「僕ら野球下手くそだから」オリックス阿部翔太がファンの応援があってこその野球と思い知った社会人野球時代のある試合
集英社オンライン / 2023年12月10日 16時0分
オリックス・バファローズ不動のセットアッパー・阿部翔太。プロ野球選手としては珍しい28歳という年齢でプロ入りしたオールドルーキ―のプロ3年目が終わった。来季の推定年俸6000万円で契約更改した阿部はいまやオリックスにとって、なくてはならない存在である。しかし、プロ入りから3年間、ここまでの道のりは順風満帆ではなかった。(前後編の後編)
《前編》はこちら
#6 「こんなオリ姫見たことない」。阪神1300人、オリックス100人という人気“格差”の裏で息づくオリックスファンの絆
#1 #2 #3 #4 #5
年収700~800万円の安定を捨ててプロへ
――28歳でのプロ入りから気づけば3年が経ちました。
阿部翔太(以下、同) 入団したときは、もちろん小さいころからの夢だったので、歳はかなりとってましたけど、チャンスがあるなら勝負したいという気持ちでプロ入りしました。プロに入るときには(社会人野球の)日本生命におったほうがいいのにという声もいただきました。でも、自分で決断したからには言い訳はしたくなかった。
――阿部選手の登場曲でもある『Our core』(HAND DRIP)の歌詞がその生き方と重なります。
あの歌詞いいですよね(笑)。
“誰かのせいでって終わりたくないから
一度の人生賭けるしかないね
やってみれるだけやってみせるぜ
人生失敗の繰り返し
アイツの為にも叶えてみせる
これまでの日々無駄なんかじゃないし
やってきたことだけやってるだけ”
(『Our core』作詞・作曲HAND DRIP)
知らない歌だったんですけど、知り合いからグループを紹介してもらって、歌を聴いたときに僕の人生っぽいなと思って、マウンドに上がるときの登場曲にさせてもらっています。
――率直に社会人野球の日本生命って年収もよかったと思います。
僕は社会人6年目までいたので、年収は700~800万円くらい。10年くらいいると1000万円までいったりするので、いい待遇だと思います。
――好きな野球ができて安定もあって、それでもやっぱりプロ野球でしたか?
社会人野球はめちゃくちゃ好きでした。日本生命さんで働くとたしかに安定はすると思います。でも、いつかは会社に戻ってデスクワークをするときは必ずきます。ずっと野球はできないので。もちろんプロ野球でも同じく野球をやめるときはくるんですけど、「野球をする」という点でいうと自分のがんばりしだいで長く野球ができるのはプロのほうかなと思いました。
野球に携わるという意味でも、プロのほうが長く携われるかなと。あとは、プロの世界で自分がどれだけやれるかってのも試してみたかったですし、僕の中でプロ入りへの迷いは一切なかったです。
「僕ら野球下手くそだから…」
――社会人野球で学んだことって何ですか?
たくさんあるんですが、特にコロナ禍のときに無観客で試合をしたときのことを憶えています。無観客だと、あんまり燃えなかったんですね。ふだん応援してくださっているみなさんがいるからこそ力を発揮できてたんだなと思い知らされました。社会人野球でも会社の方がすごく応援してくださってて、投げてて本当に楽しかったし、うれしかったんですよ。
やっぱりお金をいただいて野球をするのは社会人野球が初めてで、その責任感はありました。日本生命は特に朝から野球に集中できる環境でさせてもらってて、その上で職員さんと同じ給料をもらっていたんです。そういう「責任感」は社会人時代に学びました。
――そうした経験があるからファンをとても大切にされているんですね。
社会人上がりなので、プロにきたからといって「プロ野球選手」感みたいなのをあんまり出したくないというか、あんまり特別やと思ってないです。普通に居酒屋とかいきますし、「こんなとこいるんですね」って言われるけど、まったく気にしません。街中で声をかけられたら普通に一緒に写真も撮ったりします。
ファンの方のありがたみを感じてますし、応援してもらって当たり前じゃないので。応援してくださる方々がいなかったらプロ野球って成り立たないと思っています。
――阿部選手はファンとの距離が近いですよね。
たしかに夢を与えるスポーツ、職業なので、あまり近すぎてもよくないところがあることもわかっています。でも、それはたぶんすごいスター選手がそうであって、社会人6年もやって28歳でなんとかプロ入りした僕みたいな選手はすごくないんですよ。野球が本当に上手かったらもっと早くプロに入ってるはずなんで、(同じ社会人野球出身の)比嘉(幹貴)さんと2人で「僕ら野球下手くそだから(笑)」ってよく話しています。
すごいプロ野球選手はたくさんいますけど、僕はそこじゃないと思ってるので。いいのか悪いのかわからないんですけど、あんまりエラそうになったりしないように普通にやっています。
この先がよければそれが正解
――1つ聞きにくいことを聞いてもいいでしょうか。
なんでも聞いてください。
――昨年の契約更改で一昨年に離婚されていたことを公表しました。
球団からはプライベートのことなので公表しなくていいって言われたんですけど、自分から言いました。ファンの方は僕が結婚して子どもがいてプロ入りしているということを知ってるので、例えば僕に彼女ができて街を歩いているときに見られて誤解されるのもいやだし、いろんなことを考えたときに元奥さんからしてもいやじゃないですか。だからそこは隠すことじゃないと思って自分から言いました。
――プロ入りした環境の変化は大きかったのでしょうか。
モメたとかではなくて、子どもに会う回数を決められてるわけでもなく、今も子どもと元奥さんと一緒に一泊旅行にも行けます。正直、日本生命で社会人野球をしていれば、離婚していなかったかもしれないとは思うんですけど、今は子どもにできることをしっかりできたらそれでいいかなと考えています。
――広島カープの矢崎(加藤)拓也投手も今年2月に「離婚というネガティブなイメージが変わればいい」と離婚を公表していました。3組に1組が離婚する日本で「バツイチ」という言い方は本当に「バツ」なのかなと思ってしまいます。
僕はマルイチって言ってますよ(笑)。プロに入る決断もそうですけど、この先がよければそれが正解だと思うので。僕は両親も離婚していて父親についていったんですけど、しっかり育ててくれたので離婚に対してうしろ向きな考え方はなかったですね。
盟友の背番号20を受け継いで迎える2024
――来季は仲のいい近藤大亮選手が巨人へ移籍してしまいます。
「大亮さんにとってはチャンスだと思うんで」という話は大亮さんとしました。必要とされる場所にいくことは選手としていいことだと思うので。でも、これで「革命軍」(阿部と近藤のユニット)は自然消滅ですかね(笑)。
――阿部選手が近藤選手の背番号20を受け継ぐことになりました。
僕自身は(今季までの背番号)45も好きなんで変えるつもりじゃなかったんですけど、大亮さんが「おまえ45にこだわってるの? 20付けろよ。オレからも球団に言うとくわ」って言ってくれたので「付けられるなら付けたいです」と答えました。
ただ、大亮さんにも言ったんですけど、「若い選手が付けるって言ったら譲ります」って言いました。いい番号なんで。
――そういう若手への気遣いが愛される理由なんでしょうね。
コミュニケーションをとるのは上手いほうやと思いますけど、たぶん、なめられてるだけです(笑)。アホやから大丈夫やと。
――最後に来季の意気込みをお願いします。
長くこの世界で活躍したいので、しっかり3年目もチームに貢献してまだまだ長くやれるようにやっていきたいです。ファンの方の応援の力を全選手が感じてるので、まだまだ力を貸していただけるとうれしいです。たまに阪神ファンとの人数を比べられたりするんですけど、人数関係なくやっていければ(笑)。
――来年もオリックスにしかない楽しみを楽しんでいきたいです。4連覇期待しています!
《前編》はこちら
《前編》28歳のプロ入りから3年で年俸6000万円に…遅咲きの花がチームの中心選手となったオリックス阿部翔太が「バファエール」よりも声援がすごいと思う選手
#1 《大谷翔平を超える逸材》えげつないボールを投げる怪物・山下舜平大のプロ初登板&開幕投手で確信した「バファローズ投手王国」 への道筋
#2 NPB最高投手となったオリックス山本由伸はメジャーで何勝できるのか…指標となる「3年連続防御率1点台」を残してメジャー挑戦した2人の剛腕
#3 佐々木朗希、奥川恭伸を上回る成績をあげる宮城大弥は本当に「技巧派左腕」なのか? 「由伸さんがいなければ」
#4 残りふたりとなったPL学園出身の現役プロ野球選手…日本シリーズに挑む中川圭太に社会人野球で奮闘する“最後のPL戦士”からエール
#5 「アホか。お前はプロを目指せ!」。日本シリーズでの快投を期するオリックス・山﨑颯一郎を支える中学時代の恩師の“ひと言”
#6 「こんなオリ姫見たことない」。阪神1300人、オリックス100人という人気“格差”の裏で息づくオリックスファンの絆
取材・文/集英社オンライン編集部 撮影/高木陽春
外部リンク
- 28歳のプロ入りから3年で推定年俸6000万円に…遅咲きの花からチーム中心選手となったオリックス阿部翔太が「バファエール」よりも声援がすごいと思う選手
- なぜヴィッセル神戸はJリーグ初優勝できたのか? イニエスタでさえメンバー外に追いやる競争力「うちは経験豊富な選手ほど、練習でも試合でも手を抜かない」
- 「気を抜いたら慶應に本当に殺されるぞ!」OBが明かす“絶対に負けられない”ラグビー早慶戦今昔秘話〈TBS佐々木社長×『VIVANT』福澤監督〉
- ドラマ『VIVANT』大ヒットの背景に大学ラグビーでの経験あり!? TBS佐々木社長、『VIVANT』福澤監督が考える究極の組織論「非常識な勝利に必要なもの」
- 「人生で大切なことはすべて早慶戦に学んだ」組織論と真剣勝負、人とのつながり…スターOBが語るラグビー早慶戦の「人間賛歌」〈廣瀬俊朗×五郎丸歩〉
この記事に関連するニュース
-
【24年ドラフト選手の“家庭の事情”】中日1位・金丸夢斗 土日も休まず足かけ10年 アマ審判父の「甲子園の道」
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月20日 9時26分
-
「あれが本塁打にならないから、引退なんですよ」オリックスT-岡田、現役最後の打席で心に刻まれた“最初で最後”の応援歌
集英社オンライン / 2024年11月15日 11時0分
-
22歳で本塁打王も…オリックスの暗黒時代を支え続けたT-岡田が「苦しくて、しんどかった野球」の呪縛から解放された瞬間
集英社オンライン / 2024年11月15日 11時0分
-
「独立リーグから直接メジャーも」「ウチはソフトバンクの3軍には勝ってる」独立球団オーナーと『ドラフトキング』作者が提言する日本アマ野球の可能性
集英社オンライン / 2024年10月31日 19時0分
-
大学か社会人か 決め手は大阪桐蔭・西谷監督…悩む元西武捕手の運命変えた一言
Full-Count / 2024年10月30日 19時1分
ランキング
-
1田中将大退団にX激震「マジですか」 突然の発表に大騒ぎ「涙が止まりません」
Full-Count / 2024年11月24日 19時7分
-
2オリ中嶋前監督、ファン感に電撃登場 爆笑さらう「悪い部分は私とT-岡田が持って出ていきます」
Full-Count / 2024年11月24日 15時43分
-
3マー君 楽天退団報告で「田中将大」「マー君退団」がトレンド入り「ショック」「まじか」移籍予想合戦も
スポニチアネックス / 2024年11月24日 19時9分
-
4楽天・石井SD 田中の退団経緯を説明「減額制限超える減俸を提示して同意が…それに当たる」提示額は…
スポニチアネックス / 2024年11月24日 19時2分
-
5慶大清原Jr.がキッパリ野球引退決断 ドラフト直前には2球団から問い合わせも指名漏れ…
スポニチアネックス / 2024年11月24日 10時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください