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「AIグラビアが広まって仕事が減るようなグラドルは遅かれ早かれ消える」現役グラビアアイドルくりえみが「AI」で本当につくりたいものとは

集英社オンライン / 2023年12月9日 19時1分

伊藤園やパルコが広告にAI女優を使用するなど、進化と起用が大きくなり続けるAI技術。ハリウッドではAI生成脚本に対するストライキも起きるほど、俳優や制作者にとっては脅威のテクノロジーともなり得るAI技術だが、その発展に進んで寄与するグラビアアイドルがいる。多くの雑誌の表紙も飾る、くりえみさんだ。彼女にこれからのAIビジネスの可能性を聞いた。(前後編の前編)

#2


グラビアアイドルのくりえみさんは、2023年7月、AIグラビア写真集を刊行した。現役のグラビアアイドルとしては異例の試みに見えるが…。

グラビアを本気で愛しているグラビアアイドルは少ない

――さっそくですが、AIグラビア写真集を作った理由を教えてください。



まず私の仕事の9割の時間は、プレイヤーとしてではなく、経営者としての時間に割かれています。グラビアの撮影の場合、雑誌の撮りおろしでは丸一日拘束されますし、写真集の場合は準備も含めて何十日もかかります。

でもAIくりえみであれば、大幅にその時間を短縮できます。経営者としても、プレイヤーとしても最大限のパフォーマンスを発揮するために作りました。

AIくりえみさん

――AI写真集には、批判もあったそうですね。

もっと批判が多いと思っていましたが、賛否両論、半々くらいでしたね。でも批判してる人たちって、AIの可能性を知らないんですよ。「AIより実物のほうがいい」と、目先のことしか見えてない。

だから批判されるほど「正しいことをしてる、誰もやってないことに最初に手を出せた」と誇らしいです。

――実際にどんな批判が多いんでしょうか。


「グラビアアイドルの仕事が減る」と言われますね。でも、それで仕事がなくなってしまう程度のレベルのグラドルなら遅かれ早かれ消えると思うんですよ。あと彼女たち自身、何十年も現役でいられるものだと考えていない。

――磯山さやかさんのように40歳でグラビア写真集を発売する方がいるなど、グラビア界は全体的に引退時期が延びた印象ですが、実際に年齢の壁はありますからね。現役のグラビアアイドルからの苦情の声はありました?

まだ直接言われたことはありません。私、11年前にデビューしたんですけど、売れたのはほんの4、5年ほど前からでそれまでは下積みでした。この11年間いろいろなグラドルを見てきましたけど、「楽しい! ずっとこの仕事したい!」と考えている人は悲しいけど、ほとんどいませんでした。

あくまでグラビアは入り口で、その先に夢がある。その目標を達成するための手段だという考えの人が多いんです。だからこそ、「AIに仕事を取られる」って考えになる人もそんなにいないんだと思います。

グラビアのファンの人たちがいてくれたから

――多くのグラビア経験者が、女優業やその他タレント業に活路を見出すとグラビアから去っていきます。くりえみさん自身は「経営者としての時間が9割」ということですが、むしろなぜグラビアを続けているのですか?

シンプルにグラビアが大好きということもありますが、一番はグラビアのファンの人たちの存在です。彼らがいてくれたから今があります。

それこそ数年前までコミケで自作の写真集を販売することで、生かしてもらっていたので。

――AIを使ってでもグラビアをやり続ける理由は?

そもそもAI自体、単体ではなくリアルな事業と掛け合わせることで、いいシナジー効果を生み出すものだと思っています。エンタメ業界以外では教育分野などでも使われていますが、AIと人とがタッグを組むことで、よりわかりやすい授業になるといった事例もあるそうです。

――写真集以外にもAIを活用したバーチャルヒューマン事業も行なっていますが、こちらもタレント活動の一環ということですか?

簡単にいえば、私をAIタレント化させようとしています。ChatGPTなどの対話型AIに私自身を学習させて、AIで作った私の画像データと学習データを組み合わせることで、私のデジタルヒューマンが実装できるんです。

――具体的にどういったシーンでの活用を目指しているのでしょうか?


主に考えているのはライブコマースです。日本でも美容ブランドやアパレルで国内向けに広まり始めていますが、海外に日本製品を売ることに需要があるんです。特に中国ですね。

AIの可能性は私の可能性でもある

――中国はライブコマースが浸透していると言われていますね。

私の知り合いの中国人に、ライブコマース4時間で2000万円売り上げるインフルエンサーがいます。何がすごいかというと、インスタグラムのフォロワー数は30000人程度なのに、インスタライブをしたら700人くらいが最初から最後まで見ているんです。

フォロワーが少なくても、その多くがアクティブユーザーであり、その全員が富裕層。日本でそんなフォロワーを持っているタレントはほとんどいません。

――海外ライブコマースの市場に参入しようということなのですね。

一番メリットになるのが言葉の壁を突破することです。私は中国語は話せませんが、AIなら言語変換ができるので心配もいりません。中国だけでなく世界中に顧客をもつことができます。

――ライブコマース以外にもAIで何か仕掛けようと考えているんですか?

現在、私のAIを作っていますけど、本人の実在しないAIタレントを生成してプロデュースしようと思っています。AIタレント事務所みたいなものを作れたらなと。

今でこそ、Vチューバーはたくさんいますけど、それもキズナアイ(※1)という存在があったからこそじゃないですか。私はそんな先駆者になりたいんです。まだ存在しないAIタレントという分野なら、それが達成できると思っています。

――最初にAI写真集への批判について、「誰もやってないことに最初に手を出せたということだから誇らしい」と言っていたのは、そういう意味だったんですね。

私より実績や実力のある経営者や起業家はたくさんいます。それにレッドオーシャンになれば、大企業の資本力には勝てません。だから現時点でAIに賭けているんです。

AIの可能性は私の可能性でもあるのかもしれないんです。

後編につづく


(※1)Activ8株式会社により制作され、現在はKizuna AI株式会社に所属している、日本のバーチャルYouTuber、音楽アーティスト。人工知能を自称している。バーチャルYouTuber界のパイオニアとされている

取材・文/鯨井隆正
撮影/松木宏祐

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