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うしろ指さされる「働かないおじさん」にならないために…近い将来“スキル重視”の雇用が進む日本で、20〜30代が始めるべきリスキリング

集英社オンライン / 2023年11月13日 11時1分

「リスキリング=40代以降に人生100年時代に備えて行う学び直し」という“誤解”が広まっている。正しくは単なる年配者の学び直しではなく、20〜30代の若手にも価値のある取り組みだ。『リスキリング』シリーズ著者の後藤宗明さんに、有効的なリスキリングのやり方について聞いた。

#2

リスキリングは本来「企業が従業員に労働移動を促すもの」

——後藤さんはリスキリングを、個人の「学び直し」や「生涯学習」とは異なるものだと主張されています。改めて、リスキリングの本来の定義を教えてください。

英語のリスキリングの原形は「リスキル」であり、その本来の定義は「企業が従業員に新しいスキルを身に付けさせる」というものです。



海外でリスキリングが注目された背景には、急速に進化したテクノロジーにより、従業員の仕事が奪われていく可能性と、それに対する危機感がありました。そこで、企業が従業員をクビにするのではなく、今後企業として注力するべき分野へ従業員が移動し(「労働移動」という)、活躍してもらうための手法としてリスキリングが注目されたんです。

一方の日本では、リスキリングの和訳として、人生100年時代に向けた生涯教育の意味も含む「学び直し」が当てられてしまったため、本来の定義と異なるかたちで広まってしまいました。

「学び直し」は、必ずしも労働移動につながるスキルを身に付けなくてもよいという点で、「リスキリング」と大きく異なります。

——「リスキリング」と「学び直し」を混同していることの、問題点は何でしょうか。

リスキリングのゴールが、スキルを身に付けるという途中地点に置かれてしまっていることです。前述の通り、本来のゴールは、従業員が企業の成長分野に労働移動すること。しかし、日本におけるリスキリングでは、スキルを身に付けた後にあるべき「実践」と「労働移動」のステップが抜け落ちてしまっています。

そのため、企業や個人がリスキリングに注力しても思うような成果が得られないケースが散見されるのです。

ゴールが不明確だから失敗に終わる

——リスキリングに取り組む企業は年々増加しています。よくある失敗パターンとその解決法を教えていただけますか?

「企業が従業員に対してその目的を明確に説明しないまま、セミナーやオンライン学習などの機会を提供し、そのコストに見合うリターンを得られない」という失敗はよくあります。コストを回収できないばかりか、最悪の場合、従業員がそうやって身に付けたスキルを活かすために他所に転職してしまうこともあるでしょう。

企業が上記のような失敗をしないためには、2つのポイントが挙げられます。
まずは、企業が従業員に対して、リスキリングの目的を明確に示すこと。企業が今後どの方向に進むのかがわかって初めて、従業員がどんなスキルを身に付けるべきかが決まるためです。

もう1つのポイントは、リスキリングの成功を従業員の個人的な努力に依存しないこと。例えば、休日や帰宅後などの就業時間外にリスキリングさせようとした場合、やる気や時間のある人だけが取り組み、目標とする労働移動が実現しない可能性があります。企業は就業時間内に、従業員にリスキリングをする時間や実践の機会を与えることが重要だといえます。

——リスキリングを受ける側の取り組み方についてもお聞きしたいです。20〜30代の若手が今から身に付けるべきビジネススキルには、どのようなものがありますか?

一般的にビジネススキルは、専門的な知識や技術といった「ハードスキル」と、コミュニケーションやマインドセットなどの「ソフトスキル」に分けられます。若手が身に付けるべきスキルで言うと、ハードスキルの基礎とソフトスキル全般だと思います。

特に、ハードスキルを主体的に身に付けることは非常に重要です。米国企業ではジョブ型雇用より一歩進んだ、スキルベース雇用が広まりつつあります。これは、学歴や職務経歴ではなく、応募者のスキルをもとに選考、雇用する方法のことです。

ジョブ型雇用との大きな違いは、4年制大学を卒業していることよりも、どんなスキルを保有しているかが評価される点。この“スキル重視”のトレンドは、いずれ日本にも訪れると考えています。

