1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「ブルーベリーは目にいい」は戦時中に作戦としてバラまかれたエセ情報…眼科医が警告「目にいいといわれるサプリを飲んでも視力は回復しない」

集英社オンライン / 2023年10月23日 11時1分

視力改善のために、毎日ブルーベリーのサプリを飲んでいる、目を揉むと目の疲れが吹きとぶ感じがして気持ちがいい…これらの習慣、実はすべて「間違い」だった…それどころか目の健康を損なう可能性があるというが、いったいなぜか。『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書) より、一部抜粋・再構成してお届けする。

×ブルーベリーは目にいい
〇アントシアニンには目の疲労軽減効果がある

第二次世界大戦時に流された、とある説

「目にいい食べ物」というと、おそらく多くの人が真っ先に思い浮かべるブルーベリーですが、実ははっきりとした科学的根拠はありません。

そもそもなぜ、ブルーベリーが目にいいと言われるようになったかというと、話は第二次世界大戦にまでさかのぼります。



当時のイギリス空軍は世界トップクラスで、特に夜間の空中戦では百戦錬磨の戦績を誇っていました。いったい彼らの強さの秘密はどこにあるのか──そこでイギリス軍部が流布したのが、「わが空軍のパイロットは毎日、アントシアニンという成分が豊富なブルーベリーを食べているから夜目が利く」という説だったとされています。

実際、この説を用いて有効性の根拠としているブルーベリーサプリメントもあるので、耳にしたことのある人もいるかもしれません。

ところが、この「ブルーベリーは目にいい」説は二重の意味で都市伝説でした。

まず、イギリス軍が流した説は、本当は「アントシアニンが豊富なブルーベリー」ではなく「ビタミンAが豊富なニンジン」でした。この説は当時、世界的にも支持されており、各国で「ニンジンを食べよう」キャンペーンが張られていたといいます。

この時点で「ブルーベリーは目にいい」説は覆されてしまうのですが、話はこれで終わりません。さらには「ビタミンAが目にいい」というのも、実はイギリスが当時の敵国・ドイツに対して用いたかく乱作戦だったという説があります。

イギリス空軍が強かったのは、戦闘機に夜間レーダーを搭載していたから。

これが歴史の真実です。強さの秘密は食べ物ではなく最新テクノロジーであり、「◯◯を食べると目がよくなる」という説自体が、戦時中に作戦としてバラまかれたエセ情報だったわけです。

ただし、「ブルーベリーは目にいい」という説に、まったく根拠がないわけでもありません。

「ニンジンは目にいい」も同様です。

ブルーベリーに多く含まれるアントシアニンには疲労軽減効果があるとされていますし、ニンジンに多く含まれるビタミンAが欠乏すると、視力が低下するということも立証されています。

したがって、アントシアニンには目の疲れの軽減、ビタミンAには栄養不足による視力低下の予防の効果が、ある程度期待できます。その意味に限って言えば、「目にいい」と見なしていいでしょう。

「ルテイン」はどうなのか?

近年では「ルテイン」という栄養素も「目にいい」として注目を浴びていますが、やはり視力回復にはつながりません。ルテインに期待できるのは、加齢と共に発症リスクが高くなる「黄斑変性」の予防です。

黄斑は眼球内部の網膜の中心部にあり、そのまた中心(中心窩)には、ものを見るために重要な視細胞が集中しています。この視細胞を構成する栄養素がルテインと「ゼアキサンチン」です。

これらの栄養素が40代を超えて徐々に減少すると、やがて、ものがゆがんで見える、視野の中心が暗くなる、視野が欠ける、視力が著しく低下するなどの症状が出る「黄斑変性」という目の病気になります。

したがって「黄斑変性を予防する」という限定的な意味ならば、ルテインは、ある程度、「目にいい」といえます。ルテインよりは知名度が低いようですが、ゼアキサンチンという成分にも同様の効果があるとされています。

とはいっても、ルテイン単独ではなく、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などを複合的に摂取しているところにルテインをプラスすると、黄斑変性の予防に一定の効果が期待できるというのが世界的な通説です。

ルテインの1日の推奨摂取量は10ミリグラムです。特に濃い緑色の野菜にはルテインが多く含まれており、ケール45グラム、モロヘイヤ75グラム、小松菜130グラム、ほうれん草220グラムほどで、10ミリグラム相当のルテインを摂取できます。

