「おひとりさまリスク」で最も考えるべきこととは…親世代なら「大きな病気で延命治療を受けたいか?」子世代なら…
集英社オンライン / 2023年12月4日 11時1分
「『おひとりさまリスク』は老後の前にやってくる」そう話すのは、多くの「おひとりさま」やその家族のトラブルを見てきた、『あなたが独りで倒れて困ること30(ポプラ社)』の著者・太田垣章子さんだ。事前に準備しておかないと、どんな困りごとがあるのだろうか。
老後を迎えてからでは遅い「おひとりさまリスク」への対応
——「『おひとりさまリスク』に備えよう」と言われても、あまりピンときません。「おひとりさま」になると、どのような困りごとが発生するのでしょうか。
人はいつでも、病気やケガなどによって意思能力や判断能力がなくなるリスクを抱えています。「万が一の事態=死んだとき」だけでなく、生きているけれど自分では判断できない局面が来る、という可能性を考えておくべきです。認知症にはならなくても、体が不自由になることだってあります。
また、私はシングルマザーなのですが、 以前急に入院することになり、病院で身元保証人を求められました。しかし息子は当時海外にいて、私の姉も遠方に住んでいるためすぐには来られない状態でした。このときは特別に配慮してもらえたのですが、 ふつうは病院も入院の際には保証人を求めてきます 。
20〜40代のうちは、自分ではなく親世代の「おひとりさまリスク」を考える時期でしょう。
例えば、父親が他界したあと、認知症の母親を施設に入れたいと思ったとき、母親の銀行口座は判断能力がなくなった時点でロックされている可能性が高いです。
その場合、あなたが母親の後見人(本人に代わって資産を管理したり、支援をしたりする人)になったり、母親が意思確認できる状態の時に銀行に代理人として届け出たりしない限り、自分の貯金で母親を施設に入れるしかなくなります。
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また、親が大きな持ち家から手頃な賃貸住宅に住み替えようと思ったとき、70代以降では賃貸契約が結べない可能性が高くなります。
仮に年金で支払えるような家賃だったとしても、物件のオーナーが入居者に孤独死されるリスクを恐れるからです。
これまでに対応した 高齢のお客さまも、自分の死や「おひとりさまリスク」に備えていた人はごく少数でした。そのため、何かしらのトラブルを抱えてしまったのです。
まだ「おひとりさまリスク」の低いうちに、備えておくことを強くおすすめします。
若い世代は「お金や住まい」、老後の近い世代は「健康」について考えてみよう
——若いうちから特に考えておくべきことは何でしょうか。
20〜40代では、お金や住まいに関してよく検討すべきだと思います。最も大きなお金が動くのは、家を購入するときといっていいでしょう。
将来までずっと家族構成にマッチした家はありません。家の購入時には子どもを含めた3〜5人程度で住んでいても、子どもが巣立ったら夫婦2人で住むため、部屋が余ります。
そのときに自宅をスムーズに売却して住み替えるためには、資産価値の下がりにくい物件を購入するなど「売ることを想定して買う」ことが重要になります。
また、これからは「退職金がない時代」がやってくるといわれているので、退職金に頼った住宅ローン返済は非常に危険です。無理のない住宅ローンの金額はいくらなのか、シビアに計算する必要があります。
老後の生活資金も年金にすべては頼れないので、これまで以上にひとりひとりがマネーリテラシーを身につけて資産運用をすることが大事です。
しかし、もし大切な資産を通帳のないネット銀行に黙って貯めていたら?
自分に万が一のことがあったとき、スマホのロックを誰も解除できなかったら?
残された家族がその資産を使うこともできないかもしれません。スマホやネット銀行、クレジットカードなどのデジタル関係の情報はまとめてどこかに記載し、家族に共有しておくことをおすすめします。
また、親にも「ネット証券やネット銀行を使ってるかどうか?」を確認しておくとよいでしょう。
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——親世代の「おひとりさまリスク」対策で、特に重要なことも教えてください。
親世代では、健康に関する希望を子どもと共有しておくことが重要だと考えています。例えば「生死にかかわる大きな病気の際に、延命治療を受けたいか?」などです。
もし親が自宅で倒れたとき、救急車を呼ぶ家族は多いと思います。この「救急車を呼ぶ」という行為は、「救命・延命行為をしてください」という意思表示とも捉えられます。
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しかし親がもし無理な延命を望んでいないのだとしたら、呼ぶべきなのは「かかりつけ医」かもしれません。
70〜80代にとって積極的な治療は心身の大きな負担がかかる可能性があります。また、重大な判断を迫られる子どもにも多大なプレッシャーがかかるかもしれません。万が一のときに親の意向とは違う対応をしないよう、折りをみて「お父さんは万が一倒れたら、どうしたいと思っているの?」などと、早めに意向を聞いておくとよいかもしれないですね。
「おひとりさまリスク」を考えると「生き方」がみえてくる
——具体的な「おひとりさまリスク」対策を行う前に、検討すべきことはありますか。
まずは自分と向き合って、人生に対する考えや希望を洗い出してほしいです。例えば、何歳まで働くのか、どんな老後を送りたいのか、その老後はどこで迎え、どんなことをやりたいのかなどです。そのなかで、独身を通した場合、結婚して子どもをもうけた場合など、いくつかのパターンで考えておくとよいでしょう。
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親が亡くなっても 遺産がもらえるとは限りません。そして、最期まで自分の面倒を見てくれる子どもがいるとも限りません。だからこそ「おひとりさま」で完結できる老後を考えてみてはどうでしょうか。
年齢を重ねてわかったのは、人は年をとるほど「やらなければいけないこと」よりも「楽しいことや得意なこと」を優先しやすいことです。そういった意味でも「おひとりさまリスク」に備えるのは早いほうがよいと思います。
人はいつか必ず死ぬからこそ、今から「どんな生き方をしたいのか?」を考えてみてください。
そしてこの情報過多な社会のなかで広くアンテナを張り、多くの書籍などから情報を得てみてください。信用できる専門家や企業などをみつけ、正しい判断ができるような礎を築いていただけたら嬉しいです。
取材・文/金指歩 写真/shutterstock
『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)
太田垣 章子 (著)
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/11/29091336534427/400/hitori.jpg)
2023年11月8日発売
1,760円(税込)
279ページ
978-4591179697
「自分は大丈夫!」の落とし穴
最後はみんな「おひとりさま」
2025年には6世帯に1世帯が一人世帯になり、未婚も既婚も子なしも子ありもいつかは「おひとりさま」。
そんな時代を平穏に生きるために、今から準備しておくことを丸ごと一冊に!
「おひとりさまリスク」は老後の前にやってくる!
あなたはどうする?
著者の太田垣章子さんは司法書士の立場から、「人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活」を支援している。
そんな著者の現場での多くの経験から選び抜かれた30のリスクとその対策を一冊にまとめました。
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