『コカイン・ベア』(2022)Cocaine Bear 上映時間:1時間35分/アメリカ
B級系の悪ノリも、背筋が凍るスプラッタもおまかせ? 「クマ映画」が抜群におもしろいのには理由がある!〜傑作クマ映画5選
集英社オンライン / 2023年9月30日 10時1分
野生のクマが山中に落とされた大量のコカインを摂取。より狂暴になって人間に襲いかかる! ウソのようだけどホントの事件をもとにした、その名もズバリのクマ映画『コカイン・ベア』がついに公開。クマが登場する映画は、かわいい系やお笑い系、恐怖系に癒し系など、実はバラエティに富みまくっている。映画界の人気者であり続ける彼らが大活躍する、クマ映画フリーク必見の傑作5本を紹介する。(トップ画像:『コカイン・ベア』)
怖いのに笑えるまさかの実話!
1985年、その事件は起こった。セスナからジョージア州の森林に落とされたのは大量のコカインが入ったバッグ。だが、落下場所を知る男も一緒に落ちてしまい、コカインの行方を知る者はいなくなった……その森に棲息するクマを除いては!
この設定からして笑えるクマ映画の珍作にして傑作。何が笑えるって登場人物たちの生活感とウィットに富んだ会話の数々。その合間に挿入されるハイになったクマも笑えてしまうものの、襲うときは容赦なく人間を切り裂きスプラッタ状態に。
笑えるのに恐ろしい。なんといってもこのアンビバレントさが本作の魅力だ。さらにこのクマ、キャラとしてもちゃんと立っているのがお見事! 監督は女優でもあるエリザベス・バンクス。センス抜群です。
おっさんテディベアがやりたい放題?
『テッド』(2012)Ted 上映時間:1時間46分/アメリカ
見た目はかわいいテディベアなのに、その内実はおっさん。そんな生きたクマのぬいぐるみ、“テッド”が大活躍するのが本作。
幼いころのプレゼントだったテディベアに魂が吹き込まれたことで、人生を共に歩む相棒になってしまったのは、今や中年のダメ男。マーク・ウォールバーグ演じる“元少年”は、中身もルックスもオヤジになったが、テッドはかわいいぬいぐるみのまま。でも、やることは家に娼婦を呼んでの乱痴気騒ぎや、大麻の回し飲みなど……。
このギャップに笑い、大人になりきれないダメおっさんっぷりにまた笑う。かわいいはずのテディベアを意外すぎる設定でキャスティングしたことが、なによりのポイント。テッドの声は監督のセス・マクファーレンが担当し、世界中で大ヒットを記録。2015年には続編も作られた。
“クマ映画”というジャンルを生んだ1本
『グリズリー』(1976)Grizzly 上映時間:1時間32分/アメリカ
カナダの国立公園でキャンパーが殺された。動物行動学者や自然保護官は、犯人がどう猛さで知られる巨大灰色グマこと“グリズリー”だと断定するが、公園管理者はそれを信じてくれない。
スティーブン・スピルバーグの『ジョーズ』(1975)の大ヒットにあやかり、その翌年、舞台を森林、主人公を巨大クマに換えて登場したアニマル・パニック映画。以来、巨大なクマを“グリズリー”と呼ぶようにもなった。
一応、体長6メートルという設定だが、そこまで大きくないのはご愛敬。ユルい作品とはいえ、“クマ映画”というジャンルが生まれるきっかけにもなったので無視はできない。日本ではその年の洋画興行成績の8位にランクイン。日本人ってやっぱりクマが好き?
英国流の優等生ぶりがたまらない
『パディントン』(2014)Paddington 上映時間:1時間35分/イギリス
アメリカのクマぬいぐるみがテディベアなら、イギリスはパディントン。英国児童文学の人気キャラクターが実写映画化され、これまた続編が作られるほどの大ヒットになった。
かつて世話になった英国人冒険家を探し、生まれ故郷の南米ペルーからイギリスへやってきたクマのパディントンの驚きに満ちた日々を描くファンタジー。何と言ってもそのパディントンがかわいい。
ペルー出身なのにきれいな英語を喋り、マナーも礼儀もちゃんと英国流。この優等生っぷりが楽しいのだ。もちろん、パディントンベアの再現度もパーフェクト。ちなみに、さらに面白いのは続編の『パディントン2』のほう。英国らしい皮肉な笑いとポップでカラフルな世界観がツボ!
リアルなクマを6年かけて演出したフランス映画
『子熊物語』(1988)L'ours 上映時間:1時間36分/フランス
美しく壮大なカナディアンロッキーを背景に、母親熊を亡くした子熊の成長を描く異色の動物映画。ドキュメンタリーではなく、着ぐるみでもない、演技の出来るホンモノのタレントクマを使い、6年をかけて撮影した労作。はちみつやミルクに夢中になり、何かあるとすぐに両脚立ちする子熊の演技(?)がとってもキュートで、まるでリアルなプーさんのよう。
演出しすぎな部分もあるが、かわいいので許しちゃいましょう! 熊を狙う猟師たちとの関係性に本作製作の意図が込められているのは、さすが『薔薇の名前』(1986)などを見事に映画化してきたジャン=ジャック・アノー監督。雄熊を演じたタレントクマの“バート・ザ・ベア”は、『ザ・ワイルド』(1997)でアンソニー・ホプキンスとも共演している演技派だ。
文/渡辺麻紀
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