また、卵のルテイン含有量そのものは少量ですが、卵由来のルテインは体内での吸収率が高いといわれています。

ルテインは水に溶けづらく油に溶けやすい脂溶性の栄養素で、熱変性もあまり起こりません。ですから、先に挙げたような野菜の炒めものや卵とじは、効果的にルテインを摂取できる料理といえます。下ゆでなどでルテインが大量に流出したり破壊されたりする心配もありません。

また、ルテインはたくさん摂取すればするほど効果が増強されるわけではありません。しかも、しばらく摂取し続けて血中のルテイン濃度が上がれば、それ以降は、さほど意識的に摂取する必要はなくなります。

となると、わざわざサプリメントを継続的に購入せずとも、日ごろの食生活をちょっと意識すれば十分にルテインを補充できます。

ただし、ほうれん草には結石を形成するシュウ酸が含まれているため、結石ができやすい人はルテインのサプリメントを飲むという選択肢もありでしょう。

「目にいい=視力が回復する」ではない

ここまでの話でもおわかりいただけたかと思いますが、ひと口に「目にいい」といっても、「目の疲れの軽減」から「黄斑変性など特定の疾患の予防」までさまざまな意味があるわけです。

眼科専門医として日々、患者さんと接していると、そのあたりをひとまとめに捉えている方が非常に多いと感じます。

テレビコマーシャルなどで「目にいいサプリ」と聞くと、何となく目の疲れを軽減してくれて、目の病気の予防・治癒も期待できて、おまけに下がってしまった視力まで回復できるかも……そんな期待を抱きがちではないでしょうか?

しかし、例えば、すでに0・1以下にまで視力が低下している人が、毎日せっせとブルーベリーやニンジンを食べたり、アントシアニンやビタミンAのサプリメントを飲んだりしても、視力が0・1以上になることは期待できません。毎日、45グラムのケールを食べ続けても、視力が回復するわけではないのです。

そうなると気になるのは、「視力回復効果が期待できる」という意味で「目にいい食べ物」はあるのか、あるとしたら何か、でしょう。しかし残念ながら、現時点ではそのような食べ物は発見されていません。

したがって私たち医師としては、「アントシアニンは目にいいですか?」と問われれば、「目の疲れには多少、軽減効果があるとされています」と答えるだけです。

「ビタミンAは目にいいですか?」と問われれば、「ビタミンA欠乏症は視力低下につながるので、きちんと摂取するよう心がけるに越したことはありません」と答えるだけです。

「ルテインは目にいいですか?」と問われれば、「ものを見る機能を担う中心窩の視細胞に必要な栄養素なので、中年以降に積極的に摂取することは、黄斑変性の予防に多少は寄与すると思われます」と答えるだけです。

×緑を見ると目にいい
〇遠くを見ると近視が進行しづらい

重要なのは「色」ではなく「距離」

昔から言われている「緑は目にいい」というのも誤解です。

正しくは「遠くを見る習慣があると近視が進行しづらい」です。

昔は遠くを見ると、自然の景色が目に入ったのでしょう。そこから転じて「緑は目にいい」と言われるようになったと思われますが、重要なのは「距離」であって「色」ではありません。「遠方のスカイツリー」を見ようと、「遠方の山々」を見ようと、距離が同じならば効果に違いはないわけです。

では「遠方」とはどれくらいか。アメリカの眼科学会が出している指標は「6メートル」ですが、科学的には「2メートル以上」ならば遠方と見なしていいとされています。

この2メートルにも、もちろん根拠があります。ボーッと何かを見てピントが合う「調節安静位」は1メートル前後。ここが、いわば「近く」と「遠く」の境界線なので、それよりも遠くの2メートル以上は「遠方」になるというわけです。

近視の進行予防につながる習慣

次に、どれくらいの頻度で遠くを見ればいいかというと、これもアメリカの眼科学会から「20・20・20」という指標が提示されています。

「20・20・20」の意は、「20分間、パソコンやスマートフォン(こうしたディスプレー表示機器を総称してVDTといいます)を見たら、20秒間、20フィート先を見よう」ということ。20フィートは約6メートルですが、ここは先に述べたとおり、約2メートルと置き換えてかまいません。

ただし現実的に考えると、20分ごとに一息入れるのは難しいという人も多いのではないでしょうか。

実は日本の厚生労働省からも、上場企業に対してVDT症候群に関する指針が示されています。それによると、1日に4時間以上のパソコン作業を伴う事業者は「1時間に1回の目安で休憩をとるよう従業員に指導すること」と示されています。

