり意味がありません。そこで、100万回あたり死者数で見てみましょう(図18)。

ファイザー6.1人、モデルナ2.6人、武田3.5人。ファイザーがモデルナの倍以上となっています。武田は母数が全然異なるのであまり参考にならないと言ってよいかもしれません。これを多いとみるのか少ないとみるのかは、人によって異なるでしょう。なお、パーセンテージで表記すると、それぞれ0.00061%、0.00026%、0.00035%です。

図18 メーカーごとの100万回あたりの死者数。『全検証 コロナ政策』より

心筋炎・心膜炎だとどうなのか

これがどれだけ低いのか、飛行機事故に遭う確率と比較してみましょう。米国国家運輸安全委員会(NTSB)の調査によると、米国内で航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%です 。

したがって、副反応による死亡疑いで報告される確率は、最も数字の高いファイザーであっても、米国で飛行機事故に遭遇する確率より低いということです。

次に、心筋炎.心膜炎の発症者の絶対数を見てみましょう(図19)。

図19 メーカーごとの心筋炎・心膜炎の発症者数。『全検証 コロナ政策』より

さらに、こちらも先ほどと同じように、100万回あたりの発症者数で見てみましょう(図20)。

心筋炎の方について、武田が1位となってしまいますが、母数が全く異なる上に絶対数はたったの1ですからあまり参考にならないでしょう。モデルナについて、心筋炎の発症者数はファイザーの倍以上という結果になりました。しかし、ファイザー・モデルナ共に、死亡例よりも心筋炎・心膜炎の報告が少なくなっています。

図20 メーカーごとの100万回あたりの心筋炎・心膜炎の発症者数。『全検証 コロナ政策』より

ただ、これらはあくまで「疑い」報告です。このうち、ワクチン接種との因果関係が肯定されたものはどれくらいあるのでしょうか。

因果関係の評価で中心となるのは、PMDAによるα・β・γ評価です。各評価の意味は次のとおりです。

. α=ワクチンと症状名との因果関係が否定できないもの
. β=ワクチンと症状名との因果関係が認められないもの
. γ=情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの

そして、評価は次のとおりでした(図21)。

図21 メーカーごとのα、β、γの件数。『全検証 コロナ政策』より

要するに、因果関係が否定できない、というα評価となったのは、現時点でたった1件だけです。それ以外は、ほぼ全部「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」γ評価とされました。はっきりと「因果関係が認められない」β評価となったのも合計で11件しかありません。

唯一のα評価となった事例は、40代の女性がワクチン接種後わずか24分後に心肺停止に至ったという極端なものです。厚労省の審議会の資料には下記の記載があります。

・死亡診断書の病名として、急性左心不全、致死的不整脈とされており、死亡後のAi(死亡時画像診断)からは高度な肺うっ血の所見が認められた。初診時に皮膚症状、消化器症状なく一般的なアナフィラキシーで認められる所見がなかったこと、及び泡沫(ほうまつ)状の血痰を多量に排出したことなど急性肺はい水腫(すいしゅ)を想定する症状であった。観察室に移動するときに、接種前から実は具合が悪かったという事を訴えられており、ACS(急性冠症候群)やARDS(急性呼吸促迫症候群)をきたしうる病態も鑑別として考えられる。ワクチン接種後であったことからアナフィラキシーの存在は強く疑われた。
・アナフィラキシーショックであった場合には、最重症型であったと考えられる。最重症型のアナフィラキシーは、非常に稀まれな病態であり、致命率も高い病態である。残念ながら病理解剖がされていないこともあり、最終的な病態の解明には至らなかった。

副反応疑い事例全てについて病理解剖するのは遺族感情等も考慮すると不可能ではないか

おそらくアナフィラキシーショックだったのだと思いますが、「残念ながら病理解剖がされていないこともあり、最終的な病態の解明には至らなかった」とされている点に注目です。

この極端な事例ですら、解剖していないので病態の解明に至らなかったというのです。しかし、接種後わずか24分で心肺停止ですから、さすがにこれは因果関係を否定できないという結論にせざるを得なかったのでしょう。

副反応疑い事例全てについて病理解剖するのは遺族感情等も考慮すると不可能ではないかと思います。現にされていません。したがって、ほぼ全部「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」γ評価にせざるを得ないでしょう。この傾向は今後も変わらないと思います。

では、ワクチン副反応を知るもう一つのルート「②ワクチンによる健康被害を受けた人又はその遺族からの予防接種法に基づく救済給付の申請」についてはどうでしょうか。

2023年3月17 日の審議結果を見てみると、累積でこれまでの合計受理件数6719件、認定件数1829件、否認件数219件、保留件数32件となっています。受理件数に対する認定件数の割合を出してみると、約27%です。

なお、この認定件数は死亡事案以外も含めた総件数です。死亡事案だけの件数はこの審議結果には載っていません。NHKの報道によると、同年2月10日時点での認定された死亡件数は30件とのことです。

各国において予防接種による有益性はリスクを上回ると評価されている

①のルートとは全く違う結果ですが、これは、予防接種健康被害救済制度の審査が、個々の事例毎に「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の病状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」との考え方に基づきなされているからです。

また、審査する主体も違います(感染症.予防接種審査分科会新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会及び第二部会が担当)。

救済を優先させ、因果関係の認定を緩めると、このような結果になります。非常にざっくりした計算をすると、総接種回数約3.7億回に対し、認定件数が約2000件ですから、接種回数に対する認定割合は0.00054%です。飛行機事故に遭う確率よりも低いですが、人によってこの数字の捉え方は異なるでしょう。

認定例を見てみると、心筋炎.心膜炎等の心血管系の副反応が多いように見えます。これは、本物のコロナの方でもよく現れる症状です。

「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」には、コロナの合併症として、「急性期の不整脈、急性心障害、ショック、心停止の他、症状回復後の心筋炎などが報告されている。また、COVID–19の発症から1カ月以上経過しても脳血管障害、不整脈、虚血および非虚血性心疾患、心膜炎、心筋炎、心不全などのリスクがあがることが報告されている」との記載があります。

さらに、その記載の下に「参考」として「若年者の男性を中心に、mRNAワクチン接種後にも心筋炎.心膜炎を疑う報告を稀に認める(心筋炎および心膜炎を副反応疑い報告基準に定めた2021年12月6日から2022年11月13日までの国内疑い報告のうち心筋炎または心膜炎と評価された件数は237件)。

長期的な予後は調査中だが、自然感染と比較して、頻度は低く予後も良好であることなどから、各国において予防接種による有益性はリスクを上回ると評価されている」と書かれています。

副反応が怖くてワクチンを避けても、結局感染すれば同じような症状になってしまうのでは

mRNAワクチンは、ウイルスの設計図の一部を体内に注射し、ウイルスの一部を作らせ、それに対する抗体等を作ることで免疫をつける、という仕組みです。

このとき作られるウイルスの一部というのは、コロナウイルスのトゲトゲの部分です。スパイクタンパク質と呼ばれています。ワクチンで生成するのはこのようにウイルスの一部ですが、「本物」の一部ですから、その副反応も、「本物」に感染した際の症状と当然似通ってくるのでしょう。

副反応が怖くてワクチンを避けても、結局感染すれば同じような症状になってしまうのではないか、ということです。そして、特にオミクロン以降、感染力が桁違いになりましたので、感染せずに済ませるのは至難です。

ところで、ワクチン接種した上でコロナに感染した場合の「ハイブリッド免疫」の有効性が指摘されるようになっています。厚生労働省の資料を見ると、海外の論文(NiklasBobrovitzetal.1, Lancet Infect Dis 2023)を引用しつつ、次のようにまとめられています(太字は引用者)。

ハイブリッド免疫(新型コロナウイルス感染及びワクチン接種の両方により得られた免疫)による、1.2回目接種又は最終感染後12か月の入院又は重症化予防効果は97.4%、再感染予防効果は41.8%であった。
ハイブリッド免疫による、3回目接種又は最終感染後6か月の入院又は重症化予防効果は95.3%、再感染予防効果は46.5%であった。

ただ、この研究の対象は「2020年1月1日から2022年6月1日までに発表された文献」であり、アルファ株やデルタ株が流行していた時期が含まれているので、オミクロン株に対する有効性という点では割り引いて考える必要があります。

状況が急激に変化していくため、考えを固定化することが一番危険

いずれにせよ、これが本当であれば、ワクチンを打った上で感染するのが最良の選択ではないかと思ってしまいますが、基礎疾患のある人や高齢者にはリスクが高い手段でしょう。ただ、オミクロン以降の異常な感染力や、感染対策の緩みを考えると、自然と「ワクチンを打った後に感染する」という状況が増えていくのではと思います。

この厚生労働省の資料には、各国のワクチンの長期接種計画について「各国とも公衆衛生当局は未発表又は不確実な点が多いとしている」と書いてあります。

ワクチンについては、「状況に応じて考えを柔軟に変える」という姿勢が必須ではないかと思います。ワクチンによって獲得した免疫力は時間の経過と共にだんだん下がっていきます。

さらに、何度も感染している人がいることからも分かるとおり、感染によって獲得した免疫力もまた時間の経過によって下がっていきます。その上、ウイルスの方もあっという間に変異していきます。オミクロン株の異常な感染力を誰が想像できたでしょうか。

このように、状況が急激に変化していくため、考えを固定化することが一番危険です。従来の考えに固執せず、状況をありのままに見て考えを変えていくことが適切ではないかと思います。

文/明石順平 図版作成/小林美和子 写真/shutterstock

『全検証 コロナ政策』 (角川新書)

明石 順平 (著)

2023/8/10

¥1,210

344ページ

ISBN:

978-4040824574

緊急事態宣言、ワクチン、給付金…その政策、効果はあったの、なかったの?

(目次)
はしがき

第一章 コロナの現実
1 はじめに
2 感染者数
3 死者数
4 重症者数
5 入院治療等を要する者等推移
6 集団感染等発生状況
7 コロナ後遺症
8 スペイン風邪との比較

第二章 海外との比較
1 世界との比較
2 各地域との比較

第三章 コロナ対策
1 ワクチン
(1)ワクチン接種国際比較
(2)感染予防効果
(3)発症予防効果
(4)重症化予防効果
(5)後遺症予防効果
(6)ワクチン副反応
2 マスク
3 行動制限
4 PCR検査

第四章 医療崩壊
1 救急搬送困難事案
2 病床多くして医師少なし
3 民間病院が約8割
4 他の国ではどうか
5 5類変更で何が変わるか

第五章 コロナ予算
1 2020年度決算の規模と上昇率は1950年度以降で最大
2 何に使われたのか
(1)執行率を算定できたのは8割、その中で使われたのは8割
(2)地方にばらまかれたお金
(3)コロナ防止策に使われたお金
(4)経済・雇用対策
(5)予備費の行方
(6)効果は?

第六章 経済へのコロナ後遺症
1 日本の資金繰り
2 アベノミクスとは
3 失敗を統計操作でごまかす
4 アベノミクスの真の狙い

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください