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「他人の男」を奪い続ける44歳女性の言い分「私、恋愛体質なんです」「女友達はいません」…関わる人を地獄に落としまくる恋愛模様の裏側

集英社オンライン / 2023年12月5日 18時1分

「大人の恋には大人の事情があり、責任がある――」恋に浮かれる人にも不倫の愛に悩む人にも、人生を狂わされた人にも。大人の女性のリアルな証言を、直木賞作家・唯川恵が冷徹に一刀両断した書籍『男と女:恋愛の落とし前』より、他人の男を奪い続けて20年絶対に関わってはいけない女性について書かれた章を一部抜粋、再構成してお届けする。

#2

恋愛体質の女に近づいてはいけない──
「他人の男」を奪い続ける44歳

「私って恋愛体質なんです」

開口一番、彼女は言った。恋愛体質。久しぶりに聞くと、何やら懐かしい。若い頃、多くの女性がその単語を耳に、もしくは口にしたはずだ。

ある時期、恋愛至上主義の風潮があり、女性誌がしょっちゅう特集を組んでいた。女性週刊誌ananの「セックスで、きれいになる。」が注目された頃で、テレビドラマも小説もラブストーリーものが目立ち、恋愛エッセイもたくさん出版されていた。



私もうんと若い頃はそうだったように思う。人生と恋愛は同じ重さで存在していて、どれだけ真面目に勉学に励んでいようと、どれだけやりがいのある仕事に就いていようと、恋愛が充実していない人生なんて無意味なものと思っていた。あくまで若い頃の話である。今となれば、そんな能天気だった自分が気恥かしくてならない。

だから44歳になった今でもまだ自分を「恋愛体質」と言い切る彼女に、正直なところ、ちょっとひいてしまった。

「好きな人がいない状態が嫌なんです。常に恋をしていたいんです。若い頃は、それで友達の恋人を奪ってしまったことも何度かありました」

どうやら彼女は、恋愛体質だけでなく、略奪癖もあるらしい。

女として上だというマウントを
取りたいだけなんでしょ

確かに実年齢より10歳は若く見える。美人というより可愛らしいタイプ。髪型、化粧、ファッション、仕草等々、男受けするという点においてすべて抜かりない。若い頃から男たちにさぞかしちやほやされて来たのだろう。当然ながら、彼女自身、自分が男受けする女であることを自覚している。

なぜ、他人の恋人を奪ってしまうのだろう。

「自分でもうまく説明できないんですけど、気が付くとそうなってしまうんです。友人に言われたことがあります。それは恋愛ではなくて、ただ他人のものがよく見えているだけだって。自分の方が女として上だというマウントを取りたいだけなんでしょって言われたこともあります」

実に的確な指摘である。

他人の幸せを受け入れられない、自分よりいい思いをしていることが許せない、まさに周りをひれ伏させたいという自己顕示欲だ。

しかし裏を返せばこうも見えてしまう。自分に自信がなく、孤独が怖くて、欲望をコントロールできず、判断力に欠けている。実のところ、奪う女の抱えている闇もまた深いのである。

奪った男とは長続きした?

「いいえ、だいたい3か月か、長くても半年ぐらいで駄目になるのがほとんどでした。あんなに好きだったのに実際に付き合ってみたら、友達が自慢していたほど大した男じゃないし、一緒にいてもそれほど楽しくないし」

これもセオリー通りの展開である。略奪女の目的は奪うことだから、それが叶った後はどんな男も燃えカスみたいなものになってしまう。

女友達はいないでしょうね。

「はい、いません」

きっぱり言われて、笑ってしまった。

「でも、やっぱり一緒にお喋りしたり買い物したりできる女友達は欲しくて。だから就職を機に決心したんです。もう他人の男に手を出すのはやめようって」

少しは成長したわけだ。

彼の色に染まりたいって本気で思っていたんです

仕事は何を?

「中堅の家電メーカーの事務職です。女性が多い職場だったので、それなりにみんなとも仲良くやっていました。同僚から時々彼氏の惚気話を聞かされて、もやっとしたりすることもありましたけど、もう他人の男には手を出さないって決めていたから、聞き流すようにしていました。そのうち気になる人が現れたんです。入社して半年ほどした頃です。10歳年上の職場の先輩で、もちろん独身で恋人もいなくて、見た目も悪くなくて仕事も出来て、この人だって思いましたね」

どんな展開に?

「私から告白しました。彼はびっくりしていましたけど、すぐにOKの返事を貰えました。付き合えることになった時は嬉しかったです。これでようやく私もまっとうな恋愛ができるって思いましたから」

それはよかった。

「23歳の私からしたら、33歳の彼は大人で、学生時代には会ったことのないタイプでした。彼の言うことは何でも説得力があって、私はまるでひな鳥が最初にみたものを親鳥と思うように、彼にはまって行きました。彼に言われることは何でも素直に聞いたし、髪型も化粧も洋服も彼好みに変えました。結婚も視野に入れていましたし、彼の色に染まりたいって本気で思っていたんです」

それも恋のなせる業だろう。

「でも2年ぐらい経った頃から……」

ああ、その後に続く話は何となく想像がつく。

「彼は仕事や、私の考え方、日々の行動などにいろいろと口を出すようになって来ました。彼はいつも『君のためを思って』と言っていて、その頃の私はまだ彼にのめり込んでいたから『彼の言うことをきいていれば間違いないんだ』って、自分に言い聞かせていました」

別れたくて信頼する上司に相談したら、その人と付き合ってしまった

恋愛の過程で、男の論理や要求を受け入れることで満足感が得られる時期がある。好きな男に影響される、もっと言えば支配される、そのすべてが愛の表現のひとつだと信じ込む。このM的感覚はある意味、恋愛ならではのトランス状態と言っていいだろう。

しかし、それは紛れもない錯覚であり、恋に舞い上がっている間だけに通用する呪術の一種である。

目が覚めた時、みな同じことを言う。

あの時の私はどうかしていた――。

「でも、だんだん鬱陶しくなって、鬱憤がたまるように」なっていきました。ある日、買い物の帰り道、どんどん先を行く彼の背中を見ていたら気が付いたんです。この人、自分のことしか考えていない。今までのことは、典型的なモラハラだって。もしこのまま彼と結婚したら、こういう生活が一生続くのかと思ったら身震いしてしまって、ようやく別れる決心がつきました。でも不思議なもので、私が別れを決めたとたん、彼からプロポーズされたんです。彼は当然私がOKするものと思っていたようですけど、もちろんお断りしました」

すぐに別れられた?

基本的にモラハラ男は執着心が強く、こじれると嫌がらせをしたり、ストーカーに変貌する危険がある。

「揉めました。断った時の彼の怒る顔がすごく怖くて……。『ただで済むと思うなよ』って凄まれた時は、思わず『結婚します』って言いそうになってしまいました」

どう解決したの?

「信頼できる上司に相談して、間に入ってもらうことにしたんです。さすがというか、上司は彼をうまく説得してくれました。力のある上司でもあったから、これからの自分の立場も考えて、彼も退かざるを得なかったんだと思います。その後、私は部署が替わり、顔を合わせることもなくなりました」

一件落着というわけだ。

「まあ、そうなんですけど……」

まだ何か?

「実は、それがきっかけで、その上司と関係を持つようになってしまって」

ああ、そういうこと。

仕事も遊びも、もっと言えばセックスもランクが上

別に驚きはしない。彼女ならない話ではないだろう。

「あの彼を簡単に制したこの人は本物だと思いました。それに彼と違って、一緒にいると私の我儘をきいてくれるし、いつも可愛いって褒めてくれるし、仕事も遊びも、もっと言えばセックスもランクが上っていうか、いろんなことを教えてくれて、毎日がとても刺激的でした。20歳以上年上だったし、元々結婚なんて望んでなかったから、奥さんの事はぜんぜん気になりませんでした。もちろん罪悪感もありませんでした」

自分は上司の妻より若く美しく、ずっと愛されているという実感が恋を盛り上げる。

リスクはあるにしても、彼女にとって優越感を満たしたいがための相手としては、上司のような力を持った年上男との不倫はもってこいのアイテムかもしれない。

で、その上司とはどれくらい続いたの?

「1年くらいです」

別れた理由は?

「私も26歳になって、やっぱり結婚したくなったんです。周りもそろそろ決まり始めていたから、乗り遅れられないって気持ちもありました」

上司はすんなりと別れてくれた?

「未練はあったようですけど、まああちらも大人ですから」

円満に解決してよかった。

で、次の相手は見つかった?

「はい」

何よりである。相手は?

「それが、同僚女性の婚約者で……」

えつ。

このあからさまなアプローチこそ、恋愛体質の復活、略奪癖の本質

悪癖が復活したということ?

「最初はそんなつもりじゃなかったんです。でも、気が付いたらそういうことになってしまって。本当に恋愛ってままならないものですね……」

他人事のように言っているが、やったのは自分である。よくそんなことが言えるものだと呆れるが、通じることはないだろう。それが彼女である。

とりあえず呆れる気持ちは置いておいて、続きを聞くことにしよう。

「その同僚女性とはとても親しくしていました。半年後に控えた式のためのウェディングドレスやハネムーンの相談に乗ったり、時には愚痴を聞いてあげたりしていたんです。私に彼氏がいないことを知ると、もちろん上司との不倫は隠したままなんですけど、彼女、婚約者の友人を紹介するって言い出したんです。

それでダブルデートすることになりました。紹介された男性はとっても感じのいい人でした。何回か4人で会ったんですけど、私のことをとても気に入ってくれたみたいで、正式に交際を申し込まれました。でも、私はなかなかそういう気持ちになれなくて……。それで、同僚の婚約者にメールで相談したんです」

同僚の婚約者に?同僚ではなく。

「だって、紹介されたのは彼の友達ですから」

彼女は正当性を訴えたかったようだが、すでに意図は見え見えである。

このあからさまなアプローチこそ、恋愛体質の復活、略奪癖の本質というものだ。

「メールのやりとりをしているうちに、とにかく一度会って話そうということになりました。それで同僚女性には内緒で、ふたりで会ったんです。お茶だけのつもりだったんですけど、びっくりするくらい話が盛り上がって、それからご飯を食べに行って、ちょっと呑んで、すっかり酔ってしまった私は、つい言っちゃったんです。紹介されたのがあなただったらよかったのにって。最初、彼は驚いていたんですけど、実は彼も、私のことが気になっていたようで」

ハンターの彼女にとって男は獲物なのである

この展開に持ち込んだのは、まさに彼女の本領発揮といったところだろう。ハンターの彼女にとって男は獲物なのである。狙ったものは何が何でも逃さない。

しかし男も男である。結婚が間近に迫っているというのに、何を寝ぼけたことを言っているのだ。

「それからはもう一気に燃え上がったって感じです。そのまま私の部屋に来て、そういう関係になりました。最初は彼も迷っていたと思います。でもひと月後には、出会う順番を間違えた、婚約は解消するから君と結婚したいって、私を選んでくれたんです」

やっぱり略奪した。

「私は略奪した意識はないんです。自然の流れとしか言いようがなくて」

彼女は真顔で言う。こうやって自分すら納得させてしまうのが、この手の女の厄介なところである。

本音を言わせてもらうけど。

「はい、何でしょう」

あなたは自分に男を見る目がないことを知っているから、他人の選んだ相手なら間違いないと思えて、いつも略奪に走ってしまうと判断していい?

彼女は少し考えた。

「もしかしたら、そうかもしれません」

私が言うのも何だけど、かも、ではなくてそうだと思う。

「同僚には申し訳なかったと思っています。けれど本当に悪気はなかったんです」

悪気がない、その言い訳が通用すると思っているところが、まさにそれを裏付けている。

その後、同僚女性とは?

結婚後は気分転換に、大学時代に付き合っていた彼にSNSで

「揉めたし、恨まれたし、罵られもしました。会社でも噂になって、結局、転職することになりました。彼は、同僚女性をとても気に入っていた両親に泣かれて、婚約不履行の慰謝料や式場のキャンセル代もあって大変だったようですけど、1年後には晴れて結婚することができました。2年後には娘も生まれて幸せいっぱいでした」

まあ、いろいろあったにしても、とにかく一件落着となったわけだ。

「それが……」

まだ続きが?

「育児休暇を終えて、娘が保育園に入った頃から、時々空しい気持ちに包まれるようになったんです。だって、朝起きて朝食の支度をしながら洗濯機を回して、夫を会社に送り出して、娘を保育園に連れて行って、日中は仕事に追われて、退社後はスーパーで買い物して、娘を迎えに行って、帰って夕食の用意をして、お風呂に入ったら、もうくたくた。毎日がその繰り返しなんですから」

それが現実。それがあなたの望んだ暮らし。何も虚しくなんかない。そんな日々の中で人は幸福を見出してゆく。

「だんだんと、本当にこれが私の望んでいた生活だったんだろうかって、疑問が湧いて来るようになったんです。娘のことはすごく愛していましたけど、その頃にはもう、夫は男というより娘のパパとしか思えなくなっていました。夫に婚約破棄でのしかかった借金返済が残っていて、いろいろお金に細かいこともストレスだったし、私と義父母との関係もよくなくて、ずっと冷たい態度で接せられるのも納得いきませんでした」

借金は夫だけのせいではなく、あなたとふたりのことが原因で出来たものだし、義父母がなかなか蟠りを捨てられないのも当然だろう。前の婚約者を気に入っていたのなら尚更だ。息子を情けなく思う以上に「この女さえちょっかいを出さなければ」という思いは、そう簡単には拭えないはずだ。

けれども、不満はあるにしても、そこまでして手に入れた夫ではないか。経済的に少々辛くても、夫は真面目に仕事をしているし、娘はすくすく成長している、生活もそれなりに安定している。他に何を望もうというのだろう。

「そうかもしれません。でも、もやもやは溜まる一方で、それで別に深い意味があったわけじゃないんですけど」

彼女のこのエクスキューズにも慣れて来た。

「気分転換に、大学時代に付き合っていた彼にSNSで連絡してみたんです」

このパターンは彼女の王道とも言える。

「すぐに返信があって、一度会おうってことになりました」

どんな気分だった?

「やっぱりわくわくしました」

心が離れた人と夫婦でいることが
責任ある行動とは思えない

内緒で昔の彼と会う。普通の感覚だと葛藤や後ろめたさがあるはずだが、彼女にそんな思いはまったくないようである。むしろ、相手は今も私のことが気になっているはず、との自信すらあったようだ。

このポジティブさ、言い方を変えれば図太さが、彼女の最大の武器でもあるのかもしれない。

そして、実際その通りだったという。

「やっぱり彼、ずっと私のことが忘れられなかったみたいです。前よりもっと綺麗になったとか、あの時意地を張らずに強引に引き留めればよかったとか、いろいろ言ってくれました。彼、奥さんとあまり上手くいってないらしくて、そのタイミングで私から連があったから、これは運命かもしれないって思ったようです。私も月日はたったけれど、会ってみるとそんなに離れていたような感じがしなくて、瞬く間に距離が縮まりました。それで二度三度と会ってゆくうちに、結局、私たちはこうなることが決まっていたのかもしれないって思うようになったんです」

しかし、男は口でどれほど上手いことを言っても、そう簡単に家庭を捨てられない。

「私もそう思っていたんですけど、付き合い始めて1年もしないうちに、本当に彼は離婚したんです。すぐに彼から、娘も引き取るし、慰謝料も全部払うから結婚して欲しいって言われました。それで私も決心がついて、夫に離婚を切り出したんです」

出来るものなら、ここらで泣きを見る目に遭って欲しいところだが、そうならなかったのは世の不条理というもの。

とはいえ、あなたはそんな簡単に離婚できないのでは?

「夫に切り出したら、青天の霹靂だったようで、それはもう罵倒されました。人として、親として、責任というものをどう考えているんだって。あんな激昂した夫を見るのは初めてでした。その様子を見ているうちに、ますます気持ちは冷めていきました。それで私、言ったんです。心が離れた人と夫婦でいることが責任ある行動とは思えないって。私は自分に正直に生きてゆきたいって」

まったく夫に同情する。浮気する自分を正当化するために、こんな青臭い理屈をしゃあしやあと述べる妻とどう向き合えばいいのか。しかし、こんな女を選んだのも夫である。

そして、過去を蒸し返すようだけれど、夫にもあの時、婚約者がいながら他の女に心を動かされたという前科がある。

今付き合っているのはカフェのバイト

「半年ほど揉めに揉めて、最終的に夫はこれは報いなのかもしれないって言い始めました。そして、心のどこかで、いつかこういう日が来るんじゃないかって思ってたって」

その冷静さを結婚前に持ち合わせていたら、夫もこんな羽目には陥らなかっただろうに。それにしても、その時の夫の絶望感というか、虚脱感というか、想像に難い。

「離婚が成立してすぐに彼と一緒に暮らし始めて、100日間の再婚禁止期間の後入籍しました」

娘さんの反応はどうだった?

「最初は戸惑っていたようですけど、彼にいろんなもってもらったりしているうちに、いです。2年後には息子も誕生して、私もそれをきっかけに家庭に入って、今は家族4人、とても仲良く暮らしています。彼、結構収入もいいので助かっています」

今の結婚に満足している?

「もちろん。これからも家庭を大切にしていきます」

いろいろあったけれども、収まる所に収まったわけだ。まあ大団円としておこう。

じゃあそろそろ、と、話を切り上げようとしたところで、彼女が言った。

「でも、どんなに幸せでも、恋愛体質って治らないんですよね」

思わず彼女の顔を見直した。もしかして、今も恋愛をしてるの?

「だって、恋愛って事故に遭うようなものでしょう。そんなつもりじゃなくても、出会ってしまったら、どうしようもないじゃないですか」

そうして彼女は、今付き合っているカフェのバイトの男の子、その前のスポーツクラブのマッチョマン、前の前のママ友のパパの話をしたのだった。

少しも悪びれずに。むしろ無邪気に、自慢げに──。

そんな女に関わってはいけない

これを読んで、憤惑やるかたないになる女性がいるのはよくわかる。

そんなうまくいくはずがない。いずれ痛い目に遭うに決まっている。遭ってもらわなければ納得いかない。遭うべきだ。

けれども、世の中が決して公平ではないということは、とうにわかる年齢になった。どんなに努力しても、誠実に生きても、結果が伴うとは限らない。やりきれないことではあるが、人生は不平等で成り立っている。どんなに神様を呪おうとそれは覆らない。

だからこそ、今自分の手の中にある幸福を大切にしよう、誰かと自分を較べるのはやめよう、人は人、私は私であると、賢明な考え方を身に付けたはずである。

ここで言ってしまおう。

正直なところ、奪う側の闇云々などどうでもいいのである。

問題は、彼女のような女と関わらざるを得なくなった女性の方である。

美味しいところだけをまんまと味わい、悪びれもせず、のうのうと生きている。

そんな女など放っておけばいい、とわかっていながら、どうにも無視できなくなってしまう。いろんな感情が混ざり合ったこの心のざわつきを、どう納めればいいのだろう。

実はそんな迷路に迷い込んでしまい、人生に躓いた女性を2人、知っている。

2人は何も恋人や夫を奪われたわけではない。それなのに、痛い目に遭うという、不運を味わうはめに陥った。

ひとりめのA子は、彼女のような女を友人に持った女性である。いつの間にか彼女の奔放さに影響されたA子は思うのである。自分は何て平凡でつまらない人生を送っているのだろう。もっと違う生き方があるのではないか。自分も彼女のように思うがままに生きていいのではないか。

