1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

子どもの学習動画視聴で今すぐやめるべき「字幕」「かわいいキャラクター」「リアルすぎる映像」。集中力を損ない逆効果、と全米トップ高校長が指摘

集英社オンライン / 2023年11月11日 12時1分

スマホは現代において、もはや欠かせない情報収集、インプットの最強ツールだ。スマホやタブレットは大人だけではなく、子どもの学習のために動画で勉強させたりすることにも使われている。しかし、その使い方を間違えるととんでもないことになるという…。『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

#1

マルチメディア時代のインプットとは

「速聴」以外にも、「聞く」インプットをより効率的にする方法がもう一つあります。

それは、「見る」を加えること。単に「聞く」だけではなく、ビジュアルも加えること。マルチメディアで情報を吸収すると、理解度が格段に上がることがわかっています。



スマホでのインプットの最大の利点は、このマルチメディアを簡単に利用できることです。

例えば、YouTubeの動画は、「聞く」に加えて「見る」、さらに、「読む」機能もついている。話し手の表情や音声にプラスして、補足的な画像やコメントも表示されるので、どこが大事なポイントなのかも非常にわかりやすい。

そうしたマルチメディアの環境の中では、私たちの理解度が格段に違ってきます。

記憶力や理解力は、マルチメディアからポジティブな影響を受けることが実証されており、スマホはその最善のツールだと言えます。

マルチメディアによるインプットが効果的であることは、最近では脳科学的に裏付けがなされています。わかりやすく解説しましょう。

私たちの脳の主要機能としておなじみの、「ワーキングメモリー」。長期や短期の記憶を現在の意識にホールドして、整理したり、組み合わせたり、なんらかの「コマンド」を意識下で実行する脳の働きのことです。

頭の中で、「123+37」という計算をする時は、このワーキングメモリーがフル稼働しています。それぞれの数字を意識して、足し算を実行する。そうやって頭を使うことができるのは、すべてワーキングメモリーのおかげです。

そして、このワーキングメモリーは、どんな人でも容量がかなり小さい。3つから5つくらいのものを意識にホールドするのが限界であるとされています。

ですから、その小さな容量をうまく使いこなすことが、効果的なインプットのために求められてきます。

では、どうすれば効果的なのでしょうか?

それは、外から入ってくる情報を、「見る」「聞く」などの違う種類のインプットに分散させることです。

思い出してください。授業で先生の話を理解しようとしても複雑でお手上げだったのに、黒板に図にしてくれた途端、すぐに吞み込め理解できた。そんな体験を誰しもが持っているのではないでしょうか。

「聞く」だけではワーキングメモリーがパンクしてしまうものの、「見る」も併用してインプットの負荷を分散させる。そうすることで、ワーキングメモリーをより効率的に使うことができます。

だから、「『読む』『聞く』『見る』のどれが最も効果的か」という問いも大事ですが、「どうやってそれらを混ぜた形でインプットができるか」という視点を持つことが大切なのです。

動画の習慣で避けるべきこと

しかしここで、要注意。マルチメディアのインプットなら、どんな形でも効果的であるというわけではありません。

それどころか逆効果になってしまうこともあるので、「読む」「聞く」「見る」を上手に混ぜ合わせることが重要になります。何でもかんでもゴチャ混ぜでは、思ったような効果は出ないのです。

例えば、字幕。

動画を見る時に、「聞く」「見る」だけでは心許ないので、字幕をオンにして動画の内容の取りこぼしを防ごうなどと思ったことはないでしょうか?

字幕を付ければ、「聞く」インプットに「読む」インプットも追加でき、聞き逃しても文字で追い直せるので理解度も上がるだろう……。そう考えるのも自然です。

しかしながら、実際にはそうではありません。動画視聴で音声に字幕を加えると、ワーキングメモリーの負荷を分散させられるどころか、字幕の情報量でオーバーフロー状態になりかねないのです。

例えば、パワポを使ったプレゼンテーションでは、資料画像に文字を入れすぎないようにと言われたりしますよね。それこそ、「何文字まで」と制限されることだってある。

それは、過度な書き文字によって、聞き手の注意力が文字の方に引かれてしまい、プレゼンの詳細が耳から入りにくくなるからです。うまく集中できなくなるわけです。

動画の字幕も同様に解釈できます。

例えば字幕付きの映画で、字幕に気を取られて登場人物の表情を見逃したり、その場の雰囲気や気持ちが理解できなかったと感じたことはないでしょうか?

