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専門家が指摘する「2類相当に固執したことで高齢者の死亡者が増加した可能性」…新型コロナにおける厚労省の犯した大罪とは

集英社オンライン / 2023年11月30日 8時1分

新型コロナウイルスのオミクロン株による致死率は世界中どこでも同じだったが、死者数は日本で目立って多かった。それには理由がある。厚生労働省や専門家会議が新型コロナの「2類相当」を維持することに固執したからだ。そのためにおこった廃用症候群とは。『厚生労働省の大罪-コロナ政策を迷走させた医系技官の罪と罰』 (中公新書ラクレ)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

新型コロナ対策で厚生労働省は対応を誤った

新型コロナ対策で厚生労働省は対応を誤った。

私は、遅くともオミクロン株が主流になった2022年の1月か2月には、新型コロナを季節性インフルエンザと同じような扱いにすべきだったと考えている。

なぜなら、新型コロナがデルタ株からオミクロン株に置き換わって以降、世界的にみて致死率が低下し、コロナ肺炎が直接の死因というよりは、もともと要介護状態か基礎疾患があった高齢者が亡くなるケースが急増したからだ。



そういった高齢者は、地域の医療・介護システムの中で治療・ケアをしたほうが命は助かり要介護度が上がることも少ない。

ところが、感染症法上の2類相当となっていた間、高齢者や基礎疾患のある人は、保健所を介して大病院へ送られるという特殊なシステムの中で隔離され、地域の医療・介護システムの中でのケアができなくなったケースが多発した。

高齢者施設のコロナ陽性者が施設に留め置かれ、入院できなかったから亡くなったということもあるだろうが、入院して安静を強いられ弱って亡くなった高齢者も少なくないはずだ。

世界各国が、マスクの着用義務や行動制限の撤廃に動いたのは、人命より経済を優先したからではなく、オミクロン株になって致死率が下がったからだ。

民主主義社会では、政府が国民の行動制限を行うにはそれ相応の理由が必要であり、その期間は短いに越したことはない。

イギリス・オックスフォード大学のデータベース「アワ・ワールド・イン・データ(Our World in Data)」を用いて計算してみたところ、デルタ株以前は5%程度の日もあった新型コロナの致死率は2022年1月以降0.1%程度、あるいはそれ以下に急低下した。

1000人に1人が亡くなるというのは確かに重大かもしれないが、季節性のインフルエンザでも60歳以上の致死率は0.55%だ。

60歳未満では新型コロナも季節性インフルエンザも致死率0.01%というデータもあり、致死率からいっても「2類相当」に位置付ける意義はなくなっていたわけだ。

2類相当の継続が長引けば長引くほど、国民、とりわけ高齢者にとっては弊害の方が大きい

オミクロン株になってから、日本の死者数が目立って多かったのは、人口当たりの感染者の総数自体が多く高齢者率が突出して高いからで、致死率は世界中どこでも同じだった。

新型コロナはウイルスの種類によって感染率には人種差があり、デルタ株まではヨーロッパ、米国、南米で感染率が高かった。

そして、なぜか、オミクロン株は最初は欧米で広がった後、日本、韓国、中国などの東アジアと、オーストラリア、ニュージーランドなどオセアニアで感染者が増え、中でも突出して高齢化率の高い日本で多くの命が奪われる結果となった。

実は、致死率が季節性インフルエンザと同程度なら、2類相当の継続が長引けば長引くほど、国民、とりわけ高齢者にとっては弊害の方が大きい。

何より問題なのは、「2類相当」となっている限り、保健所と急性期の大病院が感染者の対応の中心となるため、それ以外の医療・介護関係者は積極的に介入できないことだ。

2022年夏の第7波では、厚生労働省は保健所や医療機関の逼迫緩和策として、保健所への届け出を高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクが高い人たちだけに限定したが、高齢の患者の多くは、従来通り保健所があっせんして急性期病院へ入院することとなった。

入院して安静を強いられることとなった高齢者は、十分なリハビリを受けることもできず、いっきに廃用症候群が進み、要介護度が上がり最悪の場合は寝たきりになってしまう。

廃用症候群とは、筋肉・骨組織の萎縮、心肺機能や意欲の低下など、過度な安静で活動性が低下したことによって心身に不都合な状態を来たすことだ。

高齢者の場合は寝たきりの原因にもなる。たとえ、コロナ感染後に自宅に居続けられたとしても、訪問介護サービスやデイサービスなどの介護サービスは実質的に利用できず、やはり状態は悪化した。

新型コロナ新規感染者数推移。『厚生労働省の大罪-コロナ政策を迷走させた医系技官の罪と罰』より

要介護状態や基礎疾患のあった高齢者を中心に死亡者がいっきに増えた可能性

「2類相当」が維持された状態では、介護従事者が濃厚接触者になったら他の介護者の介護ができなくなってしまうので、介護施設の一部の経営者は、ホームヘルパーなどに対して、コロナに感染した高齢者の自宅への訪問を控えるように指示せざるを得なかった。

十分なケアが受けられなくなったこともあってオミクロン株では、コロナの重症化というよりは、要介護状態や基礎疾患のあった高齢者を中心に死亡者がいっきに増えた可能性がある。

今後のためにもきちんと検証する必要があるが、厚生労働省や専門家会議が「2類相当」を維持することに固執したために、廃用症候群が進んで弱り命を落とした人も少なくなかったのではないか。

文/上 昌広 写真/Shutterstock

『厚生労働省の大罪-コロナ政策を迷走させた医系技官の罪と罰』 (中公新書ラクレ)

上 昌広 (著)

2023/10/10

¥946

240ページ

ISBN:

978-4121508027

総理が命じても必死でPCR検査を抑制。執拗に感染者のプライベートを詮索。世界の潮流に背を向け、エアロゾル感染は認めない……。いまとなっては、非科学的としか思えないあの不可解な政策の数々はなんだったのか。だいたい、あの莫大なコロナ関連予算はどこに消えたのか。新型コロナは、日本の厚生行政とムラ社会である医療界が抱えてきた様々な問題を炙り出した。医療界きってのご意見番が、日本の厚生行政に直言する!

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