アメリカの眼科学会の指標が現実的に厳しすぎるようならば、この指標に従うだけでも、何も意識しないよりはるかにいいでしょう。

まとめると、近視の進行予防には「緑を見る」のではなく、「パソコンなどディスプレーを見る作業中は、1時間ごとに、できれば6メートル、難しければ2メートル以上遠くを20秒間ほど見る習慣をつける」と覚えておいていただければと思います。

「すでにかなり近視が強いから」と諦めてはいけない理由

すでにかなり近視が進んでいる人は、「いまさら何をやっても無駄」と諦めてしまっているかもしれません。

でも近視は「進行が止まる」ということがありません。これもよく患者さんが口にすることなのですが、「近視が進むのは子どものころだけ」というのは間違いです。大人でも、高齢者であっても、生活環境や習慣次第で近視は容赦なく進行します。

例えば、外回りの営業職からオフィス勤務の事務職に転属になってから、急に近視が進行した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で家に引きこもりがちになり、動画配信サービスをたくさん視聴するようになってから、一気に近視が進行した──という話をよく聞きます。

逆に、都会暮らしだった人が山間部に引っ越したら近視が少し改善した。事務職だった人が外回りの営業職になったら近視が少し改善した。こうした事例も、よくあること。視力の変化は、存外に環境やライフスタイルによるところが大きいのです。

さて、かなり進行している近視は、たしかに元に戻すことはできません。だからといって目にいいことを一切習慣づけないままでは、さらに進んでしまいます。

しかも近視は、かなり進んでいる人ほど、さらに進行しやすいのです。

近視が弱い人よりも強い人のほうが、失明の原因疾患で上位に入る「病的近視(屈折度数は問わず、びまん性脈絡膜萎縮以上の萎縮性変化、もしくは後部ぶどう腫を有する状態)」になるリスクが高くなります。

怖がらせるようなことを言って申し訳ないのですが、近視で本当に問題なのは、「遠くが見えづらくなり、やがて手元も見えづらくなる」ことではありません。光そのものを失う可能性がある病的近視に発展する危険があることなのです。

実は近年、この問題は世界保健機関(WHO)でも非常に深刻視されています。

近視に「いまさら何をしても無駄」と諦めるべき段階などありません。今からでも進行予防に効果的とされる習慣を取り入れ、少なくとも、今より悪くなることは可能な限り防いでいきましょう。

文/平松類 写真/shutterstock

『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書)

平松 類 (著)

2023/9/6

¥990

224ページ

ISBN:

978-4815621841

習慣を見直せば「一生見える目」は手に入る!

・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない

1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。

・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない

1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。


第1章 巷にあふれる「目の健康常識」は眼科専門医の非常識
× ブルーベリーは目にいい
× 緑を見ると目にいい
△ 暗いところでものを見ると目が悪くなる
× メガネを使うと近視が進む
× 若いうちは老眼にならない
△ 現代人の目にはブルーライトカットメガネが必要
× 視力は誰でも改善できる
× 視力を取り戻したかったら、視力回復手術を受ければいい
× 眼トレは、やればやるほどいい

第2章 その習慣、目にとっては「拷問」です
× 習慣的に目を洗う
× 目薬を差したときに目をパチパチする
× 目が充血したら、「充血用の目薬」を使う
× 1カ月以上前に買った目薬を使っている
× ドライアイ解消の最善策は目薬である
× コンタクトレンズの手入れは「ワンステップ」でいい
× ディファイン、カラコンを使っている
× 目をこする
× 目の紫外線対策は必要ない
× 筋トレをめちゃくちゃがんばっている
× マッサージ、ツボ刺激は、視力低下防止、目の疲労回復に効果的
× 目がいいから、検診を受けなくても大丈夫
× 寝付きがいいのは健康のサイン

第3章 放っておいたら危ない「目のサイン」
× 急に視力が落ちてきた
× 急に目が見えなくなった
× ものが光って見える
× 蚊が飛んでいるように見える
× 視野が欠けてきた
× 異常に光がまぶしい
× 目が疲れやすい
× 目がかすむ
× ものが二重に見える
× まぶたが下がってきた
× 目が充血する、かゆい、ショボショボする、ゴロゴロする
× 見たいところがよく見えない、歪んで見える
× 目の健康のセルフチェック法

第4章 知らないと危ない「眼科選び」
× かかりつけ眼科いない
× 手術は眼科医に任せておけば大丈夫
× 「世界水準」を謳う眼科なら安心できる
× ジェネリックの目薬を選んでも、医師に報告しない

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください