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あの両面宿儺も登場!? まごうことなきホンモノの呪物を集めた「祝祭の呪物展」が東京・日本橋で開催中!

集英社オンライン / 2022年5月24日 17時1分

日本橋のアートホテル・BnA_WALLにて、この世に実在するホンモノの呪物を集めたコレクション展「祝祭の呪物展」が開催中だ。なぜ呪物を展示するのか。そもそも呪物とは一体どのようなものなのか。うっかり見に行って、祟られたりしないのか。企画者とコレクターに、その真意を直撃した。

集英社オンラインで呪物というと、「呪術廻戦ネタかな」と思われそうですが、違うんです……!
本日ご紹介する「祝祭の呪物展」は、オカルトコレクターの田中俊行さんと、怪奇ユニット・都市ボーイズのはやせすひろさんが蒐集した呪物を、間近で眺めることのできる世にも奇妙な展示会。
5月29日まで、東京・日本橋のアートホテル「BnA_WALL」にて絶賛開催中です。東京に先駆けて行われた大阪での展示会では、約4,000人が来場。連日、入場規制がかかるほどの大盛況だったそうです。



それにしても、本来は忌むべきものである呪物を、なぜ展示しようと考えたのでしょうか。コレクターのお二人と、展示会の企画運営を担ったアシタノホラー株式会社の片山さん、今回の展示会に企画段階から深く携わった文様作家で怪談蒐集家のApsuShuseiさんにお話を伺いました。

「呪い」が「祈り」へと転じるような展示会を

——そもそもどういった経緯で、呪物を展示することになったのでしょうか?

片山 順を追ってお話しますね。まず私たちアシタノホラー株式会社では、デザインと企画の力で、ホラーの魅力とアート&ポップカルチャーをつなぐことを目指した「アシタノホラー展」というイベントを数年前から手がけていて。2020年の開催時に、田中さんが所有する「おばあちゃんのデスマスク」という呪物を展示させていただいたんです。

——実物を拝見させていただきましたが、なんとも不気味でした。

取り壊された古いお屋敷から見つかったというデスマスク。目を瞑っているはずなのに、なぜか「目が合ってしまう」人がいるという(写真は大阪会場で撮影。以下同)

片山 けれど展示期間中に何度も足を運んでくれたお客さまのなかに「最初に見たときよりも、おばあちゃんの表情がやさしくなったね」と言ってくださる方がいて。確かに、なんというか、多くの人に「見られる」ことで、デスマスクのネガティブな部分が薄まったような気がしたんです。その出来事をきっかけに、展示を通じて、呪物そのものが変化していくような、インタラクティブな体験を提供できないだろうかと考えるようになりました。それを形にしたのが、今回の「祝祭の呪物展」です。

——見る人によって呪物の呪いが解かれていくようなイメージでしょうか。

Apsu Shusei そうですね。それにそもそも「呪い」って、「祈り」と区別がつかないようなところがありますよね。実際に、世界各地で伝統的に呪物と呼ばれてきたものの多くは、「誰かを呪うため」ではなく、「誰かの願いを叶えるため」につくられたものが少なくありません。

クマントーン。タイに伝わるお守りの一種で、胎児や赤子の遺灰に、墓地の土やハーブなどを混ぜてつくられる。所有者の願いを叶えてくれるという

オラクル。コートジボワールのセヌフォ族が、精霊を憑依させるために用いる人形。神のお告げをもたらす人形として神聖視されている

Apsu Shusei ところが、現代で呪物というと、みなさんが想像するのは「かつての所有者は、こんな不幸な目に遭って」といったエピソードとあわせて来歴が語られる、いわゆる“曰く付きの品物”です。その違い自体もすごく興味深いのですが、そうした性格の異なる2種類の呪物を同じ空間に集めることで、私たちが持っている呪物に対するイメージを揺さぶろうというのも、今回の展示の狙いの一つです。

集めているというより、呪物同士が引き寄せ合っているのかも

——コレクターのお二人は、そもそもなぜ呪物の蒐集をはじめたのでしょうか?

田中 オカルトコレクターを名乗っているうちに、自然と呪物が集まってきた感じなのですが、最近はそれがちょっと加速している気もしていて。僕がお気に入りの呪物に、チャーミーという人形がいるのですが、こいつが呼び寄せているのかなと。

——チャーミーには、どんな由来があるのですか?

田中 元々は千葉の介護施設にいた人形なんですけどね。可愛がると、なぜかその入居者さんが死んじゃうっていうシンプルに怖い由来があります。でも、最近は展示とかでもチャーミーはめちゃくちゃ可愛がられていて。ファンからチャーミーのための服とか髪飾りが届いたりするんです。そういう人がみんな死んじゃうかというと、そんなことはもちろんなくて。さっき片山さんも言っていましたが、展示されることで悪いものが薄れていっているのかもしれないですね。僕も可愛がりまくってますよ。今まさにZoomをつないでいるこの部屋だって、チャーミーのための部屋ですからね。

シンプルに怖いチャーミーだが、今や田中さんにとって「相棒」のような存在でもある

——愛情がすさまじい……! はやせさんは、どういった経緯で呪物に目覚めたのですか?

