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〈10月は食中毒が年間最多で発生〉秋の食中毒はなぜ起こる? 危険なおにぎり、バーベキューの肉の菌、キノコの自然毒っていったい?

集英社オンライン / 2023年10月6日 11時1分

厚生労働省の令和4年の月別食中毒発生状況によると、もっとも発生件数が多い月は10月という結果となっている。なぜ秋に食中毒なのか、どんな食べ物に注意が必要か、潜伏期間は? 対策法などをウチカラクリニック院長 森勇磨医師に解説いただいた。

ほかほか、あったかおにぎりが要注意!?

ようやく暑さも落ち着き、秋の行楽シーズンを迎えますが、真夏同様に、秋も食べ物の管理や手洗いをしっかりするなどして、食中毒対策には引き続き注意が必要です。
食中毒は季節問わず、年間を通して発生しますが、特に秋はアウトドアなどレジャーが盛んになり、バーベキューや運動会、遠足、お祭りなど屋外での食事が増えることが影響して、多く見られます。



主に注意したいのが、お弁当に持参するおにぎりなどにつく黄色ブドウ球菌、肉類など加熱や管理不足によるカンピロバクターなどの細菌、旬を迎えることで食べる機会が多くなる魚の寄生虫のアニサキス、キノコ類などの自然毒などです。

食中毒は原因によって、潜伏期間や症状、対策法が違うので、そこもチェックしてきましょう。

まず、遠足や運動会などに欠かせないお弁当の主役、おにぎりが原因となる食中毒です。
この原因となるのは黄色ブドウ球菌。
黄色ブドウ球菌は、人や動物の傷口(特に化膿しているもの)をはじめ、手指などに広く生息し、健康な人の20〜30%が保菌していると言われています。
この細菌は、30℃~37℃が増殖する温度と言われており、気温や湿度が高い日に、予防対策せずに、長時間持ち歩くと菌が増殖し、食中毒になることがあります。
潜伏期間は比較的短く、食後30分~6時間程度で、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられます。

予防対策として、菌がつかないように調理前にしっかり手を洗い、おにぎりを握るときはラップやビニール手袋を使用するようにしましょう。
温かいご飯でラップを使って握ると水分がつき、それも細菌を増やす原因になるので、冷ましたご飯で握るか、握った後はいったんラップを外すのがおすすめです。
また、お弁当に入れる場合は温かいまま蓋をせず、涼しいところで冷ましてから詰めるように。
保管にはクーラーボックスや保冷剤などを利用しましょう。

バーベキューなどで気をつけたい肉類の食中毒

バーベキューなどアウトドアのレジャーも秋の過ごし方の楽しみの一つですが、肉類の食中毒には注意が必要です。
肉の種類によって、菌や症状、潜伏期間は異なります。

■牛肉
腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌などが存在します。
■豚肉
サルモネラ属菌やカンピロバクターなどが存在します。
■鶏肉
カンピロバクターやサルモネラ属菌などが存在します。

腸管出血性大腸菌の潜伏期間は3~5日で、下痢、激しい腹痛、血便、水様便、発熱などの症状がでます。抵抗力が弱い高齢者や幼児の感染者は溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症することもあります。毒素を体外に出さないといけないので、こうした症状が出たら、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。

サルモネラ属菌は、付着した食品を摂取すると通常8〜48時間の潜伏期間の後に悪心や嘔吐の症状が現れ、数時間後に腹痛や下痢などの症状が現れます。種類によっては3~4日ほどの潜伏期間を経て、発症する場合があります。症状は比較的軽いのですが、下痢など、3~4日間続くので、脱水症状に気をつけましょう。

カンピロバクターは、平均2~5日間が潜伏期間です。感染すると下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐など他の細菌性食中毒罹患時と同様の症状が現れます。多くの場合、1週間ほどで完治しますが、まれに数週間後に、顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することがあります。

肉類による食中毒の予防は細菌などを「他の食材につけない」、「増やさない」、そして、「十分に火を通してやっつける」です。
他の食材に細菌をつけないように、肉はそれぞれ別の容器に入れる、肉を切った包丁やまな板で生野菜やほかの食材などを切らない、トングや箸などは生肉用と焼いたもの用に分けるようにしましょう。
肉類の保管はクーラーボックスを使い、菌を増やさないようにして、調理するときはしっかり中心部まで加熱するようにしてください。

