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「東大は進学校や金持ちだけのものじゃない」普通の高校から東大合格した学生によるサークル「UTFR」叩き上げ東大生の強みとは

集英社オンライン / 2023年11月26日 12時1分

日本最難関の国立大学、東京大学。開成や灘といった超進学校出身の学生が多く、非進学校と呼ばれる一般的な高校から進学する人は多くない。そんななか、東大合格者がほぼ輩出されない高校から東大に進学した現役生による、自身と同じような境遇の中高生・受験生を支援する「UTFR(University of Tokyo Frontier Runners)非進学校出身東大生サークル」という団体がある。同団体の二代目代表・神田直樹さん、現代表の清水大志さんに話を聞いた。(前後編の前編)

#2

非進学校出身の東大生の集まり「UTFR」

──まず、UTFRとはどのような団体なのか教えてください。

清水大志さん(以下、清水) UTFR(University of Tokyo Frontier Runners)とは、非進学校出身の東大生が集まる団体です。入学時にあまり知り合いがいない状況を経験した人たちのためのコミュニティですね。その上で、非進学校から東大を目指している境遇の高校生に対して、教育支援を行っています。



地方の高校への訪問活動や、合格体験記の販売を行ったり。合格体験記は、年に2回ある東大の文化祭をはじめ、オンラインでも販売しています。

UTFR現代表の清水大志さん。代表は清水さんで5代目となる

──UTFRが発足したきっかけは?

神田直樹さん(以下、神田) UTFRは、もともとは非進学校出身の東大生のための友達づくりの場でした。毎年、開成や灘、筑駒レベルの高校からは一気に100人くらいずつが東大に入学してきます。そのため、入学当初から友達や知り合いがいたりして、大学や講義の情報などを容易く得られるのですが、非進学校出身だとそうはいきません。

そこから、入学のタイミングで高校同期がいないのがとても寂しいな、と感じた人たちが集まったのがUTFRです。もともとは内向きのサークルだったのですが、人数が増えるにつれて「何かしたほうがいいよね」ということになり、大学受験の苦労をまとめて本にして、学園祭で「非進学校出身者の合格体験記」として売り始めました。

UTFR2代目代表の神田直樹さん。現在は国語に特化した東大生の個別指導「ヨミサ マ。」を運営

──実際に合格体験記を販売されて、反響はいかがでしたか?

神田 それがすごかったんです。600部ほど刷りましたが、「全部は売れないだろう」と思っていました。でも、予想に反して飛ぶように売れてしまい、あっという間に完売しました。紙で買えなかった人には急遽、電子版のダウンロード販売もしました。内容に共感してくれた人も多くいましたし、なかには「うちの高校に講演に来てください」という教師の方からの依頼もあるほどでした。

その後、こうした活動を本格化させることになり、合格体験記の販売以外にも沖縄・石垣島の訪問や、小学館さんとタッグを組んで『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』という書籍を出版したり、さまざまな活動を行うようになりました。

清水 この本を読んで、東大を目指したいと思って勉強して、実際に非進学校から東大に入学した人もいますね。その人は現在、UTFRで一緒に活動しています。

ふたりが東大に入るまでの高校時代は?

──おふたりの経歴について教えてください。

神田 私は中学のころ、ドイツの日本人学校に入ったのですが、環境になじめず、通信制高校に籍だけ置いていたんです。4年間自宅での勉強を続けて、一浪して東大文科I類に合格しました。もちろん入学当初は同じような境遇の人は誰ひとりいませんでしたね。入学後はUTFRの立ち上げに関わりました。
卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーに1年勤務し、現在は独立して会社経営をしています。

清水 自分は群馬出身で、勉強以外のことにもチャレンジしてみたいと思い、普通の私立高校に入学しました。出身校は東大入学者がまったく出ないというレベルですが、自分は高校入試のときにまさかの首席だったこと、そして模試でも上位に入れていたこともあって、自分に自信を持って受験勉強をがんばることができて理科Ⅰ類に合格できました。

東大の駒場祭で出店するUTFRのメンバーたち

──おふたりともまったく異なるバックグラウンドですね。UTFRでは非進学校の定義をどのように定めているのでしょうか?

