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WBC決勝の対米国戦で大谷翔平に「ゾーン」が降りてきたことは間違いない…スポーツ心理学が解明する先入観を覆して不可能を可能にする大谷の頭の中

集英社オンライン / 2023年11月14日 8時1分

今季は、日本人、およびアジア人初のメジャーリーグ本塁打王に輝いた大谷翔平選手。二刀流など今までの常識を覆してきた彼は、まるで違う惑星から来た宇宙人では?とも称されるが、大谷選手の思考パターンを読み解くことで私たちの人生を成功に導くヒントがいくつかあるようだ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問 児玉光雄氏の『「できない」を「できる」に変える 大谷翔平の思考法』(アスコム)より一部抜粋・再構成してお届けする。

イノベーションを「革新性」と「パフォーマンス」の2軸で考えてみる

2023年7月11日、この日シアトルマリナーズの本拠地Tモバイル・パークで開催されたオールスター戦で大谷選手は2番・DH で先発出場。ファン投票でア・リーグ最多の264万票を獲得し、圧倒的に注目を集める中、3年連続の出場を果たしました。



大谷選手がバッターボックスに立つと、なんと「シアトルに来て!」という大合唱が始まったのです。いくらオールスターゲームとはいえ、ホーム以外の選手にこれだけの声援が送られるのは、異例のことです。
オールスター前日の会見で、「大谷選手にとって二刀流の原動力とは?」という質問に対して、彼はこう語っています。

「ゲーム自体が好きですし、打つのも投げるのも好きなので、楽しんでまずはやるのが一番だと思います」(NHKNEWSWEB 2023・07・11付)

二刀流という、野球界にイノベーションをもたらした大谷選手を「革新性」と「パフォーマンス」の2軸で考えてみたのが、図表1です。この図表からイノベーションというのは「バックスクリーン直撃のホームラン」であることがすぐにわかります。

「方法論としての革新性」と「生み出したパフォーマンスの大きさ」のバランスが良くても、そのレベルによって「2べースヒット」や「ヒット」に留まることもあるのです。そして、生み出したパフォーマンスがいくら大きくても、革新性のレベルが低ければ、ファウルになります。同様に、革新性のレベルがいくら高くても、肝心のパフォーマンスが発揮できなければ、やはりファウルになってしまうのです。

二刀流という方法論がどれだけ革新性があっても、大谷選手がパフォーマンスを発揮できなければそれは「ファウル」に終わってしまいます。

一方、いくら打撃や投球のどちらかで凄いパフォーマンスが発揮できても、革新性という尺度で見れば低いため、やはりファウルになるのです。つまり、長いメジャーリーグの歴史の中で、ベーブ・ルース以外誰も達成できなかった偉業、「投手と打者の両面で高レベルのパフォーマンスを発揮している行為」が「バックスクリーン直撃ホームラン」であることは論を俟(ま)たないのです。

正解を探しながら、その過程で進化をする

未知の問題を解く目的は、正解にたどり着くことだけではありません。仮にたどり着けなかった場合も、その過程こそが人を進化させてくれるのです。このことについて大谷選手はこう語っています。

「正解はないと思うんですけど、人は正解を探しに行くんですよね。正解が欲しいのは、みんなも同じで。『これさえやっておけばいい』というのがあれば楽なんでしょうけど、たぶんそれは『ない』と思うので、正解を探しに行きながら、ピッチングも、バッティングもしていたら楽しいことがいっぱいありますからね」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』扶桑社)

大谷選手がスイングするバットの軌道の数はほぼ無限です。ボールとバットのコンタクトはとても繊細で、ほんの数ミリ違っただけでホームランになったり、平凡な外野フライになったりします。
同様に、大谷選手の投げるボールの軌道も無限に存在します。軌道がほんの数センチ違うだけで、そのボールは打者のバットの芯を外れてくれるわけです。

バッティングにもピッチングにも、確実な正解は存在しないのです。そうなれば、ボールを投げる作業、あるいはバットを振るプロセスを繰り返し試してみるしかありません。つまり、大谷選手にとって、本番は普段の練習の成果を試す実験場なのです。
20世紀に評価されたのは、既存の知識を駆使して一つしかない解答を出せる人間でした。

一方、21世紀型のニュータイプの人間は、常に自分にとっての理想像を鮮明に脳裏に描きながら、目の前の現実の自分と比較して、そのギャップを埋めるために行動を起こし、そのプロセスで徐々に自分を進化させていく人間と定義できます。

終着点に到達することを最優先するオールドタイプの人間が活躍する時代はすでに終焉を迎えています。これからの時代は、到達がほぼ不可能な理想像を描き、その過程で進化の手掛かりを求め続ける、大谷選手のような思考法を持つ人間だけが成功できるのです。

