牛肉、マグロ、小麦では他国に買い負ける経済力しかない日本に餓死者が溢れかえるかもしれない恐怖の未来…2035年にはG7脱退の危機も
集英社オンライン / 2023年12月16日 11時1分
農学博士の高橋五郎氏曰く、日本の食料自給率は、農林水産省の試算による38%(令和4年度)どころか、実際には18%しかなく、2023年の現在は輸入の力で賄うことができているだけの状態だという。だが経済力が低下し続けると食料の輸入が困難に、人口減少で農家が減るとさらに危機的な状況になっていくという。日本の暗い未来を『食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日』から一部抜粋・再構成してお伝えする。
日本のXデー
21世紀に入ってから、世界人口の3割はすでに飢餓におかれていたと見込まれる。飢餓の分かれ目となる1人年間500キログラムの穀物を自前では確保できない人口のことである。
500キログラムを人口の数だけ掛け合わせた穀物の量が世界の穀物必要量となるが、当然なことだが人口が増え続ける限りこの数字も増え続ける。
2019年の38億6000万トンが2023年に40億トン、2038年に45億トン、2059年に50億トン、2087年まで増え続け、52億トンでピークを迎える。しかし予測される生産量は必要量を大きく下回る。毎年の穀物生産予測量を必要量で割ったものを「世界穀物充足率」とすると、2019年78%、23年79%、37年81%、生産がピークに達する39年81%、57年72%、89年62%、95年60%という数字になる。
過去の経験値から「世界穀物充足率」が70%以上であれば、経済力のある国は貧しい国を押しのけて自国の必要穀物を量的に確保(輸入)できるようだが、この充足率が60%台に突入する64年以降に起こる事態は予測がつかない。
経済力のある国民は、不足を輸入でしのぐことができるので飢餓そのものに陥ることは避けられてきたが、実質的には「隠れ飢餓」といえる状態にある。他方では経済力の乏しい国民に飢餓を押し付けていることになり、食料危機はほとんどの国が抱える問題であり続ける。
日本はその「隠れ飢餓」にある国の1つだが、「見える飢餓」の国と合わせると、そこに住む実質的な飢餓人口は2019年には17億4000万人を数える。2030年頃、穀物生産量の増加から、飢餓人口はいったん減少して16億4000万人になると予測できる。しかし世界人口が急増する2035年に再び増加、17億2000万人となる見込みである。
日本が飢餓を隠し続けられるかどうかは
経済力水準にかかる
さらにその後は人口の増加の一方で穀物生産量の頭打ちから、飢餓人口は再び増加の足を速める。穀物生産量がピークを越えるのは2047年、飢餓人口は22億5000万人、2062年に30億人、2089年には40億人を超えると予測される。もちろん、この予測は飢餓の世界的な拡張が人口の増加を抑えてしまうことがない限りのものである。
このような世界の食料供給システムの下で、日本が飢餓を隠し続けられるかどうかは、経済力水準がいまと同じくらいにとどまることができるかどうかにかかっている。日本はGDPの世界ランキングが低下し続け、2035年頃には残念なことだが、G7から脱退せざるをえない可能性を否定できないほどだ。
すでに国際食料市場現場では、日本の経済力の弱体化を反映して、アメリカ産やオーストラリア産牛肉・中国産の卵・小麦・大豆・クロマグロ・イカ・タラバガニなどを他国に買い負ける事態が広がっているという。
日本が買い負けを続けるようになると、食べる量や質を落とさざるを得なくなろう。国産を増やそうにも経営環境の厳しさが増し、そこに農家がいなくなる事態も捨てきれない。信じたくはないが、日本には、このⅩデーが刻々と近づいて来ていることを真剣に考えなければならない。
100万人の餓死者
けっして過大な数字ではない。毎年の餓死者の数である。国連関係者の見方はもっと厳しい。
2019年の餓死者をWFPは113万人としたが、世界の飢餓状態にある人口17億4000万人の0.065%に相当する。なおWFPは別のところで、毎年300万人以上の子どもが食料不足が原因で死亡しているというが、この数字の背景には新型コロナの流行が遠因となっており、平年ベースではもっと少ないであろう。
これらの状況を勘案して、本書では年間の餓死者が最低でも100万人は下らないととらえ、この割合を使って今後の数を予測してみた(餓死者数の推計については巻末の「4年間餓死者数の根拠」参照)。
いまみたように世界の飢餓人口見通しは増加する傾向にあるので、これとリンクして餓死者の数も増える見込みである。その具体的な数は、2030年107万人、2035年111万人、2040年119万人、2050年157万人と見込まれる。
一般に、餓死者の死因認定は難しいとされる。飢餓が原因で病気に罹患する場合、飢餓が直接の死因の場合もある。また餓死は病名ではないので、医師が死因を別の病気や理由にしなければならない。だから実際の数はもっと多い可能性も否定できないが、100万人と聞いただけでも、こんなにもたくさんの人が飢餓のために命を落とすのかと驚かされる。
しかし、先進国日本の餓死者数(推定)と比較するかぎり、けっして過大な推定ともいえないようである。日本の場合にも餓死を死因とする統計はなく、「人口動態調査」(厚労省)から飢えが原因となる死因(たとえば栄養失調症)の死亡者数で、餓死者数を推定するしか方法はない。
そのようにしてたどり着いた日本の餓死者数は、2021年の場合で2010人程度である。日本より経済状況が劣る国の数や人口などを念頭におけば、あながち多すぎるともいえず、背中に悪寒が走る数字ではある。
写真/shutterstock
食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日(朝日新聞出版)
高橋 五郎
10月13日発売
979円
240ページ
978-4022952127
日本の食料自給率は38%──実際は18%でしかなかった! 有事における穀物支配国の動向やサプライチェーンの分断、先進国の食料争奪戦など、日本の食料安全保障は深刻な危機に直面している。本書は182か国の食料自給率を同一基準で算出し世界初公開する。先進国の「隠れ飢餓」という実態を暴く。
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