日本社会で高く評価される「我慢力」は、自ら主張しなければ損をするだけという世界のスタンダードにおいてどうなるのか
集英社オンライン / 2023年12月9日 12時1分
日本社会では高く評価される、黙々と勤勉に働く「体育会系」タイプは、実は日本人特有の気質らしい。その特徴は、ハリウッド映画に対し、「自分たちが気に食わない表現があると、烈火のごとく怒り、すぐにストライキをする」中国人や韓国人の姿とは対照的だという。日本文化が育む「分相応の壁」を打破するためのメソッドを、書籍『分不相応のすすめ』より一部抜粋してお伝えする。
言うことを聞いておけばとりあえずOK
就職活動や、その後の社会人生活において、会社から高く評価されやすいタイプとして「体育会系」があります。大学を通じて部活動をしっかりやってきた体育会系の学生が、就職活動に強く、会社に入ってからもビジネスパーソンとして活躍しやすい背景には、それ相応の理由があります。
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① コミュニケーション能力に長けている
まず、野球やサッカー、アメリカンフットボールといったチームスポーツの経験から、コミュニケーション能力に長けていて、チームでの情報共有や団体行動に慣れている点があります。
会社における仕事は、基本的に個人プレーは少なく、チームプレーがメインです。チームを作り、上司から指示を受け、仲間と情報共有や役割分担をして、課せられた役割を全うする、というのが一般的です。体育会出身者は、そうした働き方に、早くスムーズに順応しやすいわけです。
② 身体的・精神的にタフ
また、身体的・精神的にタフである点も特徴とされています。部活動のハードな練習や試合で鍛えられてきたため、体力も精神力もあらかじめ備わっていることが期待されます。
監督や先輩から厳しい指導を受けても、正面から受け止められたり、程よく聞き流しながら上手く対応したりする「タフさ」を持っている人が多いでしょう。
③ 命令を「ちゃんと聞く」
組織のルールや上司の命令を「ちゃんと聞く」という点があります。部活動の経験から、年功序列を重んじる価値観が染みついており、ちゃんとルール通り、命令通りに頑張ることができる人が多いのです。
厳しくつらい環境にも我慢強いため、「すぐに仕事をあきらめない」「不満があっても文句を言わない」「簡単に会社を辞めない」といった会社にとってのメリットが見込めます。
④ 勤勉性が高い
また、勤勉性が高いことから、たとえ報われなくても真面目に働き続けてくれる、という特徴もあります。総じて、会社や上司にとって、「いい部下」「いつも頑張ってくれる」存在で、便利で管理しやすく、それゆえに高く評価されやすい、といえます。
大企業向きの「スペシャリスト型」
ベンチャー・中小企業向きの「ゼネラリスト型」
現状に疑問を投げかけたり、自分の意見を持って反発したりして「変えよう」とはせずに、「言うことを聞いて」と言われれば素直に聞き、言われた通りに頑張る。こうした特徴を持つ人材は、大きな組織で、上下関係や役割分担が明確になっていて、ルールが決められた環境の方が活躍しやすいタイプです。
1つの役割を全うする「スペシャリスト型」といえるでしょう。だから、大企業に好まれるし、向いていることになります。
このスペシャリスト型と対照的なのが、色々な役割を持って、部門横断的にあれもこれもと組み合わせて対応する「ゼネラリスト型」の働き方です。ゼネラリスト型は、例えば、開発担当であっても、ときに営業や広報の役割もこなして、総合的な対応ができるタイプです。
「何でも、すぐに対応できる」という属人的な強みを発揮する中小企業。数人から始まって十・百・千とケタ違いに規模を急拡大させていく中で、役割が横断的になり、またそのときどきの規模や状況によって、流動的に柔軟な対応を求められるベンチャー企業。こうした組織では、ゼネラリスト型の方が働きやすく、活躍しやすくなります。
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文句を言わず、反抗せずに、黙々と、勤勉に働く。こうした体育会系の特徴は、じつは海外から見れば、日本の人に広く当てはまる特徴になっています。その意味では、これまで見てきた話は、体育会系でなくとも、誰もが自分事として考えていいかもしれません。
日本の描写が間違ったままのハリウッド映画
ハリウッド映画では、日本を舞台にした作品が数多くありますが、いまだに日本の描写がめちゃくちゃなものがほとんどです。※3 それに比べて、中国や韓国を舞台にした作品では、現代の中国・韓国それぞれの「間違っていない描かれ方」がされていることが多いといいます。その理由は、「日本人は抗議しない」からと指摘されています。
あるハリウッドのプロデューサーは、「日本人は怒らない」から、わざわざ配慮した表現をする必要がないと説明したといいます。一方、「中国人や韓国人は、自分たちが気に食わない表現があると、烈火のごとく怒り、すぐにストライキをする」から、そうなってしまうと大変なので、あらかじめ配慮した表現をしておくのだそうです。
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日本は、ハリウッドが作るままを受け入れるだけで、もし不満があっても黙っている。一方、中国と韓国は、しっかり問題意識を持って自己主張をして、自分たちの主張を通す。また、現在の新しい中国人像・韓国人像を自らハリウッドへ発信して、イメージを自分たちの手で更新していく。
こうした「日本とハリウッド」の関係性は、そのまま「日本のビジネスパーソンと会社」の関係に当てはまるものではないでしょうか。黙っていて、自ら主張しなければ、損をするだけであり、「中国・韓国とハリウッド」の関係を目指した方が良いことは明らかです。
―――
※3 週刊女性PRIME「寿司職人、日本兵、サラリーマン、海外映画の「ニッポン」が“おかしいまま”のワケ」を参照。
文/永井竜之介
写真/shutterstock
分不相応のすすめ
永井竜之介
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/11/30012145281004/400/81ld9chiQL._SL1500_.jpg)
2023/11/20
¥2,200
216ページ
978-4911194003
「これくらいが自分にはちょうどいい」。生活でも仕事でも無意識に作ってしまう「分相応」の自己評価。じつはこれが「壁」となり、挑戦や成長が妨げられている。その原因は「日本らしさ」にあった。マーケティングの科学的知見を背景に、自分の「分相応の壁」を破り、周囲の空気に負けずに、現状を打開するためのマインドとメソッドを提示。「自分はこんなもの」と悟ったように見えて、「本当は自分を変えたい!」という諦めきれない本音を多くの人が隠し持っている。行き詰まりを感じて思い悩む現代人に必読の一冊。
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