1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

自力カスタムの車中泊カーに、いきなり降りかかった大災難…男一匹宝探しの北陸旅は波乱万丈

集英社オンライン / 2023年11月28日 18時1分

行き当たりばったりの車中泊の旅も早4度目。未知のエリア北陸へとわくわくと繰り出したものの、いきなり大アクシデントに見舞われる。ある程度のハプニングは旅のご愛嬌ともいえるが、さすがにこれは‥‥。

行き当たりばったりの自由気ままな車中泊旅を始めた理由

2022年初頭。当時52歳だった僕は、旅を始めることにした。
ずっと暮らしてきたのに、実は何も知らないのかもしれない祖国日本を再発見するため、行き当たりばったりで、地べたを這うように自由で気ままな旅を。

はじめに、旅のルールを2つ定めた。
1 宿には泊まらない。
2 公共交通機関を使わない。

目的地がホテルや旅館になったり、公共交通機関の時刻表によって旅程や行き先が左右されたりするのが嫌だった。


まったく自由に移動し、たまたま行き着いた先で、「今日はここまで」と眠りにつくのが理想だった。

そんな旅のための手段は、“車中泊”しかないと考えた。
そしてツテを使って激安中古の軽バン(スズキ・エブリイ)を購入。家族や友人たちの助けを借りながら自力でカスタムし、世界に一台のオリジナルな車中泊専用車を作りあげた。

一家総出でカスタムした僕の車中泊専用カー

その車を使い、すでにいろいろなところを旅している。
2022年8月には、東北一周8泊9日の“犬連れみちのく旅”。
同年10月には、5泊6日で長野〜岐阜を巡る“中部地方山地の旅”。
2023年1月には、10泊11日で関西〜四国を巡る“真冬のGO WEST旅”。
すべて当初の宣言どおり、宿にはいっさい泊まらず、公共交通機関も使わず、車中泊のみで貫いた。

とても居心地のいい車中泊カーの室内

車中泊旅にもすっかり慣れたと思っていたのだが、今年はにわかに公私とも忙しくなり、なかなか旅のための長い日程が取れなくなってしまった。
しかし11月半ば、いろいろなことを強引に片付け、5泊6日の日程を捻出。
晩秋の北陸地方を目指す、久しぶりの車中泊旅をすることにした。

毎回、車中泊旅に出るときは、何か一つテーマを掲げることにしている。
最初は「犬連れ」、二回目は「山奥から山奥へ」、三回目は「GO WEST」。
そして今回の北陸行きでは、こんなテーマを掲げることにした。

宝探し。

いい感じに仕上がった54歳のおっさんにしては、ちょっと青臭すぎるキラキラテーマかなとは思ったが、まあいいではないか。

マイ車中泊カー、スズキのエブリイ号

僕は東京で生まれ育ち、働き、家族を作ってきた。
現在は東京と山梨で二拠点生活を送っているが、いずれにしても本拠地は太平洋側。
ほとんど未知のゾーンともいえる日本海側の北陸地方には、きっと何かがある。そんな予感がしたのだ。

そして11月某日の午前8時、総走行距離15万kmを超えるオンボロ・エブリイ号のアクセルを踏み込み、僕は東京の家をあとにした。

DAY1。天候に不安があったので、高速で一気に福井まで

過去3回の車中泊旅では、3つ目のルールとして「高速道路を使わない」という縛りを追加していた。
誰に頼まれたわけでもない勝手な旅なのだから、急ぐ必要はない。
高速道路のグレーの防音壁を眺めながら走って、いったい何になるのだろうと思ったのだ。

さらに(実はこっちの理由が大きいのだが)、ベーシックグレードの貨物バンである我がスズキ・エブリイは、3速ATの非力なエンジンを積んでいるので、時速90km以上で走ると、心配になるくらいの大きな唸りをあげるのだ。

だが車中泊旅にも慣れた4回目の今度の旅では、しかるべきところで高速道路をちゃんと利用しようと方針を改めた。
忙しい中でやりくりした6日間の限られた旅程で、一般道にこだわりすぎると、行きたいところにたどり着けないかもしれないと思ったのだ。

我が家の第二拠点がある山中湖畔に停めた愛車

そして初日には一気に、東名高速道路〜名神高速道路〜北陸自動車道を駆け抜け、夜までには福井県に到達するという計画を立てた。
初日にここまで頑張るのには理由があった。
予報によると出発日の夜から1〜2日間、全国的に天候がかなり崩れる見込みだったのだ。
長い旅の間には、雨が降ったり槍が降ったりすることも想定済みではある。だが、やはり悪天候だと行動に制約がかかるので、そんな日にはひたすら車を走らせ、なるべく遠くまで駒を進める。
これが過去の車中泊旅で僕が得た、効率のいい旅の作法だったのである。

いきなりやって来た、のっぴきならない車のトラブル

行き当たりばったりの旅である以上、多少のトラブルはつきものだ。
僕の場合は特に、「何か問題が起こったとしても、それはそれでいい原稿のネタになるぜ」とかなり鷹揚に構えているのだが、旅を始めた途端、さっそくのっぴきならないことが起こってしまった。

朝8時に出発したものの、日頃の不規則な生活が祟って激しい睡魔に襲われ、海老名サービスエリアで2時間弱の仮眠をとった。
再び走り始めたが今度はすぐにお腹がすき、富士川サービスエリアで昼メシ休憩。そして、いよいよふんどしを締め直して一気に福井まで走破するぞ!と思った矢先のことだった。

広い東名高速の3車線の一番左端をキープし、時速80kmで爆走(エブリイちゃん非力なので)していたときのことだった。
車の天井のほうから“パリン、パキ、ペキ”という乾いた音が聞こえたと思ったら、直後から車の風切り音が妙に大きくなった。

これはもしや……と不安に思った僕は、時速80kmをキープしつつ次の由比パーキングエリアに入り、車の屋根の上を確認した。
すると、心配したとおりのことが起こっていた。

僕のエブリイの屋根には、車内のポータブルバッテリーにつないで充電するために使う、ソーラーパネルを設置している。

屋外工事用の強力なビニールテープと、防水両面テープをたっぷり使い、これでもかと思うほど頑丈に貼り付けていたつもりだった。

屋根に設置した直後のソーラーパネルとポータブルバッテリー

だが設置から1年半の間ずっと車を雨ざらしにしていたからか、テープの一部が劣化し隙間ができていた。そこに高速走行の風が吹き込み、一部のテープが屋根から剥がれていたのだ。
この先、福井に到達するまでにはまだまだ高速道路を走らなければならない。
けれどこのままの状態で走り続けたら徐々に剥離が広がり、最終的にはソーラーパネル全体が脱落してしまうかもしれない。

テープの剥がれは今のところ一部分だったので、一般道だったら近くのホームセンターに駆け込み、屋外工事用テープで応急処置をするところだが、今いるところは高速道路のど真ん中。次の出口である清水インターチェンジまでも、まだかなりの距離がある。
一にも二にも避けたいのは、高速道路上に物を落としてしまうことだ。高速道路上の落下物は本当に迷惑なものだ。ただ迷惑なだけではなく、大きな事故につながる危険性も孕んでいる。
そこで僕は、苦渋の決断をした。

さようならソーラーパネル。この旅は、どうなってしまうのか?

仕方ない。便利だったソーラーパネルちゃん、さようなら。

力を込めて、屋根からソーラーパネルを引き剥がした。
残りのテープはかなり強力な粘着力を保っていたので、全部を剥がすのにはかなり苦労した。
まだこんなにしっかり固定されているなら、このまま走っても最後まで耐えられるんじゃないかという考えもよぎったが、やはり安全第一。
もし落下事故を起こしてしまったら、始まったばかりの旅が台無しになるので、最悪の事態を想定して最善の予防措置を取るしかない。

1年半を経て、見るも無惨な姿になったソーラーパネル

我がエブリイ号に積んでいるのは、『PowerOak ac50s』という500Whのポータブルバッテリーだ。このバッテリーは太陽光充電だけではなく、走行充電も可能。
だけど、どんなに走っても1日の走行で500Whをフル充電させることはできず、いつも駐車している間はソーラーパネルにつなぐという併用作戦で凌いできた。

500Whフル充電状態であれば、パソコンやスマホの充電は余裕。短時間の電気製品(湯沸かし器やミニホットプレート)の使用もバッチリだ。
だが問題は、夜中に使う暖房器具である。
車中泊をする者には、駐車中には必ずエンジンを切るという最低限のマナーが浸透している。車のヒーターには頼れないので、冷え込む夜には何らかの電気暖房器具を使わなければ寝られない。

僕の場合は、車には電気毛布を積み込んでいる。
それさえあれば、冬でも結構快適に眠ることができるのだが、電気毛布の電力消費量はかなり大きい。朝起きる頃には、フル充電した500Whモバイルバッテリーがすっからかんになっていることが常だった。

つまりソーラーパネルの死は、今後の旅にとって暗雲垂れ込めるような、由々しき事態であることは間違いなく、僕は鬱々とした気分になった。

ソーラーパネル、終了

しかしウダウダ考えていても仕方がない。
旅はまだ始まったばかりだ。
僕は気持ちを切り替え、外したソーラーパネルを車内の板張りの天井裏に仕舞い込み、先を急ぐことにした。

気を取り直して、出発

原発のある街・敦賀で見た、あまりにゴージャスな公営温泉

その後は高速道路を順調に走行。途中、ガソリンの残量が少なくなったため、豊田インターチェンジで一般道に降りてガソリンスタンドへ向かった。
高速道路のパーキングエリアにあるガソリンスタンドは割高だ。ただでさえガソリン代が高騰している昨今、給油はなるべく安く済ませたいと思ったのだ。

ガソリンを満タンにした後は、再び高速道路に乗り直し、北陸自動車道の敦賀インターチェンジまでノンストップで走り通した。
ソーラーパネル騒動という予期せぬ事態に時間を取られてしまったため、ようやく目標の福井に到達した時には、すでに夜の帷が下りていた。

非力な軽バンでの長時間高速走行をおこなった結果、僕の体はバキバキに凝っており、とりあえず熱いお風呂に入りたかった。
近くに「敦賀きらめき温泉リラ・ポート」というよさげな公営温浴施設があることをスマホ検索で知り、そこへ向かった。

「敦賀きらめき温泉リラ・ポート」は観光客向けではなく、地元民のための施設のようだったが、えらく立派な建物だった。
ちょっと驚いてネットで調べてみると、敦賀市が総工費約36億円をかけて整備し、2002年に開業した温泉付き娯楽施設だということがわかった。
総工費の3分の2に当たる24億円は、高速増殖炉もんじゅの交付金で賄われたのだとか。

「敦賀きらめき温泉リラ・ポート」のゴージャスな建物


そう。ここ敦賀といえば、原子力発電所のある街として有名だ。
だけどそれだけではなく、敦賀は近代の歴史において、ロシアのウラジオストクへの航路となる港を抱え、日本の表玄関の一つとして栄えてきた街なのだ。

たったさっき高速から降り立ったばかりの余所者で、温泉の建物の立派さにびっくりしただけではあるのだが、早くも北陸の奥深さの一端に触れたような気がした。

この温泉、只者ではなかった

宿泊場所に決めた道の駅までの道中、天候悪化で生きた心地がしなかった

風呂から上がった後は、敦賀市から今夜の休息場所にしようと決めた、“道の駅 越前”を目指し一般道を北上。
しかし予報通り、天候が急速に悪化しはじめ、海沿いのしおかぜ街道〜漁火街道を走っている間、激しい風雨と海からの高波に襲われて、生きた心地がしなかった。
前後にはまったく他の車が走っていないし、途中で激しく雹まで降り出す始末。
「これはやばい。俺はどうなるんだろう?」と心配になった頃、目標である道の駅の看板が見えてきて、心底ホッとした。

道の駅の駐車場には、お仲間の車中泊組の車もちらほらと見られ、安心した。
その後も一晩中激しい雨風にさらされ、僕のエブリイ号は時折ぐわんぐわんと大揺れしたけど、一日中走った疲れからか、僕は深い眠りに落ちた。

強風に煽られ大揺れの車内だけど、やっぱり快適

さあ、明日からいよいよ宝探しの始まりだ!

写真・文/佐藤誠二朗

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください