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大企業も”副業”に熱視線。開始2年で登録者2万人を突破した副業マッチングサービスの裏側

集英社オンライン / 2022年5月25日 7時1分

働き方やライフスタイルが多様化したことで、1つの収入に依存せず、副業や兼業をこなすビジネスパーソンが増えている。働き方改革やコロナ禍を経て、この流れは加速する一方だ。そんな中、ローンチしてわずか2年で2万人以上のビジネスパーソンが登録する副業マッチングサービスも登場。まさに「大副業時代」の到来を象徴するかのようなサービスだが、ここにはビジネスパーソンだけでなく、かつて副業禁止を打ち出していた「大企業」の思惑も交差していた。

副業マッチングサービスが急成長した「2つの要因」

開始わずか2年で2万人の登録者を集めたのは、株式会社クラウドワークスが立ち上げた「クラウドリンクス」だ。クラウドリンクスは、「副業でスキルや経験を発揮したい個人」と「副業人材に仕事を依頼したい企業」をWeb上でマッチングさせるプラットフォームとしてサービスを開始し、2022年4月末時点では登録者数28,000名を突破した。登録者は30代〜40代のビジネスパーソンがメインだが、50〜60代のシニア層も全体の約2割を占める。



クラウドリンクスは立ち上げてから2年間、有料広告などは出稿せずに、短期間で多くの登録者を獲得した。なぜ、そのようなことができたのだろうか。クラウドワークスの取締役執行役員でクラウドリンクスの事業責任者を務める大類光一氏は、その理由をこう明かす。

「働き方改革、コロナ禍などを経て、企業が副業を解禁する動きが活発化しています。それに呼応するように、Googleトレンドなどのツールで調査すると『副業』と検索する人がここ数年急増しています。このニーズを捉えるために、クラウドリンクスではSEO対策を徹底して行いました」

さらに、クラウドリンクスはより多くのビジネスパーソンの支持を得るために、サービス内で発注される案件の内容を見直した。
これまで副業といえば、特定のスキルを活かして仕事を請け負うケースが多かった。例えばクラウドソーシングのサイトを見ると、ライティングやデザイン、最近では動画編集などが目立つ。

このようなスキルを持つ人にとって、副業に対するハードルは比較的低いだろう。しかし、特定のスキルを持たないビジネスパーソンは、副業を始めたくてもできないという状態に陥ってしまう。

副業マッチングサービスを成長させるには、このギャップを解消する必要があるのではないかーー。そこで、クラウドリンクスでは特定のスキルを持たないビジネスパーソンでも副業にチャレンジしやすいように工夫を凝らした。

「クラウドリンクスに掲載されている副業は、いわゆる”プロジェクト型”のものがほとんどです。クラウドソーシングで掲載されている副業と異なり、コミュニケーション能力やマネジメント能力など総合力が求められるため、会社員として活躍するビジネスパーソンがより力を発揮しやすく、副業に対する第一歩が踏み出しやすくなっています」

このコンセプトが、ビジネスパーソンにヒットした。自らの能力を社外でも発揮したいと考えている、大手企業やGAFAなどの外資系企業に勤める優秀なビジネスパーソンが次々と登録。サービスの急成長の一因となった。

そして登録者の急増は、プロジェクトを発注する企業を呼び込むことにもつながった。しかも中小企業やベンチャー企業だけでなく、かつて副業禁止を掲げていた大企業も副業人材を求めて、クラウドリンクスを活用するようになったのだ。

クラウドリンクスでは、副業人材を探す企業が700社以上登録しており、累計の掲載プロジェクトは3,900件を数えるという。デジタルマーケティングの推進やオウンドメディアの編集業務、企業コンサルタントなど、プロジェクトの種類は多岐にわたる。

その中でも、近年ニーズが高まり続けているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わるプロジェクトだ。AIやビッグデータなど最先端のテクノロジーを最大限活用し、新たな収益源となりうるビジネスを創出したい大企業を中心に、クラウドリンクスでいわゆる「DX人材」を募っている。