字幕によって、動画のインプットが増え過ぎてしまい、情報の理解度そのものが落ちてしまう傾向があるのです。

特に、未知の分野を学んだり、新しい情報をゲットしたりする時には、ワーキングメモリーに負荷をかけてはいけません。ついつい良かれと思って字幕を付けて、余計な情報を増やしてしまわないように気をつけましょう。

リアルすぎる映像は逆効果

似たような点で、マルチメディアの映像コンテンツの制作者側や、子どもの教材を選ぶ親御さんに、ぜひ知っていただきたいことがあります。

良かれと思ってかわいいキャラクターなどを学習コンテンツに使っている制作者がいますが、むしろ逆効果だったりします。

内容と関連性がない場合、キャラクターに気を取られてしまって、理解度が落ちてしまう場合が多いのです。

だからといって、内容と画像が関連していれば「何でもOK」というわけでもありません。

例えば、小学生がカブトムシの生態を学習するとしましょう。幼虫が蛹になって成虫になる「変態」のプロセスを学んでもらいます。

そんな時、音声での内容説明とともに、非常にリアルな8Kで撮ったカブトムシの映像を流したとします。制作者の意図としては、「リアルなイメージを直接与えることで、学習効果が上がってほしい」。

しかし、実はこれも、逆効果。カブトムシのリアルな映像よりも、図式化したシンプルな画像を使う方が学習効果が高い、という研究結果があるのです。

図式化したシンプルな画像は、カブトムシの変態に焦点を置いて、その説明に重要な点を抜き出します。

一方、カブトムシ自体の8K映像では、変態自体とはまったく関係のないディテールが目に入ってきてしまいます。そのため変態の本質を理解すべき時に、「わあ、すごい色だな、すごく強そうだな」などとリアルさに圧倒されて、ワーキングメモリーの無駄遣いにつながりかねないのです。

要するに、不必要なリアルさが、学習の妨げになってしまう。内容に関連がないディテールが目に入ってしまい、大事なことが頭に残らなくなるということです。

以上、自分でインプットしたい内容の動画選びの際に、参考にしていただければ幸いです。無関係なキャラに釣られたり、無駄にリアル過ぎる動画はなるべく避けておくのが懸命です。


文/星 友啓 写真/Shutterstock

『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)

星 友啓 (著)

2023/10/13

¥891

216ページ

ISBN:

978-4022952370

「スマホはどんどん使いなさい!」
スマホをポジティブに使いこなす人ほど、
心の三大欲求が満たされていきます!

スマホは使い方次第。
長所を知ってアクティブに使えば、脳のニューロン回路の強化で、記憶力&集中力もアップします。
〈インプット〉に〈エンゲージメント〉、〈ウェルビーイング〉に〈モチベーション〉。
スマホの利点を最大活用するメソッドをご紹介。
世界の最新研究に基づくスマホ活用術のすべて!

(目次より)
【はじめに】
スマホをポジティブに捉えれば自分が変わる

【序章】天国か? 地獄か? スマホの現在地
問題視されるスマホの影響
エコーチェンバーが起きやすいスマホ
ウェルビーイングをもたらすスマホ
パッシブではなくアクティブなツール
スマホのネガティブキャンペーンの現在
スマホでできる脳を活かす習慣 etc.

【第1章】知られざるスマホのパフォーマンス
「スマホは怖い」は本当か
スマホのメンタル影響をメタ分析すれば
スマホで記憶力アップ
肥満対策や注意力アップにもつながる
SNSが孤独を呼ぶ? 孤独がSNSを呼ぶ?
スタンフォードの「スクリーンノム」研究誕生
「あなたは、スマホで何をしていますか」 etc.

【第2章】スマホ動画は「インプット」の無双の鍵
スマホは「読む」「聞く」「見る」の最強ツール
速読の達人が本当にしていること
人間の脳は読むのが苦手
ちょうどいい早送りの速度
マルチメディア時代のインプットとは
動画の習慣で避けるべきこと
「リトリーバル」という万能策 etc.

【第3章】スマホゲームは「エンゲージメント」の最強ツール
アクションゲームはやはりすごい
「21世紀スキル」アップの人気ゲーム
ゲームと学びの垣根が崩れてきた
子どもにはYouTubeよりもスマホゲームを
ゲームが育てる成長マインドセット
ボードゲームか? スマホゲームか?
「52分やって17分休憩」のススメ etc.

【第4章】スマホのSNSで本物の「ウェルビーイング」を手に入れる
SNSで発信するか、受信するか
不特定多数より仲間への発信
内発的なハマりと、外発的なハマりの大きな違い
やっかいな現代の「やる気」事情
心の三大欲求を満たしてくれるSNS
SNSの科学的ハピネス習慣
「感謝の科学」でできるスマホメンタル術 etc.

【第5章】持続可能なスマホの「モチベーション」
「スマホ依存」には医学的定義がない
アメリカでは「PSU」という呼び名も
「ゲーム依存」「スマホ依存」の9条件
幼児期のスマホは厳重注意
テクノロジーと距離を取る三つの方法
スマホが満たす「心の三大欲求」
スマホ時間の理想的な減らし方 etc.

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください