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いつも同じ道を通りたがる子どもには理由がある! 「いろいろな体験をしてほしい」親心が発達障害の子どもにはストレスになることも…〈マンガでわかる自閉スペクトラム症の子どもの特性〉

集英社オンライン / 2023年11月17日 12時1分

こだわりが強い、融通がきかない、といった特質を持つ子どもの行動には理由がある。発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の臨床経験30年以上の医師が指南する、子どもの不思議な言動のサポート事例を紹介しよう。『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

#1

【CASE-6】園に行くとき、いつも同じ道を通りたがる

マンガ:フクチマミ

「いつもと同じ」であることへの安心感が強いのかもしれません

自閉スペクトラムの特性がある子には、CASE6のマンガのように「いつもと同じ」であることへのこだわりが見られる場合があります。親としては、「どうしてこんなに抵抗するんだろう」と思うかもしれません。



でも、誰にでも「いつもと同じ」であるほうが楽だという感覚はありますよね。

例えばパジャマのズボンのように、どちらが前なのかが一目ではわかりにくい衣類を身につけるときには、前うしろを逆に着てしまうことがあります。

それでは生活ができないというわけではありませんが、やはり前うしろが逆になっていたら違和感があり、穿き直します。これも「いつもと同じ」を好むことのひとつの例です。

衣類の前うしろには多くの人が違和感を持つと思いますが、そのような感覚をもっと多くの場面で持つ人もいます。例えば、家具の配置が変わるとモヤモヤする人もいます。

判で押したように「いつもと同じ」を重視する子たち

自閉スペクトラムの特性がある人は、変化に対する違和感が多くの人よりも強いことがあります。その場合、変化の多い生活をしていて、従来通りではない出来事ばかりが続くと、心身ともに疲れてしまいがちです。

幼稚園に通っていれば、毎日同じスケジュール、同じメンバーで過ごせるというわけではないでしょう。子どもはいろいろな場面で、新しい体験をしているはずです。それは変化が苦手な子にとっては、気持ちが忙しくなってしまう日々かもしれません。

新しい体験を積み重ねていくなかで、せめて道順くらいはいつもと同じであってほしい。マンガのお子さんはそう感じているのかもしれません。

ほかにも、「同じ道のほうが気持ちいい」と感じる子や、「いつものルールで行動すると達成感を得られる」という子もいます。感じ方はさまざまですが、「いつもと同じ」を重要だと感じる子もいるということです。

安心感を持ったら、子どもから新しい経験を始める

大人はよく「子どもにはいろいろな体験をしてほしい」と言います。子どもの経験の幅を広げるために、あえて初めての場所や活動に参加させることもあります。「こだわりの強い子だからこそ、変化に慣れさせたい」と話す人もいます。

しかし、「いつもと同じ」を好むタイプの子には、そのような対応が負担をかけてしまうこともあります。初めての体験ばかりで疲弊して、新しい活動への意欲を持ちにくくなる子もいるのです。

子どもが道順にこだわる場合に、変化に慣れさせようとして「たまにはこっちの道から行こう」と誘いかけ、子どもが嫌がったら引き下がる、という接し方をする人がいますが、子どもに明らかにストレスをかけているのであれば、やめたほうがいいでしょう。

結果として同じ道を通るのなら、最初から「いつも同じ道を通る」という姿勢を見せたほうがいいのです。

ルーティンにこだわる子は毎日、判で押したように同じことを繰り返していると、安心感を持ちます。安心してのびのび過ごしていると、むしろその子のほうから違う道順に興味を持つこともあります。

逆説的なようですが、無理に新しい経験をさせないほうが、余裕ができて、視野が広がるという子もいるのです。

自閉スペクトラムの子の「考え方」にはどんな特徴がある?

自閉スペクトラムの特性がある子は、行動をパターン化しやすいところがあります。最初にいいパターンをつくっておくと、次からもそのパターンを踏襲するので、うまくいきやすいのですね。だから学校では、取り組みやすい活動を初日から用意しておいたほうがいいのです。

この話は、なんらかの行動を「やらせない」ときにも有効です。例えば、自動販売機を見かけて子どもにジュースを買い与えると、同じところを通るたびに「また買って」とせがまれることがあります。そのような行動を「やらせない」ためにも、最初が肝心です。

下記のマンガでは、親は「今日だけね」と約束したつもりでいますが、お子さんには、そんなつもりはなかったのかもしれません。むしろ「この自動販売機ではジュースを買ってもらえる」という行動パターンを学んだ可能性があります。

