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100円が1万円に化けることもある中古100円CDの魅力…1万枚超を収集するDJが教える中古CD市場の次なるブームは…

集英社オンライン / 2023年11月25日 16時1分

新作コーナーには目もくれず、“100円CDコーナー”で一心不乱にdigり続ける人がいる。人々の記憶のなかに埋もれ、忘れ去られた名盤を発掘する、その人の名はデラさん。“King of 100円CD”の異名を持つDJであり、X(旧Twitter)で100円CD愛を叫ぶ彼が中古CD市場の今とその魅力について語る!

GEOの買取終了は、CD衰退の象徴的な出来事だった

1970~80年代に日本で流行ったシティポップのリバイバルブームにより、アナログレコードの人気が高まりつつある現在。リユースショップでは、国籍問わず多くの人が中古レコードコーナーを漁る光景をよく目にするが、一方で閑古鳥が鳴いているのは中古CDコーナー。



事実、CD市場は不調である。1998年に4億枚以上の生産数を誇ってピークを迎えたCDは、2022年には1億枚程度に減少。今やアナログレコードに生産量を抜かれており、衰退の一途をたどっている。

CD生産数の減少に伴って、中古CD市場も縮小傾向にあるとデラさんは語る。

「2000年代までは、まだまだ中古CD市場も盛んで、今よりも品揃えが豊富でした。しかし、現在は一部のプレミア化している作品を除き、中古CD全体の価格は低めを推移。2022年9月、大手レンタルビデオ店『GEO』で買取が終了したのは、CD衰退の象徴的な出来事でしたね」

「都内のリユースショップによく出没する」と話すデラさん

衰退する市場で、急激に価値が高まり始めたものが…

低価格のCDの行き着く先が、リユースショップにある“100円CDコーナー”。ここにはメジャー歌手からマイナーアイドルまでアーティストを問わず、幅広いジャンルの中古CDが100円(+税)という安さで大量に陳列している。

名盤かそうでないかを問わず、玉石混交の状態。そんな100円CDコーナーには、思わぬ価格がつくものも紛れているという。

「たとえば子ども向けのダンス教材のプロデュースを手がけた児童舞踊のパイオニア・城野賢一&清子のCDなどは、100円コーナーで見かけたものが1万円超で取り引きされているものも。これはぼくがXで猛プッシュしていた作品群なので、実質的には自分の責任という可能性も捨てきれないのですが(笑)、このほかにも何かの拍子で価格が上がってしまったCDはたくさんあります。

以前なら100円で買えた中古CDがどんどん値上がりしているように、今後価値が高まる可能性のあるCDが100円CDコーナーにはまだまだ眠っているんです」

なかでも現在、その価値が急激に高まり始めたものがあるらしい。

「それが8センチCDです。これは80年代末期から90年代後期にかけて、10年ほどしかもたなかったメディアでして、アルバムサイズのCDに比べて流通量が少ない。縦に長い形状なのですが、ジャケットの材質が基本的には紙なので汚れやすく、ケースの下半分が元々折れる設計になっていて壊れやすいといった事情もあり、ボロボロな状態で見つかることも多い。

なので、状態が良好なものって、実はかなり貴重なんです! まだ100円で買えるものも多いですが、ジワジワと200~300円台のものも増えてきました」

綺麗な8センチCDは将来的にいい値がつく可能性も?

音楽サブスクリプション全盛の現代では、見たこともない人もいるだろう8センチCDだが、自宅の物置にひっそりと保管したままの人も多いのではないか。リユースショップに持っていくと、実は高値がつく……という可能性も0ではないはずだ。

100円CDマニア自慢のコレクションはくせ者ぞろい!

「基本的にジャケ買い。月に50~100枚は買っている」と語る生粋の100円CDマニアであるデラさん。

幼少期から兄の影響でヒップホップやR&B、ハウスといったジャンルの虜に。現在は都内でダンスミュージックやイージーリスニング系のジャンルをメインに収集しており、特に1990年代に発売されたCDが好みだという。

「CD産業全盛期の1990年代って小室ファミリーやビーイング系が台頭している一方、実験的な志向やイロモノなコンセプトのCDも多かった。大手資本や宣伝に恵まれず、時代の隅に追いやられたCDも山のようにあり闇鍋状態(笑)。

そしてサブスクの影響もあってか、有名アーティストの名盤も安く買うことができるときがありますね」

取材前にも中古CDショップに行き、複数枚買ってきていた

デラさんが集めたコレクションには、隠れた名盤やサブスクにはない傑作が満載。中身も攻めたサウンドになっている。

「たとえば1993年に松田聖子が出したアルバム『DIAMOND EXPRESSION』は、ヒット曲『大切なあなた』が入っているものの、歌謡曲っぽさは薄れ、ハウスやエレクトロミュージックの面を強めた作風になっていて興味深い。

また1996年に行われた『第51回国民体育大会』の開・閉会式の音楽は、ジブリ音楽でおなじみの久石譲が手がけているのですが、なんと曲調がテクノの曲も! 鋭利なサウンドは、今聴いても色あせませんよ」

有名アーティストやクセの強いCDがラインナップ!

そのほかのコレクションもデラさんは紹介してくれたが、そのラインナップがまた実に個性的だ。

たとえば、「イメージ・アップ演出のための効果音楽集」、「集中力アップ」、「プラス思考」といったCD群は、調子を整えたり、気分を盛り上げたりするために聴くジャンルだそうだが、ジャケットからはサウンドの方向性がまったく読めない。

「ネコが聴くためのCD」ならまだ優しい音色が響き渡るといったイメージが湧くが、「田中さんのためのBGM」となると見当もつかない……。

田中さんのため、というがどんなサウンドなのかわからない……

そんなぱっと見で判断できないCDが多いからこそ、100円CD収集はやめられないという。

「一見、わけのわからないようなコンセプトでも、聴き応えのある本格的なサウンドを鳴らすCDは結構多いんです。個人的にはジャケ写が“かっこよすぎない”と一層よさげ。奇抜なパッケージのほうが、購入意欲が増して、どんな音か確かめたくなるんですよ。自分はクラブでDJ活動もしているので、現場でどんなミックスとしてプレイするか、楽しみでもあります」

「自宅に何枚あるかわからない」、掘り出し物は地方へGO!

「あと1枚、もう1枚」と買い込んでいくうちに、自宅はCDで溢れかえってしまったそうだ。

「1万枚は超えているでしょうが、もはや自宅にCDが何枚あるのかわからないんですよね。パソコンに取り込むこともめっきりなくなり、今は床に積み重ねているだけ。たださすがに置ききれなくなって、今住んでいる部屋の隣の部屋も借りたんです。月6万円の部屋なので管理費だけでもバカになりません(笑)」

CDを置きすぎて足の踏み場がない、とデラさんは語る

100円CDという魔境にひとり潜り続け、魅力を伝えてきたデラさん。今後100円CDコーナーが100円のままであり続けてほしいことが望みだという。

「ぼくはCDを100円のまま買うのが大好きで、100円のシールはあえて剝がさないんですよ。100円で売られていた、という何よりの証拠で、品質保証のシールだと思うので(笑)。

けど今はライバルも増えてきまして、100円で買うのが難しくなってきている。特に都内だと、希少な100円CDには出会いづらくなってきました。

なので、あっと驚くCDを探したいときは、地方のほうがお宝を見つけられるかもしれません。とはいえ、このアドバイスでライバルが増えすぎるのはごめんだったりもしますが(笑)」

取材・文/文月/A4studio

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