副業マッチングサービスで「DX人材」を求める理由

その一例として、大類氏はある大企業の事例を挙げた。

「クラウドリンクスのクライアントさまで、最先端のテクノロジーを活用するDXプロジェクトがありました。しかしそのプロジェクトは、ハードウェアとソフトウェアの両分野で高い技術力が求められていたため、なかなかニーズにマッチした人材に巡り会えませんでした。そこでクラウドリンクスで人材を募集したところ、採用に成功しました」

このように大企業が副業マッチングサービスを活用するケースが近年増えつつあるという。その背景には「DX人材をはじめ、優秀な人材の採用が困難を極めていることがある」と大類氏は推測する。企業の成長のキーマンになりうるDX人材は、どの企業も喉から手が出るほど採用したい。

しかし先に挙げた事例の場合、「ハードウェア」に対する知見だけでなく「ソフトウェア」に対する知識も求められる。このような素養を持ちDXを推進できる人材を正社員として迎え入れるのは、給与などの待遇を含めて極めてハードルが高い。

そこで、フルタイムではなく副業という形で自社のDXプロジェクトに関わってもらうという考えが企業に広まりつつあるようだ。副業を通じて、DX人材に自社にはない知見やノウハウを提供してもらうのだ。

「DXのように、これまでの企業活動の延長線上にないビジネスを立ち上げようとする場合は、自社にないノウハウや知見を取り入れる必要があります。だからこそ、それが実現できる可能性があるクラウドリンクスに、企業も注目しているのではないでしょうか」

さらに大企業の中には、副業マッチングサービスを単なる仕事を発注する場ではなく「社員が自立できるよう、案件を紹介したり能力開発する場として活用する動きがある」と大類氏は語る。

その一例が、大手広告代理店・電通の取り組みだ。2021年、電通は40歳~60歳のミドルシニア社員が早期退職後に個人事業主として業務委託契約で活躍する新たな働き方の仕組み「ライフシフトプラットフォーム」を発表。その支援の一環で、クラウドリンクを活用しているのだ。クラウドリンクスは、元電通のミドル世代人材を抱える電通の子会社・ニューホライズンコレクティブと提携し、クラウドリンクス上の案件を紹介する取り組みを行っている。

クラウドリンクス事業紹介資料より抜粋

「大手広告代理店で培ったスキルや経験を生かし、ベンチャーや中小企業の成長に貢献する人材として送り込むことを目的に座組みを構築しました。事業課題に悩む企業側は、優秀な壁打ち相手がジョインすることで効果的な打ち手を考えられますし、元電通の人材も新しいセカンドキャリアの形成につながる。年齢や雇用形態関係なく、その人の持ち味を発揮しながら中長期的に働ける環境づくりをサポートできればと考えています」

大類氏によれば、大企業で行われている社員研修でもクラウドリンクスを活用することがあるという。社内の業務では培うことができないノウハウを学んだり、副業のマッチングを通じて仕事を獲得するスキルを身につけることを目的としているようだ。

1度入社したら副業などせず、社業に打ち込めーー。かつて「勤めれば一生安泰」と言われた大企業でも、そんな常識がいよいよ崩れ去ろうとしているようだ。

「大副業時代」の先にある未来とは?

副業解禁の流れから、働き手となるビジネスパーソンは仕事の選択肢がより広まった。それと同時に、大企業までもが副業を通じて他社の優秀な人材を迎え入れようと手段を尽くす。さらにこの動きに着目した企業が、両者をマッチングさせるプラットフォームを整えて、さらなる変化を促す。

この一連の流れの先には、一体どんな未来が待っているのだろうか。大類氏はサービスの展望も踏まえながら、最後にこのように予想する。

「仕事に対する主導権が企業ではなく、ビジネスパーソンに移っていくと思いますし、そのような未来の実現に向けてサービスを進化させたいと考えています。そのためにも、より多くのビジネスパーソンの方々に登録していただき、より多様な人材を揃えたい。そして、それが実現すると、さらに多くの企業が副業人材を求めてクラウドリンクスを活用します。このサイクルがうまく回れば、ビジネスパーソンが複数の収入源を持つのが当たり前の時代になるでしょう」

加速し続ける「大副業時代」。しかし、これはまだ「序章」に過ぎないのかもしれない。

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