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〈キン肉マン事件簿〉悪魔と正義のあいだを臆面もなく行き来する…バッファローマン裏切の履歴書〈『キン肉マン』特別企画 #3〉

集英社オンライン / 2023年10月16日 0時1分

このオトコはこれまで何度、主人公と読者を裏切ってきたのだろうかー。正義超人に魅了されて仲間入りを懇願し、死んだ超人には自らの命を分け与えるほど献身的でありながら、いざ助けが必要なときにはスルリと手を離し、悪魔の元へと身を翻す…。絵に描いたような厚顔無恥と優柔不断ぶりで周りを振り回すことにかけては、このバッファローマンの右にでる超人はいないだろう。『キン肉マン』第83巻発売を記念し、裏切りが連鎖するその人生を、事件記者が詳報する。(前後編の前編)

ベールに包まれていたバッファローマンの過去

バッファローマンの代名詞といえば、超人強度1000万パワーを活かしたド迫力のパワーファイトだ。彼の超人強度を上回る者はその後も多数登場しているが、バッファローマン=パワーファイターのイメージは、今なお健在だ。一方で、バッファローマンには機を見るに敏な策略家の一面がある。むしろ、後者のほうが本質的に彼の実像を捉えているかもしれない。



それを象徴する一戦がある。超人動静に詳しい「週刊HERO」の翔野ナツ子記者が指摘する。

「6」を「9」にすることでキン肉バスターを破ったバッファローマン ©ゆでたまご/集英社

「バッファローマンはキン肉マンと初対戦したとき、彼の必殺技キン肉バスターを破っています。ステカセキング、ブラックホールを撃破したこのフェイバリットホールドを独自の視点で分析。一見、完璧に見えるこの技を数字の『6』に見立て、それを逆さまの『9』にすれば、技をかける側が受ける側になるという弱点を見抜いたのです。これはキン肉マンの10倍以上の超人強度を誇るバッファローマンだからこそ可能な離れ技ですが、ただの力まかせではない、こうした柔軟な発想力が彼の持ち味でもあるのです」

「6」を「9」に変える――それはまさに、「変節」と「裏切り」を繰り返していくバッファローマンの生き様を象徴している。そもそもは悪魔超人のリーダー格として世に登場したバッファローマンだが、遡れば実は正義超人の端くれだったのだ。

ここに1枚の写真がある。スーツを着用し、ネクタイを締めた体格のいい青年。ジャケットのボタンはきちんと留められ、タイピンもつけたフォーマルな着こなしだ。サラサラヘアの頭からは2本の角が伸びており、顔つきはどことなく自信なさげだが、まぎれもなく若き日のバッファローマンである。

若かりし頃のバッファローマン ©ゆでたまご/集英社

宇宙超人委員会を退職していた元職員が今回初めてメディアの取材に応じた。

「超人ホイホイを脱獄した7人の悪魔超人が日本に襲来した後、私は上司のハラボテ・マッスル委員長と同僚と3人で、7人のなかでもベールに包まれていたバッファローマンの過去を密かに調べ始めました。そして衝撃の事実に辿り着いたのです」

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「宇宙超人委員会に辞表を出して世捨て人となりました」

バッファローマンの知られざる経歴は、超人中央図書館に所蔵されている「超人大百科」シリーズ中のブラックリストにひっそりと記されていた。

「バッファローマンはスペイン出身の超人で、かつての超人強度はウォーズマンやカナディアンマンと同じ100万パワーと、正義超人では最強クラスだったのですが、技やテクニックがダメで、超人格闘界では何の実績も残せていませんでした。無名だったのもそのためです。コンプレックスに苛まれながらも強さを渇望していた彼は、大魔王サタンと禁断の取引をしました。自分の血と体と魂を売り渡し、超人を一人殺害するごとに1万パワーを得るという身の毛もよだつ契約を交わしたのです」(同前)

このサタンとは、悪魔超人界に君臨する悪魔将軍とは別の存在で、神になり損ねた怨念の集合体であったため、なおさらタチが悪かった。

サタンと対峙するバッファローマン ©ゆでたまご/集英社

「次々と超人を倒していった結果、バッファローマンは1000万パワーに到達したわけですが、死んでいった1000 人もの超人の怨念を一身に背負うことにもなったのです。彼らの怨念はバッファローマンの肉体と一体化。死してなお、体表を自在に動く傷の一つとなって、バッファローマンのコントロール下にありました。こうした事実を知った委員長は身震いが止まらなくなったといい、同僚はショックのあまり寝込んでしまいました。最も精神的ダメージの大きかった私は、宇宙超人委員会に辞表を出して世捨て人となりました」(同前)

かくして無名の三流超人から悪魔超人に生まれ変わったバッファローマンは、規格外の強さを手に入れると同時に、超人強度を0から最大値まで自由に操作する器用さも身につけた。さらに、悲願でもあった数々のタイトルも獲得。その一方で、相手の命を奪うファイトスタイルが問題視され、6人の悪魔超人とともに超人ホイホイへと投獄されたのである。

超人ホイホイ ©ゆでたまご/集英社

顔が変形して歯が何本も欠けるほどボコボコにされた

バッファローマンは以後、「6」と「9」を交互に反転させるがごとく立ち位置を変化させてきたが、キン肉マンとの死闘を経て友情パワーの素晴らしさに触れると、またもや正義超人の仲間入りを決意。いったんは敗北の制裁として、格上の悪魔騎士たちによる斬首刑に処されたものの、悪魔超人の首魁・悪魔将軍の計らいで復活を果たす――。

斬首された7人の悪魔超人 ©ゆでたまご/集英社

前出の翔野記者が語る。

「根っからの悪魔超人ではなかったバッファローマンは、実は妙に義理がたい性格だったんです。悪魔将軍に命を甦らせてもらった恩義に報いるため、アシュラマン対キン肉マンの一戦にかぎり、悪魔陣営としてアシュラマンのセコンドについています。何も知らないキン肉マンたちは約束を反故にされたと思い込み、愕然としていましたが、この対戦が決着すると、バッファローマンは晴れて正義超人の仲間入りを宣言。

キン肉マンの新必殺ホールド『キン肉ドライバー』が完成するまでの間、体を張って悪魔将軍を足止めし、時間稼ぎをはかりました。気合をいれるためだったのか、地毛だと思われていたフサフサの髪の毛(カツラ?)を外し、かつての主である悪魔将軍に立ち向かいました。悪魔将軍は当然ながら激高。実力差は歴然で、顔が変形して歯が何本も欠けるほどボコボコにされてしまうのです」

悪魔将軍にボコボコにされたバッファローマン ©ゆでたまご/集英社

悪魔将軍は早くからバッファローマンに目をかけていた。そのため自ら何度もヒラ悪魔の一人に過ぎないバッファローマンのスパーリング相手を務めてきたという。

「それだけ彼のポテンシャルを高く買っていたのでしょう。だからこそバッファローマンの裏切りが許せなかったようです」(前同)

悪魔将軍の手を握り、頭を下げるバッファローマン ©ゆでたまご/集英社

キン肉マンと悪魔将軍の最終決戦では、バッファローマンが実体のない悪魔将軍のボディ役を引き受けることで、完成したキン肉ドライバーのダメージソースとなり、キン肉マンの勝利に貢献した。

こうして晴れて、正義超人の仲間入りをしたバッファローマンだが、後におこなわれる「夢の超人タッグトーナメント」では、キン肉マンの誘いを断り、ラーメンマン扮するモンゴルマンと2000万パワーズを結成。続くキン肉星の王位争いが勃発すると、キン肉マンの実兄アタル氏がなりすましていたキン肉マンソルジャーが率いる超人血盟軍に加わり、キン肉マンはその裏切りの度にショックを受けるのだが…(#4へ続く)

取材・文/ 落花豆男
集英社オンライン編集部ニュース班

キン肉マン 83

ゆでたまご

2023年9月29日発売

528円(税込)

新書判/192ページ

ISBN:

978-4-08-883647-8

バッファローマン敗退によりバベルの塔での闘いに幕が下りた。試練を突破しバベルの塔最上階に集った真の男たちは、そこでこの世のひずみを目の当たりにする。ふたりの超神から語られる世界の危機にキン肉マンたちは!?

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