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漫画原作の秋ドラマが20作以上の不思議「知られた作品を映像化する安心感」…ショートカットを選び続けるドラマ業界

集英社オンライン / 2023年10月21日 13時1分

秋ドラマが続々と放送を開始している。『パリピ孔明』『今日からヒットマン』など今クールは放送前から話題となっていた作品が多いが、これらドラマの共通点として挙げられるのが“漫画原作”だ。前クールに比べて、約2倍の20作以上の漫画がドラマ化されているが、いったいなぜこんな事態が起こっているのか、“ドラマオタク”コラムニストの小林久乃氏が考察する。

秋ドラマが始まった。ワクワクしながらラインナップを見ていると、ふとある事実に気づいてしまった。秋にスタートするドラマの20作以上が“漫画原作”ものなのだ。

・高橋文哉&志尊淳 主演『フェルマーの料理』(TBS系列)
・西島秀俊&内野聖陽 主演『きのう何食べた? Season2』(テレビ東京系列)


・菅野美穂 主演『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系列)
・重岡大毅 主演『単身花日』(テレビ朝日系列)
・菊池風磨 主演『ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系列)
・木南晴夏 主演『セクシー田中さん』(日本テレビ系列)
・松本穂香 主演『ミワさんなりすます』(NHK総合)


……と、ほんの一部を紹介するだけでも、大量放出。

いったいなぜ、ドラマ界は漫画原作がこんな飽和状態になってしまったのだろうか? 私なりに各所で見聞きした情報をまとめてみようと思う。

たった1、2話目の掲載で映像化のオファーが

まずなぜ漫画原作が増えたのか、この発端を考えると思い当たることがある。旧知の仲である、某男性漫画誌の編集部員と飲んでいたときのことだ。

私から、最近のドラマは漫画原作がとても多いことを話すと、「だろうなあ」と、一言。そしてこう続けた。

「とにかく最近、ドラマ化のオファーが多いのよ。たった1〜2話を連載しただけで、テレビ局から『映像化をしませんか』と電話があるくらい。昔は漫画が映像化されるなんて、スペシャルなことだったのに、今じゃ断ることだってある」

かつて、テレビ局のドラマプロデューサーからも、企画を考えるときにはまず書店へ、もしくはAmazonサーフィンをすると聞いたことがある。私たち出版業界の人間も同じようなことをしているので、それが決して悪いことだとは思わない。

「ただ、残念だなあと思うのが、ドラマ化が漫画家のセカンドステップになかなか繋がらないんだよ。昔は映像化されると、即、人気漫画家の仲間入りになっていた。なのに今じゃ、たった一回のドラマ化で終わってしまうことも多い」

サブスクリプションという新たな収入源

では、次々に漫画原作からドラマ化となって、その受け口=放送枠があるのかというと、実はそれは確実にある。最近、ドラマの放送枠が確実に増えているからだ。

例えば関西テレビ・フジテレビ系列で4月から始まった、月曜22時枠。現在は橋本環奈主演の『トクメイ!警視庁特別会計係』が放送されている。その他、秋ドラマからスタートした金曜21時枠はムロツヨシ主演の『うちの弁護士は手がかかる』。

深夜ドラマにいたっては各局、百花繚乱状態で、見る側もついていけなくなるほど飽和状態だといえる。

前述のドラマプロデューサーに「なぜこんなにドラマが増えたのか」と聞くと、最近は放送後、サブスクリプションに売るという市場が新しくできたことを理由に挙げていた。

今までは連続ドラマが終わると、円盤化(Blu-ray、DVD化など)をして終わるのが通例だった。それが今では放送後のほうが盛り上がるケースがあるほど、動画配信サービスの役割は大きい。

結果として各局がドラマ制作に躍起になる。量産するためには、小説よりも映像化への道がショートカットできる漫画原作は手っ取り早い。それが昨今の漫画原作ドラマ増加の原因のひとつであると推測できる。

ジャンルで多いのは、タイムリープ、LGBTQか

では楽しんでいる側の視聴者からすると、漫画原作が増えたことによって、既視感のある設定が散見されているという被害(?)もある。

最近“タイプリープ”ものドラマが妙に多いのである。例えば現在放送中のある意味、時空を超えた向井理主演『パリピ孔明』(フジテレビ系列)、『僕だけがいない街』(Netflix制作、2021年より関西テレビ系列にて地上波放送)など。

さらに漫画原作ばかりでは?と思ったジャンルに、“LGBTQ”をテーマにしたドラマがある。先日、女性ファッション雑誌でおすすめのドラマ作品を取材される機会があり、改めてラインナップを見直すことで気づいた。

現在放送中の『きのう何食べた?season2』(テレビ東京系列)、来年初冬に放送予定の『作りたい女と食べたい女』(NHK総合)。

少し前を振り返っても『僕らの食卓』(TBS系列・2023年)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系列・2021年)など。

まだ取り扱いがデリケートだと感じているジャンルなだけに、テレビ局側もオリジナル制作には慎重なのだろうか。

オリジナルも漫画原作もどちらも面白いけれど…

ここまで地上波ドラマの漫画原作ものが増えている件について、あれこれと意見を綴ってみたが、「ドラマはオリジナルが一番なのよ!」という、エゴ全開の思いはない。

漫画原作のドラマは面白い。例えば夏ドラマとして放送された『ばらかもん』(フジテレビ系列・2023年)は、本当に面白かった。

書けなくなった若き書道家が、五島列島で自分を見直して進んでいく物語。放送の最中に「あ、これ原作の漫画があるのか」と気づいたくらいで、まったく気にならなかった。これが漫画原作のあり方ではないだろうか。

また、何人かの脚本家にインタビューをしたときのこと。皆、漫画原作の場合は「何度も何度も繰り返し、原作コミックを読む」と異口同音だった。

原作の尊厳を崩すことがないように、世界観に入り込む…そんな熱意を持っているのだから、漫画を映像化したドラマは面白い。

要は、オリジナル脚本と原作ありきのドラマの放送本数のバランスだろう。

各テレビ局が今少し漫画原作ものの量に留意する。
加えて、オリジナル脚本は一筋縄ではいかないけれど、長時間をかけて育てる。

この2点を一度見直してはどうだろう。
ひいては、昔のように「待望の映像化!」といった、クリエイターにひとつの目標が宿る。

そんな底力の積み重ねが日本ドラマをきっと盛り上げてくれるはずだ。

文/小林久乃

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