73年と82年というほぼ十年遅れのデビュー、横須賀と清瀬という東京近郊都市出身、母子家庭と今どき子だくさん家庭という特異な出自、『スター誕生!』でデビューし新人賞は逸するが、デビュー数曲後、ツッパリ少女風の危うさが印象的な歌でチャート一位のヒットを飛ばす(百恵『ひと夏の経験』、明菜『少女A』)、そして映画での共演相手である男性とのロマンス……。さらに件の相手と70年代末に百恵が結婚・引退を決意したように、80年代末に明菜もまた結ばれることができたなら、ほぼ完璧な形で「十年後の山口百恵の物語」は完結するはずだったのだろう。
(中森明夫『アイドルにっぽん』新潮社、2007年)