「アホか。お前はプロを目指せ!」。日本シリーズでの快投を期するオリックス・山﨑颯一郎を支える中学時代の恩師の“ひと言”
集英社オンライン / 2023年10月28日 16時0分
59年ぶりの“関西対決”となる日本シリーズが10月28日から開幕する。パ・リーグ3連覇を達成した今季のオリックス・バファローズ。優勝の立役者のひとりが、プロ7年目の山﨑颯一郎だ。53試合に登板し、侍ジャパンに選出されるなど大きな飛躍を遂げた。同期入団で同い年の山本由伸の陰で研鑽を積んできた25歳の野球人生の“ターニングポイント”とは。
誰もがその素質を認める大器
9月20日、ロッテ戦――。6-2で迎えた9回のマウンドに立ったのは、クローザーの平野佳寿ではなく、山﨑颯一郎だった。1安打を許したものの、最後の打者・ブロッソーをフォークで空振り三振に仕留めて胴上げ投手に。優勝の瞬間、マウンド上で雄叫びをあげた。
昨季はシーズン途中に先発からリリーフに配置転換。自己最速の160キロをマークするなど、新たな仕事場で輝きを見せた。190センチの長身から投げ下ろす剛速球を武器に、今季は開幕からセットアッパーの座を確保。プロ7年目にして、初めてシーズン通して一軍の戦力になった。
チームのリリーフ陣を見渡せば、絶対的なクローザー・平野がいる。今季も途中離脱などはあったが、42試合に投げて29セーブ、防御率1.13と安定感はまだまだ健在だ。とはいえ、平野も今年で39歳。“常勝軍団”構築のために次世代のクローザー育成は急務だ。
その筆頭格が山﨑颯なのは、誰もが認めるところだろう。優勝を決める大事なマウンドを託されたこと、27ホールドとは別に今季9セーブを挙げていることからもそれは読み取れる。3月には追加招集ながらWBCにも出場。登板機会こそなかったが、“超一流”の空気感と“世界一”の瞬間を肌で感じた。
誰もがその素質を認める大器――。ただ、中学時代の指導者の“あるひと言”がなければ、山﨑颯自身もその才能には気付かなかったかもしれないという。
石川県出身の山﨑颯は、野球好きの祖父の影響で小学生時代に野球をはじめた。現在同様、背が高かったこともあって投手や捕手、一塁を守っていたという。ただ、本人の言葉を借りれば決して「飛び抜けて上手い」ワケではなく、投手をやっていたのも「背が高くて球が速かったから」だそうだ。
中学時代の指導者の“ひと言”
中学に上がると地元の硬式野球チーム『加賀ボーイズ』に入団。しかし、野球に対するモチベーションは決して高くなかった。野球を続けたいという意思こそあったが、プロはおろか、高校で甲子園を目指そうとすら考えていなかったという。中学2年生のある日、チームの監督から進路希望を聞かれた。そこで、山﨑颯はこう答えている。
「普通に公立高校に入って、将来は父親よりもいい仕事に就きたいです」
思春期特有の“スカし”もあったのかもしれない。しかし、この答えを聞いた監督は返す刀で山﨑颯にこう告げる。
「アホか。お前はプロを目指せ!」
当時のことを山﨑颯はこう振り返る。
「正直、言われた瞬間は『は? なに言っとんねん』と思いました(笑)。ただ、監督から急にそんなことを言われて、初めて将来のこと、野球への取り組み方をもう一度考えるようになったんです」
ちょうどこのころ、身長がさらに伸びたのも大きかった。中学3年時には身長が187センチに達し、日本代表にも選出。身体の成長と技術的な成長が合致し、名門・敦賀気比高校への進学も決まった。
その後の活躍は前述のとおり。山﨑颯自身も、「野球人生を振り返っても、一番成長できたのは監督に『お前はプロに行け!』と言われた中学2年生から。その意味では本当に感謝しています」と語っている。
もしあのとき、「公立高校に行きたい」という山﨑颯に監督が「そうか、じゃあ受験勉強も頑張らないとな」と答えていたら、今の彼はなかったかもしれない。
あれから11年――。野球に真剣になり切れていなかった少年は、リーグ3連覇を果たしたチームの主力として、“日本一”をかけた戦いに挑む。日本シリーズでも“次世代クローザー”山﨑颯一郎の投球から、目が離せない。
取材・文/花田雪
#1 《大谷翔平を超える逸材》えげつないボールを投げる怪物・山下舜平大のプロ初登板&開幕投手で確信した「バファローズ投手王国」 への道筋
#2 NPB最高投手となったオリックス山本由伸はメジャーで何勝できるのか…指標となる「3年連続防御率1点台」を残してメジャー挑戦した2人の剛腕
#3 佐々木朗希、奥川恭伸を上回る成績をあげる宮城大弥は本当に「技巧派左腕」なのか? 「由伸さんがいなければ」
#4 残りふたりとなったPL学園出身の現役プロ野球選手…日本シリーズに挑む中川圭太に社会人野球で奮闘する“最後のPL戦士”からエール
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「遠投で腕の強度を上げている」ドジャース・ロバーツ監督が負傷中の山本由伸に言及 復帰時期は明言せず
日テレNEWS NNN / 2024年7月20日 17時10分
-
新人王の“転向”にファン仰天…「見て目が回った」 剛腕の復活プランに衝撃の声
Full-Count / 2024年7月17日 8時30分
-
オリックス・吉田輝星投手 今季2勝目 金足農業の弟・大輝投手の活躍に続く
ABS秋田放送 / 2024年7月11日 18時44分
-
苦境の王者救うか、日本に戻って来た強力助っ人 備える武器…MLBで記録した“1.14”
Full-Count / 2024年6月29日 17時18分
-
「本当はやっちゃいけない」…執念の85球 続投を“懇願”する22歳の男気「役割は果たせた」
Full-Count / 2024年6月28日 9時23分
ランキング
-
1アーチェリー野田紗月、初の五輪で12位発進…「これが五輪か!」と驚くカメラの列にも冷静
読売新聞 / 2024年7月25日 22時40分
-
2フランス、テロ計画巡り男拘束 五輪と関連不明、ベルギーでも
共同通信 / 2024年7月25日 23時2分
-
3スペインが「日本に完璧なリベンジ」 女子W杯の雪辱を母国評価「亡霊に打ち勝った」
FOOTBALL ZONE / 2024年7月26日 7時10分
-
4「我々に比べ、日本は明らかに悪条件」 卓球・五輪女子団体、ライバル中国メディアが優位性指摘
THE ANSWER / 2024年7月25日 18時3分
-
5LAの昼空を割く“高弾道” 米実況も騒然…大谷翔平の“驚愕弾”は「いつ落ちるんだ」
Full-Count / 2024年7月26日 8時7分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)