焦りに似た思いにかられたA子は、不倫に走るのである。「やらない後悔より、やる後悔の方がマシ」と、呪文のように唱えながら。

しかし待っていたのは厳しい現実だった。不倫はバレ、夫から離婚を突き付けられ、多額の慰謝料を請求され、子供たちの親権監護権まで取られてしまった。更に、土壇場になって不倫相手は家庭に戻ってゆく。

仕事を持っていたのが唯一の救いだったが、会社にも噂は広がり、陰口を叩かれているのもわかっている。が、子供たちへの養育費と、生活のために辞めるわけにはいかない。今も肩身の狭い思いで出勤しているという。この状況を「自業自得」と言われるがいちばん応えるそうだ。だってまさしくその通りだから。

「どうして私、こんな人生を選んでしまったのだろう」

A子の後悔は尽きないままである。それはこれからも続くだろう。

そしてもうひとりはB子。

奔放なママ友と知り合ったB子は、彼女の度重なる不倫を知って義憤にかられるのである。たまりかねたB子は、やがてママ友の夫、義父母、実家の両親、ご近所、友人たちに、その所業を書き連ねた文書を匿名で送りつけたのである。結局、それは怪文書として警察沙汰にまで発展し、差出人である彼女が突き止められた。

その時、自分のしたことが名誉棄損に当たると知り、頭が真っ白になったとB子は言った。まさかそこまで大事になるとは想像もしていなかったのだ。

当のママ友は、確たる証拠がないことでシラを切り、非難されるどころか、被害者という立場になって周りの同情を得ることになった。逆にB子は陰湿な人間だと周りから白い目で見られるようになった。夫は呆れ果て、更にそれが原因で子供がイジメに遭うのではないかと恐れて、結局、引っ越しせざるをえなくなった。

あの時は「ただ、あの鼻持ちならない女に反省してもらいたかった」と思っていたそうだが、今となると、どうしてあんなことをしてしまったのかわからないという。

「結局、彼女に嫉妬していたんだと思います」

B子はすっかり憔悴した様子で眩いた。

何て馬鹿な真似を、と呆れる人もいるだろう。けれど、誰もが心の中に魑魅魍魎を抱えている。悪いタイミングが重なると、相手への腹立たしさと自分への不満がごちゃまぜになって、歯止めが利かないまま、突っ走ってしまうことにもなりかねない。

だからこそ思うのだ。

もし今、あなたのそばに彼女のような女がいたら、すぐに距離を置くことをお勧めする。

極力顔を合わせないようにし、連絡を絶ち、関りを持たないように努める。彼女に対する嫌悪を含むすべての感覚を捨て、今自分が手にしている幸福を噛み締め、あんな女など元々いなかったことにする。

言えることはただひとつ、そんな女に関わってはいけない、それだけである。

写真/shutterstock

男と女:恋愛の落とし前 (新潮新書)

唯川 恵 (著)

2023/10/18

¥924

256ページ

ISBN:

978-4106110177

不倫はすることより、バレてからが本番――
恋愛小説の名手が実話を元に贈る「修羅場の恋愛学」。
著者初の書下ろし恋愛新書

男は世間体をとり、女は自分をとる――。12人の女性のリアルな証言に基づく恋愛新書、爆誕!

他人の男を奪い続けて20年、何不自由ないのにPTA不倫に陥り家庭崩壊、経済力重視で三度離婚など、36歳から74歳までの、未婚、既婚、離婚経験者12人の大人の女性のリアルな証言を、直木賞作家・唯川恵が冷徹に一刀両断。

「大人の恋には大人の事情があり、責任がある」「恋愛は成功と失敗があるのではない。成功と教訓があるだけ」――恋に浮かれる人にも不倫の愛に悩む人にも、人生を狂わされた人にも。

説得力のある珠玉の名言集にして、著者初の新書。

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