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「クレヨンしんちゃん」「サザエさん」の家はセーフで「ちびまる子ちゃん」の家はアウト…実家の空き家が“昭和の負の遺産”になるボーダーライン

集英社オンライン / 2023年12月5日 12時1分

2018年に総務省が発表した調査によると、全国に約840万軒もの空き家があるのだという。高齢化社会が加速する日本で、団塊世代の相続が進み、空き家が急増しているらしい。現在、“昭和の負の遺産”と言われ問題視されている「空き家問題」について、不動産評論家の牧野知弘氏に聞いた。

“昭和の負の遺産”とも言われる現在の空き家問題、そもそも何がネックなのか

空き家調査が開始された1960年代から、空き家率は増加の一途をたどるばかり。いまや7軒に1軒は空き家という実態があり、持ち家率が高い団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年以降、さらに急増する恐れがある。

ただ、そもそも空き家であることは何が問題なのだろうか。



「空き家問題には大きく分けて3つの問題があります。1つ目は建物の老朽化による景観の悪化や、草木の繁茂によることによりハクビシンや害虫などが住み着くといった住環境の問題。

2つ目は台風やゲリラ豪雨、地震などの自然災害による建物倒壊など、災害時のリスクが高まる問題。

3つ目は不法投棄や不法侵入、敷地内の設備や物品の盗難といった被害に合う治安の問題。空き家に放火するというような事件もあり、犯罪の温床となってしまう可能性が高い。

このように長らく放置されている家は景観・環境・災害・犯罪など、さまざまな問題を引き起こす要因となってしまうのです」(不動産評論家・牧野知弘氏、以下「」内コメントは同)

写真はイメージです

それならば、所有者はすぐに解体や売却をしたほうがよさそうだが、それができずに放置されてしまう理由は何なのか?

「ご両親の思い出として残しておきたいという人もいますが、いちばんのネックになっているのは解体・更地化したときにかかる税金や費用などの金銭問題。

現在、産業廃棄物のルールが厳しくなり、作業自体が複雑化してしまったため、建物の解体費用が非常に高騰していて、標準的な一軒家でだいたい150万円、少し広めの家だとおよそ200万円もかかってしまうのです。

そして不動産の条件によっては、建物を解体して土地を売却しても手元にお金が残らず、むしろマイナスになってしまうといったケースも多々ある。父母世代、祖父母世代が建てた家にまったく価値がなく、逆に手放すためにお金がかかってしまうという空き家が、“昭和の負の遺産”と呼ばれているのでしょう」

『クレヨンしんちゃん』『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』の家の資産価値

相続した家にどのくらいの資産価値があるのか、さらにいうと売却する場合にどれぐらいプラスになるのかマイナスになるのか、見当がつかないという人も少なくないだろう。

そこで、国民的アニメともいえる3番組『クレヨンしんちゃん』『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』に登場する家を例にうかがってみた。

まずは平成初期(昭和後期)に建てられたであろう『クレヨンしんちゃん』の一戸建て住宅。

写真はイメージです

今回は『クレヨンしんちゃん』の家を【春日部駅(埼玉県春日部市)から徒歩約8分】・【敷地面積:115㎡】・【4DKの木造二階建て】・【平成初期(昭和後期)に建築】と仮定する。(※公式設定ではなく本稿独自の仮定のデータ、以下同)

「この情報だけでは詳しく査定はできませんが、木造家屋は法定耐用年数が22年とされており、不動産業界ではこれに倣っておおむね築25年以上の木造家屋については価値ゼロと査定するのが慣例です。

そのためこの建物自体にはまったく価値がないので、150~200万円かけて更地にすることが前提になります。そして春日部駅から徒歩10分程度の土地であれば、1坪あたり20~30万円程度で売れるでしょう。

115㎡は坪数にすると35坪程度なので、仮に坪20万円だとしたら700万円程度、坪30万円なら1050万円程度で売却できる計算です。ということで低く見積もっても500万円以上はプラスになりますので、いわゆる世間で騒がれている“昭和の負の遺産”には該当しない物件と言えるでしょう」

では次に『サザエさん』の家はどうだろうか。

写真はイメージです

今回は『サザエさん』の家を【桜新町駅(東京都世田谷区)から徒歩約5分】・【敷地面積:220㎡】・【5DKの木造平屋建て】・【昭和前期に建築】と仮定する。

「こちらも建物自体には全く価値がないので、売却しようと考えるならば解体するのが前提となります。ただ、世田谷区の桜新町駅から徒歩5分というかなりの好立地であることを考えると、1坪あたり150万円程度で売却できるのではないでしょうか。

220㎡は67坪程度になるため、1億円ぐらいの価値がある物件だと推定できますね。当然“昭和の負の遺産”どころか、立派な遺産と言えるでしょう」

『クレヨンしんちゃん』や『サザエさん』の家は、首都圏にあるため駅までの距離が資産価値に大きく関係するとのことだが、地方となるとそうとも限らないそうだ。そこで次は静岡県にある『ちびまる子ちゃん』の家で考えてみたい。

写真はイメージです

今回は『ちびまる子ちゃん』の家を【入江岡駅(静岡県静岡市)から徒歩約10~15分】・【敷地面積:約150㎡】・【4DKの木造平屋建て】・【昭和前期に建築】と仮定する。

「先の2例と同じく建物には価値がないので、解体するのが前提となります。ただし、地方にあるという立地や中途半端な土地の広さを考えると、坪あたり5万円〜20万円程度でしょうか。

しかし、解体して更地にしても需要があるかどうか微妙なところでしょう。最寄駅から徒歩で帰宅できる場所ではありますが、地方に行くほど車社会となるため、駅からの距離はさほど重要視されないからです。

売りに出したとしても“絶対に売れる”と保証できない条件ですので、この不動産を相続するとなるとかなり苦労することになりそうです。いわゆる“昭和の負の遺産”と呼ばれる物件に該当してしまう可能性はあるでしょう」

一軒家に比べてマンションはさらに注意!?
不動産相続で困らないためには…

空き家問題は一軒家に限った話ではない。分譲マンションはさらに注意しなければならないそうだ。

「一軒家以上にマンションの空き部屋は厄介です。自分の部屋だけを一生懸命リフォームやリノベーションしても、マンション自体の設備や環境が古ければ売れにくくなってしまうからです。

そして、マンションの共用部分を整備し直してほしいと考えたり、いっそのことマンション全体を取り壊してほしいと考えたりしても、他の住民の反対が多ければ実現不可能です。

そのため相続してしまうと、一軒家と比べて自由度が低いうえに、毎年の固定資産税や、毎月の管理費、修繕積立金などがかかり続けるため、“負の遺産”となりかねないのです」


写真はイメージです

最後に、自身が相続する可能性がありそうな不動産がある場合の注意点は?

「ネット検索をすれば不動産屋に行かなくてもだいたいの相場はわかりますので、自分が相続しそうな不動産の価値は今からでもチェックしておくべきです。そして“負の遺産”になりそうな場合は、そういった空き家を放置した状態が長引くほど問題は深刻化していくので、その不動産をどうするべきか、なるべく早めに親族で話し合ったほうがいいでしょう。

特に地方や郊外の不動産は今後価値が上昇する見込みはほとんどないため、できるだけすぐに売るというのが最善の対処法になります。実際に相続してからでは後手にまわってしまいますので、両親や親族同士で持っている不動産情報を開示しておくことも重要です」

取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio)

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