清水 あくまで目安ですが、いわゆる1年に東大合格者が1人も出ない高校の出身者を中心に想定しています。自分たちが大事にしているのは「孤独性」であり、東大を目指すにあたって孤独を感じる環境だったかどうかを重視しているので、定義は場合によりけり、という感じでもあります。

また、現役だけでなく、進学校から浪人して入学した場合、高校の同級生が先輩になっていることも多くあります。その際に履修や部活、サークルなどの情報が得やすくなるので、すごくうらやましかったのを覚えています。なので、出身高校の関係で入学後に情報弱者になり得るかどうかも、定義の目安の1つになると思いますね。

──確かに、入学当初から大学生活を謳歌するための情報戦は始まっていますよね。


清水 そうですね。自分も入学当初は全然情報を得られず、履修の取り方とか過去問の入手方法 などががわかりませんでした。またサークル選びの情報も得られなかったこともあり、スタート ダッシュが出遅れた感じが強くありましたね。入学時に友達がいない、情報が入らないのは大学生活を送る上で死活問題です。

駒場祭で販売される、非進学校出身者による合格体験記

進学校と非進学校の間に存在する、圧倒的な格差

──非進学校から東大に入って、大きく感じたギャップなどはありましたか?

神田 進学校と非進学校では、学力だけでなく精神性や文化資本的な部分も大きく異なります。進学校の人たちって東大を目指すにあたっての覚悟や意思決定をとくに必要としていないのです。普通に生活をしているなかで、東大が選択肢に持ち上がるような教育環境や家庭で過ごしている人が大半だから。

ですが、非進学校出身者は「東大に行きたい」とは普通思いません。なので、東大を目指すにあたって、僕らに比べて大きな覚悟や意思決定がない場合が多いかと思います。そのあたりが根本的に構造として異なるなというのは感 じましたね。

また、東大に入って「すごいな」と思ったのが、進学校出身者は生まれてこのかた、大学進学者ばかりの中で生きているということでした。日本では高卒者のおよそ半分が進学せず就職するのですが、それを統計上の知識としてはわかっていても、実感のない東大生も多いと思います。

──そうした格差は埋められるものなのでしょうか?

神田 難しいと思いますね。僕の場合は高校生活や部活など、青春のすべてを投げ捨てて東大受験に集中しなければなりませんでした。ですが、進学校出身の東大生は勉強以外の才能がある人も多く、ピアノやフランス語、海外留学などいろんなことをしながら普通に東大に入学してくる人も珍しくありません。そもそもの文化資本の違いを感じることもよくありますね。

また、卒業後のキャリアにも大きな差が出ると思います。私たちが高校のころ、頭のいい職業といえば、弁護士や医者、官僚くらいしか思いつきませんでした。ですが、進学校出身者は優秀な先輩も多いので、コンサルタントとか起業家とか、さまざまなキャリアの選択肢を知っているんですよ。こうした差は人生単位で影響を及ぼしたり、将来の道筋を大きく変えたりすると思います。

UTFRのメンバーたち。中央にいるのが神田さん

──では逆に、非進学校出身者の東大生にはどのような強みがあると思われますか?

神田 そうですね。UTFRのメンバーは、高校のころに何らかの強い意思決定を行っています。人生のあるタイミングで「東大を目指そう」という目的を持ち、孤独に負けずに自分が信じるものを貫き通し、自らの道を歩んできた経験を持つ人の集まりだと思っています。

UTFRの「F」はフロンティアという単語なのですが、まさにUTFRのメンバーは自分の設定した目標のために、最前線を乗り越えてきた人たちです。確固たる意思を持って未来やキャリアを切り拓いていく力があると思いますね。これが非進学校出身者の最大の強みだと思います。

清水 そうですね。自分も東大を目指すとなったときにすごく悩みましたし、東大を目指すということ自体恥ずかしいと思うこともありました。ですが、孤独に打ち勝ち「東大へ行くぞ」と覚悟を決めることができたからこそ、今の自分があるんだなという誇りを抱くことができています。

取材・文/福井求

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