WBCで大谷選手が経験した「ゾーン」の正体

2023年3月22日、この日WBC の決勝戦の対アメリカ戦、大谷選手が最終回に投じた15球は圧巻でした。
3-2と1点リードで迎えた9回、先頭バッターのマクニール選手を四球で一塁に歩かせます。次の1番バッター、ベッツ選手を併殺打に討ち取り、2死走者なし。
そして、迎えるバッターはエンゼルスの同僚で、MLB を代表するスーパースター、マイク・トラウト選手。
初球に投じた大きく横に曲がるスイーパーはボール。2球目以降は空振りとボールを交互に繰り返し、3ボール2ストライク。そして運命の6球目、87.2マイルのスイーパーはトラウト選手のバットをすり抜けていきました。
この瞬間、大谷選手は雄叫びをあげながら、グラブと帽子を放り投げて歓喜の輪の中に入っていったのです。この大会で、大谷選手は見事MVPに輝きました。

大谷選手をずっとサポートしてきた水原一平通訳は、試合後「翔平があんなに楽しく野球しているのを初めて見た」と語りました。まるで少年に戻ったような大谷選手がそこにいたのです。試合後、大谷選手はこう語っています。

「(優勝は)間違いなく今までの中でベストの瞬間だと思う。(投手として)ある程度プランは立てていったが、あとはバッターとピッチャーの間合いの中で、勘で球種を選択して投げた。第1回大会からいろいろな(日本の)先輩たちが素晴らしいゲームをして、実際に僕らがそれを見て、『ここ(WBC)でやりたい』『自分もこういうふうになりたい』という気持ちにさせてもらったのが一番大きい。今回の優勝で、そういう子どもが増えたら素晴らしいこと」(『侍ジャパンWBC優勝記念号』ベースボール・マガジン社)

ゾーンを引き寄せるのは目標の明確さ

WBCの決勝の対米国戦で、大谷選手に「ゾーン」が降りてきたことは間違いありません。ゾーンとは、「最高のパフォーマンスを発揮する最高の心理状態」を指します。
「ゾーン」は、スポーツ心理学におけるもっとも重要な研究テーマの一つです。もしもその選手が「ゾーン」に入ったら、以下のような兆候が表れることが、数多くのアスリートのアンケート結果により判明しています。

1.これから起こることが鮮明に予測できた
2.身体が無意識に動き、その結果は事前にイメージした通りになる
3.雲の上に乗ったようなフワフワとした感覚に襲われる
4.周囲の雑音をまったく感じることがなかった
5.時間の経過が驚くほど短く感じられた


この感覚はスポーツ選手だけが体験するわけではありません。さまざまな業種のトップ達にも「ゾーン」は訪れます。一流のパイロットは、凄まじい荒天においても、恐怖を感じることなく完璧なフライトを実現します。あるいは、一流の外科医なら、難度の高い手術であっても、手術前のイメージ通りにテキパキと作業を進めることができるのです。

ゾーンを引き寄せる要素は、「目標の明確さ」です。明確な目標を持って平常心と集中力を維持すれば、突然「ゾーン」は訪れるのです。さらにいえば、目標設定を上げて、やや難易度の高いことに挑んでいるときに「ゾーン」が訪れます。言い換えれば、自分が快感に感じる「コンフォート(快適)領域」では「ゾーン」は降りてこないのです。

図表2に、ゾーンを含む8領域を示します。横軸はスキルの度合であり、縦軸はチャレンジの度合を示します。高いレベルのスキルとチャレンジが噛み合ったときにゾーンは訪れるのです。その両端には「覚醒」と「コントロール」という好ましい心理状態が現れます。
そして、バランスが崩れた領域にチャレンジし過ぎる場合には「不安」と「心配」、チャレンジが不足し過ぎる場合には「くつろぎ」と「退屈」が現れるのです。
普段から「平常心」と「高い目標」という二つの要素を実現することにより、突然あなたにも大谷選手のような「ゾーン」が訪れるのです。

『「できない」を「できる」に変える 大谷翔平の思考法』(アスコム)

児玉 光雄 (著)

2023/10/21

1,397円(税込)

新書 ‏ : ‎ 216ページ

ISBN:

4776213230

大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法を完全凝縮。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。
大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
つまり、「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。それが、世界で活躍し続ける思考法の所以なのです。
「大きな夢は小さな目標の総量である」
「1日単位で完全燃焼!」の覚悟を持って自分の目の前にある「小さな行動の完遂」や
「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素なのです。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための、「ポジティブ思考」の神髄をあなたに。
【目次】
大谷翔平選手の成功方程式を読み解く
第1章 大谷翔平選手のような一握りの超一流の人たちの共通点
第2章 大谷翔平選手に学ぶ夢をかなえる目標設定理論
第3章 大谷翔平選手の成功思考の秘訣を教えよう
第4章 大谷翔平選手の直感力が彼を偉大なメジャーリーガーに仕立てた
第5章 大谷翔平選手が教えてくれる仕事で成果を上げる秘訣

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