「喜ばせたい人10人」を記入して甲子園優勝を勝ち取った慶應メンタル。やる気が1万倍にもなって長続きする「他喜力」の強さ
集英社オンライン / 2023年12月20日 11時1分
107年ぶりに甲子園優勝を果たした慶応ナインたちが日々の練習や生活の中で主体的に実践し、体得したSBT(スーパーブレイントレーニング)について解説する。ここ一番で実力以上の力を発揮して日本一に輝くことができた“慶応メンタル”のメソッドとは。『慶應メンタル - 「最高の自分」が成長し続ける脳内革命』 (ワニブックス) より、一部抜粋・再構成してお届けする。
KEIO Mental #23
人を喜ばせたいという気持ちが大きな力になる
ぼやっとした目標が輪郭をつくる
目標の達成にはある「大きな力」が欠かせません。
それは他人を喜ばせる力です。SBT(スーパーブレイントレーニング)では「他喜力」と呼びます。対する言葉が「自喜力」です。
たとえばビジネスだったら、「他喜」とはお客さんの幸せでしょう。選手たちにとっては誰なのか。親か家族かもしれませんし、友人かもしれません。試合に出られない仲間かもしれません。
人間とは自分と同じくらい、他人を喜ばせることが好きなのです。その理由は、私たちには人を喜ばせたいという本能があるからです。
嬉しいという喜びの気持ちをもたらす素、動機付けには自喜と他喜のふたつがあります。
この項目では他人を喜ばせることに主眼を置いてお話をしますが、自喜と他喜はどちらも大切なものです。なぜなら、自喜は自分自身の行動意欲や行動力を高める「楽しい」「ワクワク」というプラス感情であるからです。
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SBTの講習の他喜に関するワークの中で選手たちに、喜ばせたい人の名前とその理由について10名分書いてもらいました。
そして、そのなかで一番喜ばせたい人を選んでもらい、その人を喜ばせるイメージトレーニングを行いました。この最も喜ばせたい一人のことを「No.1サポーター」と言います。これまでの経験では、「No.1サポーター」として母親を挙げるケースが最も多く、便宜上ここでは母親とさせてもらいます。
自分が大きな目標を達成して、母親を喜ばせるシーンを想像してもらいました。優勝した瞬間に、母親はどこにいて、どんな表情をしているのか、後で自分にどのような言葉をかけてくれるのか。その時の様子をできるだけ詳しく思い浮かべると、思わず涙を流してしまう選手もいます。
そのあとは4〜5人のグループになって、イメージトレーニングを行った実感について話し合ってもらいました。
皆一様に「がんばろうと思った」「力が湧いた」と前向きな感想が多く、やはり他人を喜ばせたいという思いが私たち人間にはあるのです。
それまで、ぼやっとしていた人を喜ばせたいという気持ち、その輪郭がくっきりすると、誰かを喜ばせたい、誰かのために、という思いが大きな力になるのです。
KEIO Mental #24
最後に背中を押してくれるのは誰かの応援
他喜力は燃え尽きない
他喜力で思い出されるのは、2011年ドイツW杯で優勝した〝なでしこJAPAN〞のことです。
東日本大震災で国内が混乱している大変な時に、しかも国内のアスリートたちがボランティア活動をしているというニュースが伝わる中、彼女たちは、「日本が震災で大変な時に、海外の大会に参加していていいのか」という葛藤があったといいます。
でも、W杯で自分たちが勝つことによって被災者や日本国民を勇気づけることができるのなら、という思いで参加し、優勝という快挙を成し遂げました。
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他喜力がなぜ強いのか。
それは自分の喜びだけを追求して行動していると、私たちはくじけやすいからです。
失敗しても「次にがんばればいいか」と思いますし、失敗を重ねて壁に跳ね返されるうちに自己防衛本能が強く働きすぎると自己を正当化するがあまりに、できないことを人のせいにしてしまう傾向を私たちが持ち合わせているからです。
夢や目標を設定するときには、自喜のワクワク要素に、「誰かのために」という要素を加えることが、とても重要になるのです。
