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大学教育崩壊につながる「国立大学法人法改正案」の問題点とは…民間企業が「稼げる大学」法案で大学を食い物にする矛盾

集英社オンライン / 2023年11月25日 13時1分

2023年11月20日、大学の自治と学問の自由を奪いかねない「国立大学法人法改正案」が衆議院を通過した。この法案は「稼げる大学」の過熱や文部科学大臣の人事介入を招き、学問の多様性喪失、学生の教育環境悪化を加速させる恐れがある。その理由を解説する。(前後編の後編)

「学生に必要な公共施設」より「稼げる民間施設」が優先される危険性

この改正案による大学教育への悪影響は多岐にわたる。

*本記事で説明を省略する問題点(一県一国立大学の原則崩壊、軍事研究など政権が推進する学問が優遇される恐れ等)を含む全体像は、筆者のtheLetter「第二の日本学術会議問題。国立大学法人法改正による大学教育崩壊の全体像」(2023年11月10日)参照


学生の立場でわかりやすい例を挙げると、大学キャンパスで「学生に必要な公共施設」(運動場、寄宿舎、学生食堂、保健管理センター、図書館等)よりも「稼げる民間施設」の建設・整備が優先され、学生の教育環境悪化に拍車がかかることが問題視される。

2004年の国立大学法人化以降、予算カットや規制緩和によって政府や経済界が国立大学に「稼げる大学」への変身を求めてきた中、2017年には大学から企業への土地貸付までも認められたが、それには文科大臣の「認可」が必要だった。

今回の改正案では「届出」のみで可能になり、貸付のハードルが下げられた。これによって、土地で稼ぐことにさらに積極的になる大学が増えるだろう。こうした本末転倒な状況は国内最高峰の教育機関に位置付けられる東大・京大のキャンパスでも既に現実になっており、さらなる加速が見込まれる。

例えば、東京大学では学生寮が不足する問題は放置したままで、白金台キャンパスや目白台キャンパスの余った土地にホテルや老人ホームを建設するプロジェクトを事業者(三井不動産、三菱地所等)が進めている。

また、京都大学では学生・教職員の健康を守る上で必要な保健診療所の廃止を大学が2021年12月に突然発表。学生らの反対署名を無視して強行されてしまった。「稼げるか、稼げないか」という本来は大学教育と相容れない価値観を押し付けた結果、最も尊重されるべき学生の教育環境は確実に悪化している。

さらにショッキングな事例としては、「図書館の図書購入・運営費用」(筑波大学)「老朽化したトイレの改修費用」(金沢大学)をクラウドファンディングで調達せざるを得ない国立大学まで出てきている。

今回の改正案によって、半数が学外者で構成される合議体(運営方針会議)が強大な権限を持てば、このように「学生に必要な公共施設」よりも「稼げる民間施設」を優先する姿勢はさらに顕著になるだろう。

学内の教職員であれば決して許さないような、「学び」よりも「稼ぐ」ことを優先した意思決定を、学外の経済界関係者が躊躇なく進めることは容易に想像できる。これこそが、突然の法改正の狙いの1つだろう。つまり、約30年に及ぶ経済低迷で本業だけでは稼げなくなった日本企業が、本来は公共の財産であるべき土地を食い物にして生き永らえようとしているのが実態だ。

これは、神宮外苑旧横浜市庁舎叩き売り(横浜版モリカケ)を始めとする再開発問題の構図とも酷似する。

1930年代におきた学問弾圧との共通点

身近に大学関係者がいない場合は、まだ当事者意識を持てないかもしれない。

この改正案がすべての日本国民にとって他人事ではないとわかるエピソードを最後に紹介する。衆議院で法案審議中だった11月14日、廃案への機運を高めるため大学関係者(大学フォーラム、「稼げる大学」法の廃止を求める大学横断ネットワーク等)は議員会館で緊急院内集会を開催。

そこで指宿昭一弁護士は、かつての日本にも現在とよく似た時代があったことを以下のように指摘した。

「明治憲法下において大学の自治が侵害されて、何が起こったか。軍国主義が蔓延り、そして戦争への道に突入した。1933年、滝川事件。その次の年に天皇機関説事件。今、それと同じ政治社会状況にある。(中略)2つの事件を通じて大学の自治や学問の自由が破壊されてアジアへの侵略戦争へと国が進んでしまったことを私たちは決して忘れてはならない。だから何としてもこの法案を阻止しなければならない」

*滝川事件:著書が共産主義であること等を理由に京都帝国大学 瀧川幸辰教授を文部大臣が罷免・弾圧した事件
*天皇機関説事件:「主権は国家にあり天皇には無い」と唱えた憲法学者 美濃部達吉を軍人や右派政治家が弾圧した事件

11月14日に議員会館で開催された緊急院内集会で発言する指宿昭一弁護士 撮影/犬飼淳

当日の集会映像。指宿昭一弁護士の該当発言は56分33秒〜

指宿弁護士は、現在の日本は太平洋戦争直前の1930年代と酷似しているという。「歴史は繰り返す」という名言の通り、国立大学法人法改正案は大学教育の崩壊にとどまらず、近い将来に日本が再び戦争当事者国になる可能性につながるほど危険な法案といえる。

取材・文/犬飼淳

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