まあ高校2年という年齢のせいにしてしまえばそれまでかもしれないが、どうしてあんなに自意識が大きくなっていたんだろうか? 中学の頃とは違う、中学の頃よりもタチの悪い念が渦巻き沈澱していたのだ。 何者でもない自分を棚に上げて俺はお前たちと違うんだよ、俺はお前らと一緒にくすぶってるような人間じゃねえんだ! そんな内なる魂の叫びを一瞬でも外に漏らしたら、入学以来築き上げてきた“当たり障りのない樋口くん”が崩壊してしまう。
本当の俺、破壊、恐怖、絶望を好み、死と血を愛する俺様がなぜ、唾棄すべき凡俗どもに「樋口くんヤバくない?」などと言われなければならないのか? この俺の崇高な理想が理解できないお前たちに俺の本当の姿を教える必要なんてない!
おい40年前の俺! そういうこと思ってもいいけど、ノートの端っこにびっしり描いたら消すか焼くかしたほうがいいぞ。残すな! いまの俺が見たらもう死にたくなるほど恥ずかしいじゃないか。過去の俺が未来の俺を攻撃するとは、逆ターミネーター。やるな40年前の俺。すげえダメージだ…!
中学2年から高校2年までの3年間に何が起きたのか。もちろんマンガや特撮やアニメや映画を中心に生きてきた訳ですが、それを包括しつつ大きな流れというかうねりのような動きが、社会の中に始まっていました。
サブカルです。サブカルがやってきました。
「ビックリハウス」「宝島」といった雑誌の、社会の隙間、重箱の隅をつついてうすら笑いを浮かべるセンスかっこいい! 音楽はYMOから派生したニューウェイブのエッジの効いたサウンドやべえ! 王道を嘲る斜め向きな姿勢が最先端だと、今にして思えば勘違いも甚だしいのですが、いずれなっていくであろう大人に対して翻せる唯一の反旗がサブカルでした。
なんせ中学生から高校生にかけてだから仕方ない。 友達の少ない、教室に居場所のない奴らが自己正当化のために纏う鎧、それがサブカル! そして文学界のサブカル選抜といえば、リュウ! リュウ・ムラカミ! 村上龍先生ですよもう!