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「別荘所有者の納税は年5500円!?」 ぶっちゃけ山中湖で別荘生活をするとどれくらいのお金がかかるのか? デュアルライフのお財布事情

集英社オンライン / 2023年12月9日 12時1分

東京で生まれ育ち、働き、家族をつくってきた筆者は、なぜデュアルライフ(二拠点生活)を始めたのか。東京と山中湖を行き来しながら暮らす日々を軽快に綴った『山の家のスローバラード 東京⇔山中湖行ったり来たりのデュアルライフ』(百年舎)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

別荘所有者の納税は年5500円!?

デュアルライフをする場合、税金とか行政手続きってどうなるの? という疑問を持っている方も多いようです。僕はそういうちゃんとした話が苦手な根っからのボンクラサブカルオヤジなのですが、自分の頭を整理するためにも今回ばかりは少し真面目に話をしようと思います。

まず根本的なこととして、日本の法律では、住民登録って一人一箇所しかおこなえないんですって。そんなベーシックなことすらよく知らなかったので、デュアルライフのスタート時に、僕はこっちにも住民登録的なものが必要なのかと思い、勢いよく村役場に駆け込みました。すると役場の人は(はいはい、また間抜けが来ましたよ)とでも思ったのか、子供に教えるように優しくレクチャーしてくれました。



いくら山の家を持っていても僕の場合、ベースは東京なので住民登録は世田谷区のみ。山中湖村に住民票はありません。当然、基本的な納税先も選挙の投票も、東京都&世田谷区。そして、東京都&世田谷区から各種行政サービスを受けています。

でも山の家がある山梨県・山中湖村に対しても、納税義務があります。まず家・土地の評価額に応じて県に収める固定資産税。これはまあ、仕方ありませんね。

他にもあります。村内に別荘がある個人は住民登録をしていなくても〝家屋敷課税〟の対象となり、村県民税の均等割分を収めなければならないのです。「ほら! やっぱデュアルライフってコスパ悪!」と思うかもしれません。でも、落ち着いてください。よく考えたら、これは当然なのです。だって山の家で暮らしている間は、デュアルライフ民といえども上水道の使用や、ごみの回収・処理をはじめとする様々な行政サービスを自治体から受けるわけですから。

山梨県・山中湖村の場合、別荘所有者の村県民税額は、定額で年5500円(村3500円・県2000円の割合)。安いと思いません? 東京で払っている住民税と比べたら、タダみたいなもんです。これすらも〝ダブルで納税するなんてもったいない〟と思うようなら、そもそもデュアルライフには向いていないのかもしれません。僕は「ナイスコスパ!」と拍手したくなりました。

季節が真冬になると、都会にはない行政サービスで、激しいありがたみを感じることもあります。それは除雪。年によって差はありますが、寒冷地の山中湖村は雪が深く降り積もることがあります。

でも我が家の前の細い道路を含め、村内の道が雪で埋まって通行不可能になることはまずありません。冬になると道路の要所要所にはあらかじめ、積雪と凍結を防止する融雪剤がまかれているし、少しでも積もったらすぐに村が除雪車を出し、こまめに雪を取り除いてくれるからです。雪の日に除雪車とすれ違うと、感謝の気持ちでいっぱいになります。「5500円しか払ってないオミソですみません」と思いながら。

「え? 下水がないの?」 デュアルライフの水回り事情

逆に都市部では当たり前なのに、こちらには存在しない行政サービスもあります。それは下水です。我が家がある区域には、そもそも下水道が通っていないのです。

「え?」とびっくりする方は都会人ですね。僕も最初は驚きました。ずっと都市部で生活してきた身としては、下水道なしで日々の暮らしが成立するとは思えなかったのです。

我が家から出る排水は、下水道ではなく「浸透式」という方法で処理されています。人口密度の高い都市部では、排水は公共下水へ接続するのが当たり前ですが、人口の少ない山間部などでは各家庭で独自に汚水を処理しているのです。