お子さんが「交渉の余地がある」と知ってしまったがゆえに、話がこじれたのだと考えられます。

お子さんに行動をパターン化しやすい特徴があるのなら、2コマ目の場面で親が「最初が肝心」と思って、ジュースを買い与えない判断をしたほうがよかったわけです。「この行動が毎回パターンになったとしてもOKだと思えるか」をよく考えたほうがいいのですね。例えば、ジュースはダメだけれど、水やお茶ならばOKであれば、最初から「水やお茶にしようね」と約束すればいいのです。

もちろん、子どもによっては「今日はダメ」という交渉が通じる場合もあります。しかし行動パターンにこだわる子の場合、「今日はダメ」「お金がない」と言い聞かせても、納得しないことがあります。ものごとに一貫性や継続性、法則性を求める子もいるのです。

もしもマンガのように「この自動販売機の前を通ると、子どもがジュースを欲しがる」というパターンができてしまった場合、交渉の仕方を工夫するよりも、「そこを通らないようにする」という対策をとったほうがいいかもしれません。

大人も「オール・オア・ナッシング」で考える

CASE4では、子どもが電灯のスイッチでいたずらをする例を解説しました。いたずらをして、親から注意されるところまでが一種の遊びになってしまう。これも行動のパターン化です。


対策としてスイッチにカバーをつける方法を紹介しましたが、それも「交渉の余地をなくす」というやり方ですね。パターンを好む子も、運命のように「ダメだ」と感じたことについては、あきらめが早いです。

という意味で、子どもに絶対にやってほしくないことについては、最初から絶対にできない環境をつくってしまえばいいのです。

例えば、子どもが親の財布からお金を抜き取ってしまう問題があって、「やめなさい」と言っても繰り返してしまう。そのような問題を防ぐためには、最初から財布を鍵がかかる引き出しに入れておけばいいわけです。

自閉スペクトラムの特性がある子は「オール・オア・ナッシング」のような考え方をすることがあります。特定の行動パターンにこだわる。それ以外は受け付けない。ありかなしかの2択しかない。法則性にそのくらい強くこだわる子もいます。

そういうタイプの子とその都度交渉していたら、話がこじれることもあるでしょう。大人も「オール・オア・ナッシング」で考えて、「毎回このパターンでも許容する」か「最初からやらせない」のどちらかに絞って対応したほうがいいわけです。「最初が肝心」というのは、そういう話でもあります。

文/本田秀夫 マンガ/フクチマミ

『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)

本田秀夫 (著)、フクチマミ (マンガ)

2023/9/28

¥1,540

160ページ

ISBN:

978-4815619459

「なんで!?」がわかれば子育てがラクになる!
・こだわりが強い
・融通がきかない
・友達づくりが苦手
……
うちの子の不思議な言動がこれ1冊で丸わかり!

臨床経験30年以上の医師が指南!
●20ケースのマンガにあわせて具体的なサポート例を紹介

・臨機応変な対人関係が苦手
・自分の関心、ペースが最優先
そんな自閉スペクトラム症の子の「あるある」をマンガ紹介→「どうして?」と思ったら解説を読んで解決!

【構成案】
■プロローグ:「自閉スペクトラム症」の子どものフシギ

・発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)中心に事例を紹介
・こだわりが強い、臨機応変な対応が苦手、友達づくりが苦手
・ASDのコミュニケーションは理解されづらく、
「普通だったらわかるでしょ」がわからない

■20ケースのマンガにあわせて具体的なサポート例を紹介
※幼児期から小学生まで
Case1 何にでも手を出して、勝手に遊んでしまう
Case2 特定の子と一緒になると、いつもケンカになる
Case3 自分からは話しかけるのに、人の話は聞かない
Case4 いたずらして注意されると、むしろ調子に乗る
Case5 学校での生活に、いつまでたっても慣れない
Case6 園に行くとき、いつも同じ道を通りたがる
Case7 外出先の病院などで、ちゃんと挨拶しない
Case8 タンスに登って飛び降りるので、危ない
Case9 着替えや食事などの生活ルーチンが身につかない
Case10 ささいなことで、かんしゃくを起こす
Case11 偏食があって、なかなか変わらない
Case12 真冬でも、半袖・半ズボンを着ている
Case13 学校で教室移動中に、廊下を走り出す
Case14 褒められたのに、先生の腕をかんでしまった
Case15 大人に注意されると、腰砕けな答えを返す
Case16 文章の細かいところを気にしすぎる
Case17 質問されると、すぐに「わからない」と言う
Case18 話し方が変わっていて、同級生と打ち解けない
Case19 自分の意見を言わず、まわりに合わせてしまう
Case20 元気に学校に行っていたのに「突然不登校」に

■エピローグ

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