すべての始まりは、1977年7月6日に行われたピンク・フロイドのツアー『In the Flesh』の最終日でのことだった。
モントリオールに建てられたばかりのオリンピック・スタジアムでの公演中。興奮した一部の観客たちが爆竹を鳴らし、殴り合っていた。
半年間にも及ぶ長いツアーで神経過敏になっていたロジャー・ウォーターズにとって、それは許し難い行為以外の何物でもなかったのだ。さらにステージのそばにいた一人の男が叫び声を上げて騒ぎ始める。
我慢の限界に達したウォーターズはついにその男の前に向かいかがみ込むと、顔に唾を吐きかけてしまった。
ウォーターズは自分の行為を後悔すると同時に、こう思うようにもなった。