僕は最初に不動産屋さんからかような仕組みについて説明を受けた際、意味がわかりませんでした。「この家はここらに浄化槽が埋まってますからねー」と庭の一部を指し示されましたが、「じょ、じょーかそー?」と志村けん口調で聞き返してしまったほどです。お風呂の水もトイレの水も台所の水も、家から出た排水は一旦、敷地内に埋設された浄化槽に貯まります。そして浄化槽内での処理行程を経てきれいになった水は、そのまま地中に浸透させるのです。

「え? 庭の地下に一旦ウ○コ貯めちゃうの? それって……」と、最初は戸惑いました。

でも結論から言うと、まったく問題ありませんでした。昔のことはわかりませんが、きっと現代の浄化槽はかなり優秀なのでしょう。うっすらともニオったことはないし、水は普通にジャンジャン流せるので、下水道式の都市生活との差異を感じることはありません。

浄化槽は定期的な保守点検、清掃、そして法定検査が義務付けられています。我が家の田舎暮らしの最大の情報源であるお隣の奥さんの話によると、それらを怠るとごくたまーに浄化槽が詰まることもあるそうです。そうなると家中の排水溝の水はけが悪くなり、下手すると汚水があふれたりして大変なことになるうえ、浄化槽の修理費用もバカにならないのだとか。

まあ大丈夫なんじゃないの? もしトラブったら、その時はその時で。

なーんて大雑把なマインドも、デュアルライフには必須なのです(たぶん)が、浄化槽に関してはそうも言ってはいられません。浄化槽が正常に動作しなくなると自分が困るだけではなく、最悪の場合、周囲の環境汚染にもつながることがあるそうです。我が家もきちんと点検、清掃、検査をおこない、快適で正しいノー下水ライフを送りたいと思います。

ウェルカムカードで、温泉は500円引きに

デュアルライフ民は純・村民と観光客の中間的な存在ですが、山中湖村ではそんなハーフポテトな俺たちの生活向上のため、申請すれば「ウェルカムカード」というものを発行してくれます。このカードを提示すれば、村営の様々な施設を村民待遇(無料もしくは半額以下)で利用することができます。

2021年に発行したウェルカムカード

ウェルカムカードの恩恵をもっとも強く感じるのは、温泉に行くときです。村内には「紅富士の湯」と「石割の湯」というふたつの立派な村営温泉があり、我が家は季節を問わず頻繁に利用しています。両者とも大人の一般料金は900円。ところがウェルカムカードを提示すれば、同行者も含めて5名までは村民価格の500円で利用できるのです。温泉好きにとっては、これほどありがたいことはありません。

通常は600円の入場料がかかる山中湖花の都公園の入場料は100円に、入館料500円の三島由紀夫文学館(および併設の徳富蘇峰館)は無料。また、ウェルカムカードに伴って発行してもらえるパスカードを使えば、それらの施設の駐車場はすべてタダになります。数百円ずつの節約といえども、この2種のカードのおかげで行動範囲が随分と広がった気がします。

〝ウェルカムカード〟というのは、とてもいいネーミングだと思います。将来のデュアルライフを考えながらも、果たして地元から歓迎してもらえるのかと心配している人もいるでしょう。この際、断言しておきます。大丈夫ですよ、ウェルカムしてもらえます。

写真・文/佐藤誠二朗

『山の家のスローバラード 東京⇔山中湖行ったり来たりのデュアルライフ』

佐藤誠二朗 (著)

2023年11月15日発売

2200円(税込)

264ページ

ISBN:

978-4991203923

東京で生まれ育ち、働き、家族をつくってきた筆者は、なぜデュアルライフ(二拠点生活)を始めたのか。東京と山中湖を行き来しながら暮らす日々を軽快に綴ったエッセイ集。コロナ禍を経て、新たな暮らし方を模索する全てのひと必読の書。

著者が山中湖村にある“山の家”を手ごろな価格で手に入れたのは2017年のこと。以来、東京の家との二拠点生活=デュアルライフがはじまる。コロナ禍で「この機会に景色のいいところに住んでみよう!」と思った人も少なくないはず。ここにはそんなデュアルライフのリアルが描かれている。

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