どのようなハードスキルを身につけるべきかは一概に言えませんが「成長産業で役立つスキルか」という観点で選んではどうでしょうか。

最近ではAIを活用したDXだけでなく、脱炭素に向けたGX(グリーン・トランスフォーメーション)なども注目されています。こうした取り組みの市場が拡大すればするほど、キャリアの幅や移動先での業務が広がるうえ、給与も上がっていく可能性が高いです。

また、ソフトスキルは長い時間をかけて習得していく性質のものなので、こちらも若手のうちから意識して学んでおくのがいいと思います。

リスキリングに重要な3つのマインドセット

——個人がリスキリングに取り組む際、与えられたツールや環境を最大限に活かすコツを教えてください。

私はリスキリングに必要なマインドセットとして、以下の7つを挙げています。

1 「まずやってみる」を心がけよう 〜正解への辿り着き方は後から考える〜
2 コンフォートゾーンから飛び出そう 〜健全な危機感を持つ〜
3 6割理解のままで突き進もう 〜「知らない」を恐れない〜
4 何度でも同じプロセスを繰り返そう 〜「忘れた」で落ち込まない〜
5 いつでも軌道修正しよう 〜何度でも方向転換 〜
6 すぐに成果が出なくても焦らない 〜しなやかなレジリエンス〜
7 発展途上の自分に自信を持つ


各項目の内容は先日出版した『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』でご確認いただけたらうれしいのですが、その中でとくに重要なのが

「『まずやってみる』を心がけよう」
「コンフォートゾーンから飛び出そう」
「発展途上の自分に自信を持つ」

の3点です。

もっとも大事なのが、まずやってみること。やる前からその行動が成功か失敗かはわかりません。やってみた結果生まれた感情を受け止めて、次のステップに活かすことが大切です。

次に、自分のコンフォートゾーンから飛び出していくこと。時代の変化が速い昨今では、安全圏内に留まり続けるほうが危険です。とはいえ、すぐに一歩を踏み出すのが難しい人は、情報収集のやり方から変えるのがおすすめです。例えば、Webからのインプットが多い人は、オフラインの勉強会に参加してみてください。自分を変えるきっかけになるような出会いが待っているかもしれません。

そして、発展途上の自分に自信を持ってください。リスキリングのゴールである労働移動の実現には、長い時間が必要です。その中で挫折しそうになっても、目標に向かって新しいことに挑戦している自分を肯定できれば、前向きに進み続けることができます。

——個人が、リスキリングのゴールである職種転換を実現するためのコツはありますか?

もっとも簡単かつ効果的な方法は、自分が実現したい職種転換をすでに実現した人の話を聞きに行くことです。たいていの場合、それは社外の人になります。なぜならリスキリングの目的は成長市場、具体的にはDXやGXといった領域への労働移動であり、それらの知見を持つ人が社内にいるケースはおそらく少ないためです。

——最後に、リスキリングという新しい挑戦を目前にしつつも、一歩を踏み出せずにいる読者に向けてメッセージをお願いします。

20〜30代のころは、自分の現在地と理想のあいだに大きなギャップがあるものです。私自身、そのギャップにとても苦しんだ思い出があります。では実際にその苦しみをどう乗り越えたかというと、自分の挑戦を周りの人に発信したことがブレイクスルーにつながりました。

たとえわずかな前進でも、挑戦している人には周りがチャンスを与えてくれるものです。ぜひ、小さな一歩でも踏み出し、それを発信してください。

取材・文/園田遼弥 写真/shutterstock

『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』(日本能率協会マネジメントセンター)

後藤 宗明 (著)

2023/9/1

¥2,035

320ページ

ISBN:

978-4800591401

【内容紹介】
リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」であり、重要性が叫ばれつつあったが、岸田総理の所信表明演説以降、国や自治体、企業などで具体的なリスキリングの流れや取り組みが始まっている。
こうした背景のなかで注目されているのが「個人のリスキリング」だ。リスキリングは、本来は企業などが従業員(個人)に対して提供するものであるが、現実的にこれに対応できる企業は少ない一方で、労働移動はまったなしの状況になっている。
本書は、現在注目されている「リスキリング」が実践できるようになる一冊。これからリスキリングを実践しようとしている人だけでなく、リスキリングの意味やこれからのビジネストレンドを知りたい人にも役立つ一冊です。

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