はやせ 最初は本当にたまたまです。取材でミャンマーを訪れたときに宿泊したホテルのオーナーが、「おれはチン族という部族の出身で、代々続く魔術師の家系なんだ」というようなことを言っていて。その証拠として、儀式で用いるネックレスを見せてくれたんです。それを見た瞬間に「これを身につけたら、なんだか強くなれる気がする!」と直感して。はじめは「売り物じゃないから」と突っぱねられてしまったのですが、3,000円を渡したら普通に売ってくれて。本当はミャンマーから持ち出すのは禁じられているらしいんですけどね。空港でも見知らぬ女性から「そんなものを国の外に出したらダメだ」と止められました。でも、その人も2,000円を渡したら「OK」って。それで日本に持ち帰ってきて、しばらくはずっと身につけていました。

——それで、何か変化はありましたか……?

はやせ 特に変化はありませんでした。強いて言うなら、新大久保でホストのお兄さんに因縁をつけられたくらいかな。でも、呪物に興味を持つきっかけにはなりましたね。気づいたら自然と蒐集をはじめていました。今はもうコレクションというよりも、「みんなに怖がられていて可哀想だから、ウチで引き取ってやろう」みたいな感覚です。だから毎朝、結構忙しいんですよ。一つひとつにモーニングルーティンがあって、水やお線香を供えたり、好きな音楽を聴かせてあげたりしないといけないから。

はやせさんが、廃屋で見つけた人形。柱に釘で打ち付けてあったという。着物に包まれた手足は、とある誘拐事件を報じる新聞記事でできているそうだ

その木札の裏面は、絶対に見てはならない

——展示の趣旨からはズレてしまうのかもしれないですが、今回のなかで「これは本当にヤバい」という呪物はありますか?

Apsu Shusei どれも本当はヤバいものなのですが、安全に観ていただけるように展示方法を工夫したものはいくつかありますね。はやせさんの呪いの木札とか……。

はやせ あの木札は裏面を見ると危ないんですよ。霊が見えるようになったり、お腹に海外の寄生虫が湧いたり、とにかくよくないことが起きる。ぼくも裏面を見た当日に、雨のなか全身血まみれで土下座する男の霊を見ました。だから、裏面は見れないように展示してもらっています。

はやせさんも「詳細は語りたくない」という呪いの木札

——個人的に怖かったのは「百年前の呪いの釘」です。シンプルゆえにゾッとするものがありました。

はやせ あの釘は岡山県のとある神社の神主さんから譲ってもらったもので。実際に100年以上前に、丑の刻参りで使われていたものらしいです。丑の刻参りって、主に女性が使う呪法だとされていて。それもあって、女性の方があの釘に触れると、耳元で「カンカン」と釘を打つ音が聞こえるそうです。今回は、基本的に呪物に触れることはNGになっているので、ルールを守って展示を楽しんでもらえればと思います。

ただの錆びた釘に見えるが、正真正銘の呪いの釘だ

田中 こうやって話していると、なんだかとても危ない展示をしている気がしてくるね。

Apsu Shusei いやいや、でも昔から「呪われている」とされた人形が、美術館や展示館に収蔵された途端に悪さをしなくなるというのは、よくある話じゃないですか。やっぱりみんなで見ることで、何かが「薄まる」んだと思うんですよ。今回の展示はすでに大阪で約4,000人が観ていますから、東京会場にお越しの方は、その点は多少なりとも安心かと思います。

飛騨高山の仏師が「魂を入れた」両面宿儺の彫像も!

——東京と大阪では、展示内容も若干異なるそうですね。

片山 東京会場の方がスペースにゆとりがあるので、シンプルに展示できる呪物の数が増えました。たとえば、はやせさんのコレクションの一つで両面宿儺の仏像も、東京会場が初展示となります。

——両面宿儺というと、呪術廻戦にも登場するあの両面宿儺ですか? 実際に仏像が残っているとは知りませんでした。

はやせ 岐阜県の飛騨高山あたりでは、両面宿儺は信仰の対象ですからね。今もあのあたりには180年の歴史を持つ彫刻家集団があって、彼らが本気で仏像をつくるときには、1週間不眠で槌と鑿を振るい続けるそうです。いわく、七日七晩かけて、ようやく仏像に魂が入るんだとか。霊感のない僕には判断不能なのですが、今回展示する両面宿儺にはしっかりと魂が入っているらしいですよ。

——そんな貴重なものが見られるとは……! まさにこの展示でしか見られない代物ですね。

片山 この展示ならではということでいうと、呪物をモチーフにしたオリジナルのグッズも展開しているので、そちらも合わせてお楽しみいただければと思います。呪物たちとともに、みなさんをお待ちしています!

呪物をモチーフにした「じゅぶぐるみ」も販売中!

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