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「レジ袋は必要ですか?」レジ袋有料化の裏で大量の産業廃棄物となる飛沫防止アクリル板…なんかおかしい? 「フィーリング環境活動」

集英社オンライン / 2023年10月10日 11時1分

人間、特に日本人は「空気」に左右されて、他人と同じ行動をとる傾向がある。今回は著者がコロナを含めて折々の社会の空気感を取り上げ、それにまどわされる過剰反応な人たちがどれほど多いのかについて克明に綴った記録を紹介する。『週刊新潮』の連載「この連載はミスリードです」(2022年5月〜23年6月)や「デイリー新調」(23年5月配信)を加筆・修正しまとめた『過剰反応な人たち』 (新潮新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

環境活動家による活動の成果により、無事レジ袋は有料化されました。めでたしめでたし

環境活動家ってアレ、本気でやってるんですかね?

ロンドンの美術館で活動家がゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけるという暴挙に及び、世界的に注目されました。



ただの目立ちたがり屋にも見えるんですよ。

だって、この人達って先進国の人間であり、散々エネルギー使ってます。その後も、ローマのトレビの泉に黒い液体を流したり、ベネチアの運河に蛍光色の染料を流して抗議する活動家が登場しました。

スウェーデンの活動家・グレタさんにしても目立つことばかりやっている。国連会議のため大西洋をヨットで横断しましたが、毎回、ヨットで何週間もかけて非現実的な移動をしているのでしょうか。

日本でも愛知の環境活動家が子供達を引き連れて東京・新宿で街宣をしていましたが、絶対、車か電車で移動していますよね。そもそもあなたが着ている服、プラスチックでできているんじゃないですか?

私が決定的に環境活動家をうさんくさいと思ったのは、「ウミガメの鼻にプラスチック製ストローが入っている」写真と、「レジ袋が海洋汚染に繋がる」という2点をもってプラスチックの削減を訴え、実際にレジ袋を有料化させ、さらにはコンビニのスプーンの有料化まで検討させた件です。

それに、私が大学入試をした1993年、小論文で予備校講師が「地球温暖化について懸念を示せば通る」と助言した件。あれから29年経っても延々と地球温暖化への懸念を示し続けている。

そしてこうした環境活動家による活動の成果により、無事レジ袋は有料化されました。めでたしめでたし。

んなワケねーだろ!

レジ袋が有料化された2020年7月1日以降、スーパーやコンビニの従業員は「レジ袋は必要ですか?」「マイバッグはお持ちですか?」という余計な一言を言わざるを得なくなった。

結局、環境問題ってフィーリングなんです

そして、コロナ騒動のせいでレジにはビニールカーテンが設置され、何を言っているのかが聞こえない。「えっ?」と聞き返すことが増えました。そのうちに、互いに大声をあげて「レジ袋いりますか!」「あぁ、いらないです!」と飛沫飛ばし合戦に。

SDGsに熱心な方はぜひとも批判して頂きたいのですが、コロナ騒動開始からアクリル板とビニールカーテン、大量に導入されましたね。不織布マスクも石油由来です。毎日道に落ちているのを見ますし、皆さん、毎日新しいものを使ってせっせとプラスチックゴミを増やしていますね。

なんでレジ袋がそこまでヤバいんですか?

コロナ騒動が終わったらアクリル板なんて大量の産業廃棄物になるのは目に見えています。日本全国で大普及し、メーカーはテレビCMを大々的に打つほどになりましたが、ゴミになった時、きちんとその量を検証するとは思えません。ちなみにコロナ5類化以降、アクリル板をどう廃棄するか悩む事業者が報じられました。そんな時、アクリル板を名刺やイヤリングに加工する会社が登場。汚いな。

結局、環境問題ってフィーリングなんですよ。私が就職活動をした時も「環境問題に興味があります」と言えばなんとなく通る雰囲気があり、学生はそれを言いまくった。

そして今、ファストフードやコーヒーチェーンでもストローを紙にする流れがありますが、なんかおいしくないんですよ……。大塚製薬のポカリスエットも環境のため、リターナブル瓶を導入し、返却したら70円を返す、とやりましたが、あまりにデザイン性に優れていてインスタグラムにUPするため返さない人が多いそうです(笑)。(2022/12/08)

◇エコテロリストといえば、かつては捕鯨船に乗り込む直接行動で知られましたが、ローマでトレビの泉に黒い液体を投げいれるなど、最近は美術品や史跡をターゲットにした間接的アピールが流行(はや)りのようで、どこか「なんで?」感がしてしまいます。そういえば、インリン・オブ・ジョイトイって「エロテロリスト」って言われていたな。

強制力は一切ないのに、水戸黄門の印籠のごとき絶対性を有するガイドライン

「文科省のガイドラインに従っています」「国交省・厚労省によるガイドラインがないと困ります」──これらは新型コロナ騒動以降、教育委員会や学校、そして各種公共交通機関・商業施設で散々言われてきた「感染対策」への意見・要望です。

今回はこの「ガイドライン」という言葉について考えますが、ガイドラインってあくまでも「指標」「参考」ですよね。すっかりこの言葉が嫌いになりました。強制力は一切ないのに、水戸黄門の印籠のごとき絶対性を有するようになった。個別の店舗や施設は独自の対策をすればいいのに、とにかく「指示待ち」であり続けた。

「ガイドラインってことは法律ではないから罰則ないですよね。じゃあ従いません」というのが使い手側の正論なのですが、この3年間のコロナ騒動下、完全に法律と同等あるいはそれ以上のすさまじい効果を発揮した。