喜ばせたい対象が明確になると、苦しい状況に直面しても乗り越えようとする気持ちが強くなります。たとえば、世界の人を幸福にしたいという思いは素晴らしいものではありますが、対象が広すぎては漠然としてしまいます。一方、母親を喜ばせたいという思いであれば、どうしたら喜んでくれるか、どんなふうに喜んでくれるかなど、具体的なアイデアが湧いてくると思います。
塾高の選手であれば、日本一という目標を達成するために努力をしている姿を見せることが、そして、日本一を達成することこそが他喜をもたらす最大のものと思えるようになるでしょう。
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他喜力は、くじけそうになったときだけでなく目標の達成が見えたときにも実は有効なのです。ゴールが見えた途端に安心してそれまでのペースをゆるめてしまった経験はありませんか。私たちの脳は満足感を覚えると、油断・慢心などを引き起こしてしまう傾向があります。バーンアウト(燃え尽き)症候群と呼ばれるものです。
そんな時に、応援してくれる人に感謝の気持ちを届けたい、喜ばせたいという気持ちがあれば脳を満足させることなく、さらに努力・精進し続けられるのです。
KEIO Mental #25
喜ばせたい10人を書き出す
喜ばせたい人10人でやる気は1万倍に
先ほど、喜ばせたい人とその理由を10人分を書き出してもらうワークを実施したことをお話しました。それらを書き出すことで、自分が想像以上の多くの人に支えられてきたことに改めて気づくと共に、その感謝の思いは脳に深く刻まれます。
これまで「誰かのために」ということを常に考えてきたと言い切れる人はそれほど多くはいないでしょう。
でも、誰かを喜ばせるためにがんばってみようと思うと、今までとは違う力が湧いてくるのを感じると思います。なんとも清々しく強い力があなたの背中を押すのを感じるはずです。
そして、誰かのために、と思って主体的に行動する姿は、チームメイトにもいい影響をおよぼします。
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楽しい、ワクワク、好きという自喜の要素だけでは乗り越えられないことが世の中にはたくさんあります。しかし、そこに「誰かのために」という他喜の要素を加えることで大きな力が生み出され、さらなる高みを目指すことができるのです。
喜ばせたい人の名前と理由を10名書き出す前の他喜の力が1だとしたら、ワーク後には100になり、そしてその10名に面と向かって喜ばせたい理由を告げると、他喜の力はさらに100倍増え、10000になると伝えています。
おそらく気恥ずかしいことでしょうが、それを乗り超えた時、大きな力を手にしたと感じることができるでしょう。
文/吉岡 眞司 監修/西田一見 写真/shutterstock
『慶應メンタル - 「最高の自分」が成長し続ける脳内革命』(ワニブックス)
吉岡眞司 (著)、 西田一見 (監修)
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/12/14045936026993/400/555.jpg)
2023/12/5
¥1,540
200ページ
978-4847073892
前評判では、戦力的には決して高いとは言えなかった慶應高校野球部ナインは、なぜ2023年夏の甲子園で107年ぶりの優勝を果たすことができたのか?
そこは彼らが1年にわたり続けた、「誰でもプラス思考になれる」メンタルトレーニング=SBTスーパーブレイントレーニングの効果によるものが大きい。
SBTとは、①成功を信じる「成信力(せいしんりょく)」、②苦しい状況を楽しむ「苦楽力(くらくりょく)」、③他の人を喜ばせる「他喜力(たきりょく)」からなるメンタルトレーニング。
SBTのトレーニングを重ね、ピンチの状況にもワクワクする力を手に入れた慶應ナインの甲子園での活躍を追いながら、SBT式最強メンタルトレーニングメソッドの実践方法を詳しく紹介する。
書籍内では慶應義塾高校野球部・森林貴彦監督や、夏の甲子園大躍進を担った部員たちのインタビューもたっぷりと掲載。
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