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「保険金が下りるから修理させて」はワナ! 多発する火災保険詐欺の実態と対策

集英社オンライン / 2022年5月27日 11時1分

今年も台風や豪雨などの災害が多い時期がやってくる。こうしたタイミングで気をつけたいのが「火災保険詐欺」だ。実際にどんな手口で人を騙すのだろうか。そして、日頃からできる対策はあるのだろうか。 FPの八木陽子さんに聞いた。

災害後の「ショック状態」を狙う詐欺師たち

火災保険とは、火災などが原因で建物や家財が損害を受けた際に、その被害に応じて補償する損害保険のこと。持ち家・賃貸問わず、すでに加入している人がほとんどだろう。しかし契約内容によって補償範囲が異なるため、自分がどんな火災保険に加入しているか、いまいち把握できていない方も多い。

そんな火災保険の複雑性に付け入る犯罪が「火災保険詐欺」だ。

「火災保険詐欺は大きく分けて2つのパターンがあります。1つ目は、人が受け取った保険金を奪い取ろうとするパターン。過去に大きな災害が起こった地域などで、壊れた跡のある家の家主に近づき、その保険金を何らかの形で奪い取ります。



2つ目は、保険金を請求する権利がないのに、保険金が受け取れると嘘をつくパターン。『保険金を使えば、自己負担なく住宅修理ができますよ』と言って不要な家屋修理の契約をしたり、『火災保険が受け取れるので代理申請しますね』などと言い、手数料と生じてお金を奪い取ったりする方法があります」(八木さん。以下略)

近年増加しているのが、後者のパターンだ。国民生活センターの調査資料によると、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスを受けたという相談件数は、2010年より増加の一途。災害が多かった2019年度は、2,684件と急増している。

火災保険詐欺で最も狙われやすいのは、災害が起きたあとの現場だ。例年、台風シーズンである夏から秋にかけて、詐欺被害や詐欺に関する相談が増加するという。

「災害によって被害を受けた方は、身近な家族を失ったり、大切な家が流されたりと、心身ともに大きなダメージを受けています。そんな茫然自失としている状況では、普段よりも判断する力が落ちてしまいがち。そんなタイミングで詐欺師に狙われたら、つい怪しい話に乗ってしまうかもしれません」

メンタルにダメージを受けているときに狙ってくる卑怯な詐欺師がいる。この事実を知っておき、これからの災害シーズンは特に注意しておくべきだ。

典型的な訪問営業からポイントサイトを使った手口まで。幅広い詐欺事例

詐欺師はどのような手口で人々を欺くのだろうか。まずは典型的な手口を聞いた。

「火災保険詐欺は、訪問営業が一般的です。自然災害による被害を受けた家など、一部損壊している家が狙われます。また、高齢者しかいない家も格好のターゲットになりやすいですね」

ここで、国民生活センターに寄せられた相談例(※1)を紹介しよう。屋根が一部壊れ、雨漏りに困っている40代男性に、事業者から「火災保険の保険金で修繕ができますよ」と連絡があった。

実際に訪問を受けて約400万円の見積りをされ、保険金でカバーできるという言葉を信じて契約したが、実際に保険会社が家を鑑定したところ、工事費用を下回る保険金しか出ないという。

契約を解消しようと思って契約書類を見たら「工事をしない場合は、違約金として保険金の5割を負担して」という記載があり、悪徳商法に引っかかったことがわかった、という例だ。

「詐欺師の中には、東京にペーパーカンパニーを作ってから台風被害を受けたエリアに赴き、そのまま現地になじんで多数の契約を取る人もいるそうです」

と八木さん。さぞかし儲かるのだろう。詐欺師も本腰を入れている。

一方で、珍しい火災保険詐欺の手口も。八木さんは、国民生活センターに寄せられた別の相談例(※2)を挙げた。

「あるポイントサイトで『家の外壁や屋根の修繕に関する無料調査を受けたら、3万円相当のポイントがもらえる』という広告を見つけた40代の方が、ポイントほしさに無料調査を申し込みました。

来訪した事業者から『診断する前に契約が必要』と言われ、保険金請求に関する契約を完了。すると、その家には壊れている部分がなかったのに、事業者は『雨どいが曲がっているから保険請求しよう』と強引に保険会社のホームページから事故連絡させられたそうです。

保険会社を騙すのはよくないと思い、この方はすぐに事故連絡を取り消し、契約もクーリングオフしたため実害はありませんでした。ちなみに契約書面には『保険金額の50%を報酬として支払う』という記載があったそうです」

「ポイ活」をしている方からしたら、身近なポイントサイトにまさか詐欺が潜んでいるとは思わないのではないか。

火災保険詐欺に遭わないためにできる3つのこと

火災保険詐欺に遭わないため、日頃からどのような対策をしておくとよいのだろうか。八木さんは3つの対策法を教えてくれた。

「まずは、すぐに契約しないこと。詐欺師は非常に口が達者なのでその場で契約したくなってしまいますが、そこはぐっと我慢。せめて一晩は考えてから結論を出すようにしましょう。

次に、契約する前に他社と相見積もりを取ること。最近は外壁塗装など家の修理に関する見積りが、ネットで簡単に取れます。提示された工事費用などが本当に正しいものなのか、判断できると思います。

それでも契約してしまったら、クーリングオフを利用すること。クーリングオフは、訪問販売などで契約や申し込みをした場合、一定の期間内であれば無条件で契約を撤回・解除できる制度です。

火災保険詐欺の多くは訪問販売で行われるため、契約書面を受け取った日から8日間は解約できます。消費者がさまざまな被害に遭わないための制度なので、ぜひ活用してください」

この機会に、加入している火災保険の内容を見直すのもおすすめだ。近年は地震が増加しているが、地震による被害は火災保険の補償対象外。別途「地震保険」に加入する必要がある。

また火災保険には「携帯品特約」「個人賠償特約」など、さまざまな特約も付けられる。もし加入している損害保険が複数あり、補償内容が重なっているなら、不要な補償を外して保険料を減額してもよいだろう。

意外と身近に起きるかもしれない火災保険詐欺。日頃から自衛しておきたい。

取材・文/金指 歩

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