サバ、鮭、アジなどに潜むアニサキス

肉類以外にも注意したいのが魚に含まれる寄生虫のアニサキスです。
秋は、サバ、鮭、秋刀魚などの旬を迎えるため、アニサキスによる急性胃アニサキス症やもしくは急性腸アニサキス症が多くなる時期でもあります。

アニサキスとは線虫と呼ばれる、にょろにょろとミミズのような動きをする寄生虫の一つで、平均2cmくらいのものです。
アニサキスは海で産まれ、最終目的はクジラやイルカなどの海の哺乳類の体内で成長し、卵を産むことなのですが、中間宿主としてイカ、サバ、鮭、アジといった魚の体内である程度成長する過程を経なければなりません。
この過程で、アニサキスを宿した魚が人間の食卓に上がり、人間の体内に侵入することがあります。
基本的にはアニサキスは魚の内臓にいますが、魚が死ぬと徐々に筋肉に移動することがあり、そのためその刺身などを食べると一緒にアニサキスを食べてしまう場合があるのです。

アニサキスの潜伏期間は食べてから数時間後で、激しい下腹部痛、嘔吐、腹膜炎症状を生じます。
症状の原因は、アニサキスが胃を噛んでいる、腹痛と共に蕁麻疹が出ることもありアレルギーによるとも言われています。

アニサキスは海の生物の体内では生きられますが、人間の体内では1週間くらいしか生きられないので、腹痛も1週間程度で治まるのですが、激痛のため、その期間我慢することはできないですし、まれにアニサキスが胃や腸に穴をあけてしまい、手術が必要になる場合もあるので、必ず医療機関を受診しましょう。
アニサキスの治療は胃カメラで、摘出するしかありません。
摘出すれば痛みは治まるので、早めに医療機関で処置してもらいましょう。

アニサキスを摂取しないようにするために、よくおばあちゃんの知恵袋のような知識で「よく噛んで食べるといい」などありますが、アニサキスは小さく、よく噛んでも噛み砕くことができず、体内に侵入してしまいます。
また刺身で食べるときに見つけて取り除くというのも、やはりけっこう難しいものです。
さらにワサビを付けたら死ぬなど言われることもありますが、ワサビではアニサキスは死にません。

アニサキスの対策としては60℃以上の温度で1分以上加熱するか、-20℃以下の温度で24時間以上冷凍するかです。
魚を調理する場合、上記の対策をして食べるようにしてください。

キノコによる自然毒に気をつけたい季節

キノコによる食中毒も気になる季節です。
キノコ狩りに行って、毒キノコと気が付かず、食べてしまい、嘔吐、下痢、腹痛をなどの中毒症状を起こす場合があります。
厚生労働省も食用キノコだと判断できないものは「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」と呼びかけています(※)。プロでないと見分けがつきにくいので、まず野生のキノコを食べるのは避けましょう。

今年の夏は猛暑のせいで、疲れが溜まっていて体の免疫機能が下がっている人も多いはずです。するとますます、食中毒が発症しやすい可能性があります。
また、細菌の種類によっては3日後くらいに症状が出る場合があるので、病院で診察してもらうときは、前日の食事内容だけでなく、3~5日前くらいことも伝えるようにしましょう。

細菌をつけない、増やさない、やっつけるという食中毒の予防対策をして、秋のレジャーシーズンを楽しんでくださいね。

※厚生労働省:毒キノコによる食中毒に注意しましょう
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kinoko/index.html

取材・文/百田なつき

『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)

著者 森 勇磨

2023年3月19日

1,870円(税込)

単行本:262ページ

ISBN:

4418234004

本書は今最も熱いテーマ、「80歳まで健康寿命を延ばす」ことを目指す方のための本です。
糖尿病やがん、心筋梗塞など、年を重ねるにつれ罹患する慢性疾患を回避するために
必要な知見「予防医学」を超人気YouTube「予防医学Ch」運営する現役医師が解説します。
病気になった後の世界や、人が病気になる仕組み。大病を避ける方法について
イラスト入りでサクッと理解できます。医学教養書ファンにも訴求する一冊です。
健康診断で気になる項目の詳しい解説、病名別インデックス付き。
第1章 病気になった後 五臓六腑を失った後の世界
第2章 病気になる仕組み 人間の体の中で起きていること
第3章 大病を避ける方法
付録 健康診断チェックシート

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