ガイドラインってそんなにすごい強制力があったんだ! と思ったものです。それと同時に「ガイドライン」の一言で大衆を屈服させるのが可能であることも分かりました。

たとえば、駅の改札口に立つ門番(鉄道会社社員)が「お客様、マスクの着用をお願いします」と言った場合、していない客は「それは任意ですよね」と反論します。すると門番は十中八九、「国交省のガイドラインに従っています」と言う。これでほとんどの人は引き下がり、マスクを着けます。

しかし、それに対して「なんじゃ、ワレ!」と思った人はその場で国交省に電話をし、「駅や電車でマスクをするよう交通機関に強制させているのか?」と聞くわけです。おそらく役人は「そんなことはありません。あくまでも『推奨』ですので、強制力はありません」と答えるでしょう。

そして「国交省の担当者は強制はしていないと言っています」と改札の門番に伝えると、「どうぞお通りください」となる。

責任をとりたくない現場と「一応指導はした」と言いたい当局の利害が一致

要するに、波風立てたくない現場がガイドラインとやらを盾に無難路線に突き進んだだけです。ガイドラインを読んだうえで、「とにかく感染対策を徹底させ、特にマスクをしていない人間を排除すればいいんですね!」ということになったのです。

ガイドラインが日常に持ち込まれたらヤバいですよ。何しろいくらでも拡大解釈が可能ですから。厚労省が健康増進のため、「居酒屋における飲食ガイドライン」を作ったとしましょうか。

内容としては「過度な飲酒をする客がいた場合は状況を確認し、場合によっては追加の提供をやめる」程度になるのでは。明確な基準はないのに、店側が「健康のため生中は3杯まで。痛風が怖いため、プリン体が多いあん肝を頼んだ場合、レバーや魚卵類は追加注文禁止」とか独自のルールを言い出す。やめてくれ。

結局「ガイドライン」とは責任をとりたくない現場と「一応指導はした」と言いたい当局の利害が一致しただけで、「ワシはガイドラインを示した」「ワシはガイドラインに従った」というこの両者の立場を守るもの。

ユーザーのためではないのです。他責の念が強い日本人とガイドラインはけだし相性が良過ぎました。しかし「週刊誌原稿執筆ガイドライン」がなくて良かった。何も書けなくなる。(2023/03/09)

◇命令ではなくても法律と同じような効果をもってしまうのは、同調圧力の強い国ならではでしょう。1989年の昭和天皇崩御のときも、2011年の東日本大震災でも「自粛」が相次ぎました。周りを見て自分もやめるのは、日本人にしばしば起こる現象です。


文/中川淳一郎 写真/shutterstok

『過剰反応な人たち』 (新潮新書)

中川淳一郎 (著)

2023/9/19

¥836

192ページ

ISBN:

978-4106110108

人間とはいかに愚かで、「自分だけが正しくて他人は全員無能」と考えているか――。本書は、コロナを含めて折々の社会の空気感を取り上げ、それにまどわされる過剰反応な人たちがどれほど多いのかについて克明に綴った記録だ。著者はコロナ騒動が始まってからの3年余を、「壮大なるパニック実験」だったと振り返る。では、過剰反応な人たちの見本市へようこそ。
「考えることよりリアクションが最優先」
そんな残念な日本人の記録


コンプラ・ポリコレこそ絶対、エコ・SDGsこそ至上価値
節操のないメディア、騒々しいネット世論、不倫はすべて許すまじNG
…そんな関わると面倒くさい、過剰反応な人たちを集めてみました。

【目次】
PARTⅠ それって過剰反応では
ニューノーマルという時の流れ/美観を汚す環境テロへの「?」/ガイドラインゆえの手ごわさ/盆踊りは「邪教のミサ」か/コオロギ憎けりゃ太郎まで…/第何波までやるつもり?/迫害され続けた「祭り」/日本の過保護をガイジンと笑った一夜

PARTⅡ コンプラ全盛時代の違和感
セクハラ香川が謝るべきは/『週刊ポスト』のエロ漫画/アホな校則が国を滅ぼす/ツイッターのIDが凍結されて/オブラートに包まれた言葉/「わたしの川柳コンクール」雑感

PARTⅢ 節操のないメディア
何でも答えてしまうから専門家/死してなお「アベ反対」の人々/野党とともに風見鶏のごとく/「戦犯」たちの屁理屈と炎上騒ぎ/専門バカたちの苦しい言いわけ/一体いつまで「食べログ」信仰/「権威」を無視する人生

PARTⅣ マスクゾンビ国家からの逃亡
感染対策マニアにもううんざり/旅の終わりに/ホタルイカでもマウンティング/バンコクからドヤ顔で現況を/異邦人として生きる心地よさ/不要不急のコロナ対策はなお続く/ホント、「異常な3年間」でした

PARTⅤ ビックリ事件簿
「配達するのが面倒だった」郵便局員/「なぜその発想に至ったか」がわからない/特殊詐欺、「ウマい話」は大抵ハズレ/「計3点で時価2200円」のトホホ感/「サンマ」は日本人だけの楽しみだったのに/「側溝のフタ外され」事故で思い出すこと/大地震の予兆への「またか」感

PARTⅥ 可もなく不可もなし
「検討使」時代の岸田首相/下着2枚を重ね着したころ/お決まりの定型句を疑う/何でもいい、役割があれば…/機内食廃止への妥当な感じ/「辛くない」「次は辛く」の攻防/「異物除去マニア」垂涎のひと時/助っ人ガイジン悲喜こもごも/ご存じですか?「大谷翔平は直江」


PARTⅦ ラクに生きよう
自分なりの「法則」を作る/長文の悪夢にうなされる夜/脳にも休みは必要です/苦痛を正当化するのはやめよう/「昭和オッサンムード」の心地よさ/「生きづらさ」と繊細さ/マウンティングなき世界で

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